客観的なデータを使って、自分の中に「普通の人」感覚を持とう
ヒット商品を生み出す人ほど、自分の中に「普通の人」の感覚を維持しようとしていると思います。
ある有名なコピーライターが、朝早く会社にきて、清掃員の方にお願いして、自分が書いたキャッチコピーの中で一番良いと思うものを選んでもらった、という話を聞いたことがあります。
また、別の大企業の社長さんは、新しい事業が、社長仲間の間で話題になっているうちはまだまだで、地元の飲み仲間が知っているかどうかを重視しているそうです。
このように、ベテランになってもヒットを生み出せる人は、自分なりの「普通の人」感覚を手に入れるための手段を持っています。
みなさんは、「普通の人」感覚を知る方法を持っていますか?
今日は、誰でも簡単にできる、データを使って世の中の「普通の人」感覚知る方法について書きたいと思います。
30年分の「生活定点」を読み解く
今回は、博報堂生活総合研究所の「生活定点」というデータを使って、自分と世の中のズレを確かめて、「普通の人」の感覚を手に入れる方法について紹介します。
この「生活定点」という調査は、同じ質問を1992年から実に30年間、2年に1度の頻度で聞き続けている定点観測データです。
対象者は首都圏・阪神圏の20歳〜69歳(人口構成比割付)約3,000人。対象者がやや都心によっていますが、「普通」を知るにはよい材料だと思います。
最近、2022年度の結果が発表されたので、こちらのデータを使って、今の世の中の「普通」を見ていきたいと思います。
約1,400項目あるのですが、今回は私自身が、「えっ、そうなの?」と意外に感じた結果を5つ、ピックアップしてご紹介します。
皆さんの感覚が、「普通の人」とズレていないか確かめてみてください
①「学び直し欲」は高まっている?
最近よく「リスキリング」という言葉を目にします。
では、学べる場を求める社会人は、実際に増えているのでしょうか?
定点調査によれば、学べる場を求めている人は、実は昔よりも減っているという結果が出ています。
こちらは、「社会人が気軽に学べる場がもっと増えるべきだと思う」という質問に足して「はい」と答えた人の割合の推移です。
最初は「すでに学べる場が増えているから、求める人が減っているだけでは?」と思ったのですが、そうではありませんでした。
下記のデータを見てみると、「学びたいものがある」「学ぶ場が欲しい」「読書をしている」など、学習意欲が軒並み下がっていることがわかります。
ちなみに、これも少し意外だったのですが、「学歴を信じる」という人は、以前よりも増えています。
このように、自分の感覚と異なる結果が出ている時こそ、自分の中の「普通」センサーを調整する良い機会です。
私自身、大学院で学び直していることもあり、そういう知人が身の回りに多く、「学び直し」が当たり前の世の中になってきていると錯覚してしまっていたのかもしれません。
私がSNSで繋がっている人も偏っているのでしょう。
しかし、世の中全体を見てみれば、学びに価値を見出す人は減っているのが現実です。
とはいえ、自分の感覚がズレていたからといってガッカリする必要はありません。
世の中と自分の感覚のズレを認識することができて良かったとポジティブにとらえ、そのような目線で世の中の情報をみることで、また新たな発見があると思います。
②アウトドア好きは増えているのか?
コロナ禍でキャンプ人口が増えるなど、アウトドアを楽しむ人が増えているイメージがあります。
私自身もキャンプが好きですし、コロナ禍で広がるのも当然かな、と感じていました。
しかし、定点調査によれば、「野外で遊ぶ方が好きだ」と答える人は減っており、インドア派がアウトドア派を逆転する結果になっています。
よくする趣味・スポーツを見ると、ドライブやゴルフなどアウトドアの趣味が消え、動画視聴やモバイルゲームなど、インドアの趣味が増えています。
コロナ禍をきっかけにアウトドアを始めた人はいるとは思うのですが、全体的な傾向としてはインドアで動画やゲームに時間を使う人の方が増えているんですね。
こちらもすこし意外な結果でした。
③一円でも安く買いたい?
次は、買い物に関する調査です。
調査によると、「ものを定価で買うのはばかげている」と思う人は年々減り続けているそうです。
さらに、その傾向は若い人ほど強いようです。
価格をいろいろなお店やサイトで比較しながら、「一円でも安く」と探すような買い方が、だんだん古くなっているのです。
これだけみると、「最近の人はお金に余裕があるのか?」と勘違いしてしまいますが、そうではありません。
フリマアプリなどで、定価で買って飽きたら売る人が増えているようです。
買う前の値引きに力を注ぐよりも、買ってダメなら売ればいい、と割り切る人が増えている。そんな、買い物の「普通」が見えてきました。
④エコな生活は面倒
SDGsという言葉もだいぶ定着してきましたが、実際に環境によい生活を送りたいかというと、また別の話のようです。
こちらの調査結果では、環境を考えた生活を「面倒だ」と思う人が「快適だ」と思う人よりも多いことが示されています。
さらに、年代別に見てみると、「面倒だ」と答えた割合は20代が最も多く、58.3%でした。
「Z世代は環境意識が高い」などと言われますが、実際には面倒だと感じている人の方が多いという結果が、少し意外だなと感じました。
⑤食品の裏側は気にしない
最後に、食に関する意外な結果を紹介します。
食の安全についてのニュースはよく目にする気がしますが、「商品表示をよくみる」と答えた人は、実は年々減っているのです。
自然食品などへの関心が低下する一方で、調理済み食品をよく使うと答える人はどんどん増えています。
食の安全性に関して、全体的に無関心になっているという結果は、私にとっては意外なものでした。
しっくりきた結果も
今回は、データを使って自分の中の「普通の人」の感覚を手に入れるという視点で、あえて意外だと感じた5つの項目を紹介しました。
もちろん、他の項目の結果の中には、自分の感覚としっくりきた結果もたくさんあります。
例えば、給料よりも休みを重視する人が増えている、というデータがあります。
特に若い人ほど、仕事よりも休みを大事にする傾向が強いとのことで、これは私自身や周りの若い人たちを見ていても、納得感があります。
このように、データの結果と自分自身の感覚を照らし合わせてみることで、「普通の人」の感覚に調整することができるのではないかなと思います。
今回の調査データは、こちらのサイトにまとまっています。
動画の解説もありますので、ぜひ見てみてください。
この「生活定点」以外にも、国や省庁、メディアなどが行っている大規模な定点調査などいろいろなデータがあると思いますので、ぜひ探してみてください。
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