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【第8回】試し読み連載!アメリカが恐れる中国発のAI技術とは?この1冊で、徹底解剖。


クリス・ストークル・ウォーカー著のビジネス書「最強AI TikTokが世界を呑み込む」の試し読み連載、第8回!
この連載では、本文から厳選したハイライトを、全10回でご紹介しています。
今回は第5章『ティックトックの創造性』~24. 音楽の意味を変える~より。
「音楽」の楽しみ方の本質を変えた、ティックトック。音楽事業責任者の言葉から、その理由に迫ります。


1. 『ティックトックの成功はあなたの音楽消費を追い立てる類いまれな現象である』

ティックトックはさまざまな文化に徐々に広まっていったが、おそらくその最大の影響は音楽に対してであろう。
ビニール製のレコードがテープに道を譲り、テープはCDに譲る。そしてすべてがデジタルミュージックのダウンロードやストリーミングに支配されるようになり、音楽業界は稼ぐのに四苦八苦している。

ティックトックは、楽曲を短いセクションだけ聴くリスナーをSpotifyやユーチューブのような音楽ストリーミングプラットフォームに送り込むことで、衰退している音楽産業を再生させた。そこだと、誰かが音楽を聴くとアーティストには少額ながら印税が入るという報酬があるばかりか、もっと大切なことは、ミュージックチャートの位置に換算されることだ。

ある音楽会社の重役が、ティックトックは「新しいラジオ」だと言った。ティックトック・イギリスゼネラルマネジャーは、誰がポップミュージックのトップに来るのかを予測するのに、オフィシャルミュージックチャートはティックトックの見解を考慮すべきだと考えている。ティックトックの音楽事業責任者であるポール・ホーリカンは「ティックトックはオフラインでの歌の消費に影響を及ぼしている」と言う。「ティックトックの成功はあなたの音楽消費を追い立てる類いまれな現象である」と。

2. 『テクノロジーがいかに音楽を変えることができるか、そして音楽はテクノロジーと連携することができるか』

長きにわたって音楽業界に身を置いてきた者として、ホーリカンはコメントをするには格好の位置にいた。彼は音楽学芸員の責任者としてユーチューブに転職する前、2000年代前半の10年をMTVで働き、ニューヨークでユーチューブのインターナショナル・アーティスト・マーケティング部門の責任者を務め退職した。異国で長く暮らした人の例に漏れず、彼および彼の家族は残りの人生をどこで過ごしたいかを決めなくてはならなくなり、2019年、新しい職探しのためイギリスに戻った。

2019年10月8日、彼はティックトックの面接を受けた。しかし、彼はそれ以前に業界誌『ミュージック・ウィーク』によってO2ロンドンで開催されたイベントを運営していたことがあった。その第2回アニュアルテクサミットでは業界の実力者とともに、テクノロジーがいかに音楽を変えることができるか、そして音楽はテクノロジーと連携することができるかを検討する
ためのミーティングを開催していた。

ホーリカンは音楽産業にミュージカリーとティックトックが及ぼしたインパクトを見てきた。そのイベントでの会議で、彼はその会社から逃れることができなくなった。「Music Week tech会議における会話は、ことごとくティックトックに関するものになった」と彼は思い起こす。心は決まっていた。「私は入社します」と言った。「これは私がしたかったことだ。これこそ私が参加を決めた理由だ」

3.『ティックトックは自身を、音楽業界に対する競合相手というよりはむしろ純益だと見ている』

理由は簡単。2019年11月以降はホーリカンはイギリスにおけるティックトックの音楽事業を率いているわけだが、そのアプリの成功をその時から感じていたのだった。会議前後でのおしゃべりもその予測を固めるのに役立った。ティックトックは「人がお互いにコミュニケーションをとる方法を一新したのです」と彼は言う。「それはものごとを結びつける完璧にクリエイティブな媒体です」。データがそれを裏付けた。会社の内部調査データによれば、5人中4人のティックトックユーザーは、新しい音楽を見つけるためにこのアプリにアクセスすると言っている。

ホーリカンによれば、ティックトックユーザーは魅力的な方法で歌の断片を聞かされ、魅力的な動画とも相まって、もっと聞きたいと思わせられる。それで彼らはもっと長い楽曲を探したいという思いに駆り立てられ、そのアーティストについてさらに多くを知るようになる。こうした理由から、ティックトックは自身を、音楽業界に対する競合相手というよりはむしろ純益だと見ている。「共食い的というより、はるかに加算的というべきです」と彼は言う。

【次回予告】
第9回は、8月4日公開の予定です。お楽しみに。


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