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時間の無い世界で、また君に会う 序章②時間と人の物語

〜前回までのあらすじ〜

時間の存在に疑問を持つ少年「時間(以後カタカナ表記でトキマとする)」。

彼はたまたま遅刻に追われて乗った満員電車で時間の歴史を調べて知る。

しかし、それでも時間の必要性にまだ納得できないトキマはずっと考えていた。

そんな時に道端で一枚の紙を見つける。


夜の暗い道でひっそりと輝く街路灯の光。
その光に誘われた蝶たちがまるで舞踏会のように踊っていた。

蝶たちのように光に誘われたのか、一枚の紙はそこに落ちていた。

その紙は暗闇の中にある小さな光のように白く輝いて見えた。

普段なら落ちているものなんて気にしないが、この時はなぜか足が勝手に動き、気がついたら紙を手に取っていた。

タイムカプセルから掘り起こされたかのように砂やほこりを被っていた。

僕は発掘調査員のような手つきで砂を払う。

その紙には「時間を無くしてみませんか?」という文言と住所が書かれていた。

「時間を無くしてみませんか?…ってバカらし!」そういって僕は家に帰る。

家では母親が夕飯を作って待っていた。

「トキマ。それなに拾ってきたの?」そう母親が指差す僕の手にはなぜか道端で見つけた紙を強く握りしめていた。

「…え!?」一瞬驚く僕。

「あ、あ〜。これは明日の宿題。ご飯終わったら解かないといけない!」と僕はとっさに嘘をつく。

時間に追われている人のようにご飯をせっせとかきこむと自分の部屋に戻った。

机に座った僕は悪いことをしている子供のように誰もいない部屋を見渡し、twitterで呟く。


"時間を無くすことって可能だと思いますか?"


もちろん誰からも反応はない。当たり前だ。どうみても頭のおかしい人の独り言でしかない。

「何やってんだろう俺は…」と僕は机にスマホを置いて天井を見上げていると通知があった。

僕の質問にコメントが来ていたのだ。

僕は急いでコメントを見た。

「頭大丈夫ですか?病院紹介しますよ!」

「そんなの無理に決まってるだろwww」

「世界中の時計を壊してくればおけ!」

もはやSNS特有の暇人たちによるクソコメントばかりだった。

━━━分かってる。分かってるけど、どうしても気になるんだ!


翌朝。食パンを頬張り、砂糖とミルクを入れた紅茶をゴクゴクと飲み干す。

「ごめん母さん。今日は遅くなるから!」トキマはそういって紙に書かれた住所を頼りに勢いよく家を出た。

住所は埼玉県の川越市。

川越は江戸時代の頃に「小江戸」と呼ばれるくらいに栄えており、今でも昔の建物などが多く残っている歴史があふれた町である。

住所を頼りにいくと、そこは時の鐘のすぐ横の建物だった。

━━━時の鐘。時計がほとんど使われていなかった江戸時代、時間をあまり気にしなかった人たちに時を知らせていた鐘である。今も昔と変わらず時を告げているらしい。

「江戸時代は今のように時間をあまり意識してなかったんだよな…」と昔を想像していると、いつの間にか僕は呆けていた。

はっと我に返り、時の鐘の横の古い建物の玄関をコンコンとノックする。

「ごめんください!誰かいますか?」

なんの返事もない。仕方ないので今度は大きな声で聞いてみたが、やはり返事は返ってこない。

古い建物だから誰も住んでないんじゃないかと思いながらそっとドアノブを捻ると開いてしまった。

周りに視線を動かしながら恐る恐る中に入って「あのー。紙を見てきました。」と小さく呟く。

やはり返事はない。

━━━期待した自分がバカだった。

そう諦めて帰ろうとすると、後ろから声が聞こえてきた。

「なんのよう?」

それは桜のように優しく透き通った女の子の声だった。

〜to be continued〜


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