僕の生まれ持ったものと、得たものの間で
高い建物の間で
ふと空を見上げる。
平行線に挟まれた空は
冬にピッタリの曇天だった。
悴んだ手をポケットの中に入れ
何も流れていないイヤホンが
耳にぶらさがっている。
じーーんとする。
寒い。
冬のビルの間に吹く風は
恐ろしく強く
そして恐ろしく寒い。
全身の感覚をまるまる
吹き去ってしまおうとしているようで
負けじと体を大袈裟に動かしながら
風に向かって歩いている。
イヤホンで耳を塞いでいるせいか
寒さで耳が聞こえにくいせいか
それとも風の
ボボボボボという音が
うるさいせいだろうか。
こんな日は心の内にある
自分自身の声が、
いつもより目立って聴こえる気がする。
.
生まれてからこれまで
沢山のものが僕を形成してきた。
.
好きなもの、嫌いなもの
良しとするもの、またその反対。
僕はこの20歳を目前とする歳になって
そういったものの間に揺らいでいる。
好きなものをすきと言えること
良しとするものを良しと言えること。
その当たり前じゃないことに
気づいてしまったから
純粋にそう言えなくなってしまった。
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