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孫子とクラウゼヴィッツに学ぶ戦略論。戦争は最終手段であり、戦う場合は短期決戦に。

本書では、孫子とクラウゼヴィッツの思想を比較することにより、相違点が誇大に論じられてきた両者の思想に、実は共通点が多いことを論じています。米陸軍戦略大学校テキストだけあって、軍事戦略の視点からまとめられており、かつ原文を掲げながらの説明になっています。少し読みづらかったので、要点のみざっと読んでみました。


🇻🇳ベトナム戦争から米国が学んだこと

1960年頃に南ベトナム解放民族戦線は、ベトナムの独立と統一をめぐり、北ベトナムの支援のもとに、南ベトナム軍およびこれを支援するアメリカ軍と戦い、69年臨時革命政府を樹立。73年和平協定が成立しアメリカ軍が撤退、75年南ベトナム政府が崩壊、翌年に南北が統一されました。

1975年4月、アメリカはベトナム戦争において、圧倒的に戦力で勝っており、かつ局地戦では勝利を重ねていながら、結果的に敗北と撤退を余儀なくされました。

それを機に、『孫子』やクラウゼヴィッツの『戦争論』などの軍事古典学者と陸・海・空・海兵隊四軍の高級将校らにより軍事古典の研究を地道に行いました。その結果が、6つの柱からなる「ワインバーガー・ドクトリン」と呼ばれているもので、これは孫氏とクラウゼヴィッツが強調し続けてきたことでした。


📃ワインバーガー・ドクトリン

1. 国家の合理的行動 アメリカ、もしくは同盟国の死活的な利益が危殆に瀕しない限り、アメリカは海外の作戦・戦闘に、戦力を投入するベきではない。
2. 戦力の最大限集中 もしアメリカが、与えられた条件のもとで作戦部隊の投入を決断したならば、我々は明確なる勝利の意思表示として、十分なる戦力を投入すべるきである。
3. 政治・軍事的目標の明確なる定義づけ もしアメリカが、海外の戦闘に戦力を投入する決断をしたならば、政治的、軍事的達成目標は具体的に定義されなければならない。
4. 政治・軍事的目標の持続的再評価 政治・軍事的目標と投入戦力(規模・編成・配置)の相関関係は、必要に応じ持続的に再評価され吻合されなければならない。
5. 国民世論の支持 作戦部隊の投入に先行して、アメリカ国民の彼らが選出したアメリカ議会の支持獲得に関し合理的な革新が得られなければならない。
6. 国家の合理的行動 武力戦にアメリカ合衆国軍隊を投入するのは、最終的な手段でなければならない。


🙅‍♂️戦争は最終手段であり、しないにこしたことはない

戦争はあくまでも政治的目的達成の一手段であり、なるべくそれを避けなければなりません。戦争の前に外交的解決を試みたり、同盟を分断して繊維を喪失させたりすることが非常に重要。それでも解決できない場合にのみ、最終手段として戦争があります。

戦略とは、「戦いを略す」という言葉に表れている通り、戦うための方針ではなく、戦わないための方針です。なぜなら戦争は資源の消耗、人的犠牲や軋轢を生むからです。なので無傷もしくは少ない犠牲で勝つことのできる「戦わずして勝つ」あるいは「戦わずして優位に立つ」ことが最上の戦略なのです。


もし戦争をする場合は、一気呵成に攻めて短期決戦に持ち込む

もしどうしても戦争が避けられなくなった場合は、持てる戦力を十分に投下して、短期決戦に持ち込まなければなりません。戦争が長引くと資源を消耗し兵士が疲弊し、無駄に資源や戦力が失われてしまうからです。戦力を温存して中途半端に戦力投入すると、戦争が長期戦となり、無駄に資源や戦力が失われるだけに終わる可能性もあります。

また、戦局を優位に運ぶために、常に情報収集と分析による綿密な情勢判断を行い、勝算のある作戦を立てて、それに伴う適切な戦力投入を行わなければならなりません。すべては犠牲を最小原に抑えるためです。


🎯戦争を開始するにあたって、目標を明確にし、国民の同意を得る

繰り返しになりますが、戦争を行うのは、あくまでも政治的目標の達成のためです。そのため、戦争を始める場合は、達成すべき政治的目標と、その達成のために必要な軍事的目標を明確にしておかなければなりません。

これが明確でなければ、戦争のための戦争になり、無駄に兵力を失うだけになる可能性が高くなります。また、兵士のモチベーション維持や金銭・物資の支援を得るためにも、事前に国民を納得させ、応援してもらう必要があります。

戦略・作戦・戦術・兵站は元は軍事用語で、防衛省防衛研究所戦史研究センター長の石津知之氏曰くは「戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る」。過去の戦争を最終的に決めるのは、戦略ではなく補給の限界であるということです。物資の量とそれを最前線に届けられる範囲でしか戦争は続けられません。


最後に

孫子とクラウゼヴィッツの思想を詳しく知りたい場合は、『孫氏』や『戦争論』を直接読むか、それぞれの解説本を読んだほうがいいかもしれません。この本は、ちょっと文章や内容が固くて、読むの大変でした。。

また、ビジネス的な学びを得るのであれば、少し違いますが孫正義が20代の頃に自ら考案し、以来常に人生・経営の指針としてきた「孫の二乗の法則」についてまとめた『孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫) 』の方が、読みやすいし、応用しやすいのでおすすめです。



本を読んで学んだこと感じたことをnoteでまとめてます。ぜひ他のnoteも読んで下さい。

Top image:Photo by Eric Ward on Unsplash


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