芸人のグローバル化と、新たな「ローカル化の波」

昔の芸人さんの謎ルール「芸人に連れて行ってもらった仕事先では、自分の名刺を配ってはいけない」

つまり、「芸人が助演の場合、その仕事場で知り合った誰かに名刺を一切配ってはいけない」という、普通のサラリーマン社会では考えられないルールが寄席界隈には存在します。もしも配った場合は、「俺の客を取るな!」と言って揉めたりします(笑)

もちろん、今の若い人には、この感覚は無くなっていると思います。しかし、昔の芸人さんはこの”モラル”を説いていました。そして今もそのルールを採用している年配の芸人さんはいるし、その人の薫陶を受け、「どういう意味かもわからんけど、先輩が言うてるんだから、それが礼儀・モラルなのだ!」という先輩芸人さんも結構います。

そうなると、一定の芸人は揉めたくないので、名刺そのものを持たなくなっています(笑) 私も年季明けして作りましたが、長い期間、面倒なので、名刺を持たないようにしていました。それは名刺を作るのが面倒なのではなく、昔の芸人ルールを採用している人と揉める可能性が出るのが面倒だからです。

そしてその「面倒だから名刺を持たない世代」は、後輩に「俺の現場で名刺を配るな」とは言いませんので、今の後輩は割と名刺を持ってたりします。ただ、後輩も、それより更に上の先輩方と揉めたくないので、名刺を持たないこともあります。まあ「そもそも名刺なんか今どき要るか???」という感覚の人もいるので持たないのかもしれません(←実はこの感覚が今日の記事の核心と関係します)。

では、どうして「仕事先で名刺を配ってはいけない」と昔の芸人さんは言ったのでしょうか?
そして、今の人はなぜ「名刺を配ることは問題ない」と思いやすいのでしょうか?

これの原因は「ブロック経済」と「グローバル化」です・・・。

・・・なんじゃそら!と思うかもしれませんが、そうなんだから仕方ない(笑)

まずは、なぜ昔の芸人さんは「芸人に連れて行ってもらった仕事先では、自分の名刺を配ってはいけない」と言ったのか?

これについて説明していきましょう。
そして、ここから、現代の「落語世界を取り巻く環境」について詳しく解説することにします。

昔の芸人はブロック経済だった

「なぜ昔の芸人さんは”芸人に連れて行ってもらった仕事先では、自分の名刺を配ってはいけない”と言ったのか?」

一部の芸人さんが読んで気を悪くされると嫌なので、こっからは有料にしてあります。

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