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米国市場:1/15週の振返りと24年1/22週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,839.81と前週比+1.17%で終了しました。NASDAQは15,310.97と前週比+2.26%で終了しました。
 先週の株価は、最初の3日間はFRBによる利下げ観測の後退、企業の事前発表やレイオフ、インフレ、さらには紅海に関連するサプライ・チェーン・リスクなどを背景に下落しました。木曜日には、台湾セミコンダクター(TSM)の堅調な12月四半期決算と2024年の堅調なガイダンスによって半導体セクターが大きく跳ねました。この結果、S&P500種株価指数は戻りを見せ、また同木曜夜には、メタ(META)のマーク・ザッカーバーグ氏が24年末までに35万台のNvidia(NVDA)のH100チップを購入する計画であるとAIに関するコメントを出したことも、大きな弾みとなりました。この勢いは金曜日に金曜日にも加速し、終わってみるとS&P500は史上最高値を更新して週を終えました。
 S&P500が新値をつけましたので、定義上は新波動入りとなりました。アメリカのマーケットの場合、新値を売ってはいけないという鉄則があります。まずはこのまま堅調に株価が推移するかを月曜日の寄りの動きを確認したいと思います。また、1月相場で新値になりましたので、年初の5日間はドタバタしマイナスで終えていますが、1月末の相場もプラスで終わる可能性が高くなってきました。もし、このまま堅調に、1月末の相場がプラスで終われば、アノマリー的に1年もプラスで終わる可能性が非常に高くなります。
 金利の状況を確認すると、2023年12月時点ではFRBはアンケート結果から3回程度の利下げを予想していました。しかし、その後に発表された経済指標を確認するとインフレは沈静化してきていることは確認されており、新規失業保険申請件数も依然低水準のまま推移しており就業者数の伸びは緩やかになりつつありますが、賃金の上昇はしっかりしているため、引続き消費は堅調です。17日に発表された12月小売売上高は前月比+0.6%となり前年同月比では5.6%でした。消費が好調であることが確認され、景気は良いです。金曜日には、さサンフランシスコ連銀のメアリー・C・デイリーがFox Businessのインタビューで「労働市場の失速の兆候や、延滞率の上昇に注目している旨を述べており」これらから鑑みると3月の利下げの可能性は低いということを述べています。この結果、CMEFedWatchToolも3月利下げの可能性は、先週末の76.9%から46.2%まで下げており3月の利下げが遠のきつつあることを市場は織り込んでいるようです。ただ、この結果を持っても年末までの利下げを5回~6回を見込んでおりいまだにアグレッシブな利下げのシナリオは市場参加者は取下げていないようです。従って、FRBの利下げの方向性が更にはっきりしてくるごとに株式市場は若干の調整があるかもしれません。
 株式市場の方に目を移すと、先週S&P500指数は上昇し新値をつけました。再びほんの一握りの銘柄(GAFAM+NVDA)に牽引されたことがわかります。これらの企業ではリストラも発表されており、社員を削りコストカットを行いAIへの積極的な投資を行う姿勢が見えてきております。AIの活用によるビジネスモデルの輪郭が更にはっきりしてくるとこれらの企業は恩恵を受けるものと考えており、今年もこれらの企業が牽引する可能性が高く引き続き動向に注意を払っていきたいです。TSLAはEVに対する市場の評価が徐々に変化してきており、高級車というイメージから変わってきており、今年はTSLAにとっては大きな試練の年になるような気がしています。
 先週末の急騰の結果、S&P500指数は2024年予想EPSの20倍近辺で取引されており若干買われすぎの状態になっています。また、Fear&Greed指数も再び「Extra Greed」に近づいてきています。12月期決算シーズンに向けての期待が高まっていることもあるかと思います。企業の決算シーズンは始まっていますが、これまでのところ低調な結果となっているため、今後に発表されるGAFAM+NVDAの結果によってはこの妙な高揚感も消えてくるかもしれません。

株式市場

 S&P500構成企業の第4四半期決算発表シーズンは、現時点では低調なスタートとなりました。S&P500構成企業のうち、好業績サプライズを報告した企業の割合は平均を下回っており、業績結果も全体として予想を下回っている状況です。しかし、この予想以下の実績は主に金融セクターが低調であったことが原因であり、今後の発表によっては状況が変わってくる可能性はあります。
 1月19日までに、S&P500構成企業のうち10%が2023年第4四半期の決算発表を終えています。これらの企業のうち、予想EPSを上回ったのは62%で、5年平均の77%、10年平均の74%を下回っています。予想と結果を比較した場合、全体としては予想を18.1%下回る結果となっており、5年平均の+8.5%、10年平均の6.7%下回っています。この結果、第4四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定を合算したもの)減益率は、先週の-0.3%、第4四半期末(12月31日)時点の増益率1.6%の予想に対し、19日時点では-1.7%となっています。金融セクターの企業から報告されたネガティブな業績サプライズが、先週および第4四半期末以降の指数全体の業績減少の最大の要因となっています。仮に-1.7%が今四半期の実際の減益率であれば、過去5四半期で4度目の前年同期比減益を記録することになります。
 売上高に関しては、S&P500構成企業の62%が予想売上高を上回ったと報告しており、これも5年平均の68%、10年平均の64%を下回っています。また、企業の売上高の結果は予想を0.5%上回っていますが、これは5年平均の2.0%、10年平均の1.3%を下回っています。第4四半期の混合売上成長率は、先週の2.9%、第4四半期末(12月31日)の3.1%に対し、本日は2.9%となっている。仮に2.9%が今四半期の実際の増収率であれば、13四半期連続の増収となります。前年同期比で増収となった(または増収が予想される)セクターは8セクターで、金融、不動産、情報技術、通信サービスの各セクターが牽引しました。一方、前年同期比で減収となった(または減収が予想される)セクターは3つあり、エネルギー、素材セクターが該当します。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第1四半期の収益成長率(前年同期比)を5.4%、第2四半期を10.0%を予想しています。CY2024については、アナリストは(前年比)12.2%の増益を予想しています。
 来週、S&P500種構成企業75社(ダウ30種構成企業10社を含む)が第4四半期の決算発表を予定しています。

来週の主な決算発表(予定)

1/22(月):
<寄付き前>
<引け後> United Airlines (UAL)
1/23(火):
<寄付き前>DR Horton (DHI), Halliburton (HAL), Johnson & Johnson (JNJ), Procter & Gamble (PG), Synchrony Financial (SYF)
<引け後>Netflix (NFLX), Rush Enterprises (RUSHA), Texas Instruments (TXN)
1/24(水):
<寄付き前> ASML (ASML), AT&T (T), Freeport-McMoRan (FCX), General Dynamics (BD), Elevance Health (ELV), Kimberly Clark (KMB), SAP (SAP), Textron Inc (TXT)
<引け後>Ameriprise Financial (AMP), CSX (CSX), IBM (IBM), Lam Research (LRCX), Las Vegas Sands (LVS), Packaging (PKG), Tesla (TSLA), United Rentals (URI)
1/25(木):
<寄付き前>Alaska Air (ALK), American Airlines (AAL), Comcast (CMCSA) Dow (DOW), Southwest Airlines (LUV), McCormick (MKC), Mobileye (MBLY), Northrop Grumman (NOC), Sherwin Williams (SHW), Union Pacific (UNP)
<引け後> Intel (INTC), KLA Corp. (KLAC), Levi Strauss (LEVI), NVR (NVR), Visa (V)
1/26(金):
<寄付き前>American Express (AXP), Colgate Palmolive (CL),

米国の主な経済指標

1/22(月):
1/23(火):
1/24(水):
1/25(木):新規住宅販売件数、新規失業保険申請件数、GDP、耐久財受注
1/26(金):個人所得・支出、PCE

今週の着目点

 S&P500が史上最高値を更新しました。結果、新波動入りしたと考えられますがこのシナリオが正しいかを検証する週になると思います。金利は、10年債利回りが4%を超えてきていますが、これまで発表されている内容からすると、利下げは2024年第3四半期まで行われない可能性が高くなってきているため、もう少し上がる可能性もあるのかなと思っており、このままズルズル少しずつ値を上げていくことを予想しています。株式市場に対しては、アゲインストとなるのですが今後発表されてくる企業の結果によっては、金利が高くても業績が伸びていることが確認できればまた上に向かって動き出す可能性があると見ています。
 経済指標は、23年第4四半期のGDPの発表があります。過去の結果にはなりますが、引続き景気が拡大していたのか確認することになるかと思います。金曜日には12月のPCE指数と、個人所得・支出でインフレとコア・インフレの進展を確認していきます。紅海の海運運賃やサプライチェーンの問題が、12月PCE価格指数に反映されているのかも確認する必要があります。
 企業決算では、半導体関連の銘柄、ASML(ASML)、ラム・リサーチ(LRCX)、インテル(INTC)等の四半期決算が予定されており今後の半導体市場の見通しについてバラ色が期待できるかに注目したいです。また、消費者の懐具合を確認する上でも、ビザ(V)、アメリカンエクスプレス(AXP)の内容も確認していく必要があるかと思います。


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