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米国市場:4/8週の振返りと24年4/15週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,123.41と前週比-1.56%で終了しました。NASDAQは16,175.09と前週比-0.45%で終了しました。
 先週は、主要4株価指数が全て下落して取引を終了しています。中東情勢の緊張の報道、予想よりも高い数字となったCPI指数によって、株価指数は大きく乱高下していました。結果として、先週末よりも下落して終了しました。
 3月のCPIの結果が発表され、前年同月比3.5%と予想3.4%を上回る結果となっています。2月の3.2%から拡大しております。また、前月比は+0.4%と予想+0.3%を上回る結果となりました。コア指数も前月比・前年同月比ともに予想を上回ったことで、インフレに関する懸念が再燃したことにより、春休みモードに突入していた市場がもうしばらく休眠することになりそうです。また、地政学リスクについての懸念も出てきていますが、特に新しい材料ではないため特に急いで対処する必要はないと考えています。
 先週末の金曜日には、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴ等の銀行の決算が発表され2024年第1四半期の決算シーズンが始まりました。長短金利差が逆転したままの状態であるため、銀行経営としては苦しい状態が続いており、この結果銀行セクターはまちまちな結果となりました。JPモルガンは6%の増益となりましたが先行き不安で下落し、ウェルズ・ファーゴは7%の減益となりました。
 先週のCPIの結果等を確認するに、インフレはかなり沈静化してきていますがFRBの目標とする2%のインフレ率に到達するまでのラスト1マイルが難しいことを物語っています。この結果、6月の利下げも遠のいたとの認識が市場関係者に広がっており、年内の利下げのタイミングが7月、もしくは9月になりそうとの予想に変わっています。このことは、また四半期ぐらいは金利は動かないということを市場も織り込んできております。このことは、現在の市場環境は金融相場ではなく、業績相場であることを示しております。このため、決算が良い企業は大きく買われ、悪い企業は大きく売られるという形は今期も続くものと考えています。
 FactSetによると、今期も前年同期比でEPSはプラス、2024年も前年比+10%、2025年でも+10%程度が予想されており市場全体としては上昇していく方向であるとの見方に変更はないようです。今週は200社ぐらいの決算が発表される予定となっており、この方向性に変更がないかを確認する週になるのではないかなと思います。
 中東情勢の報道により、先週は原油価格が大きく動きましたが、85ドル前後で落ち着きつつあり、年初より続いてきた原油価格の上昇も一旦はここで打ち止めかなと見ています。エネルギー価格が安定してくると、インフレ率の上昇にも徐々に効果が出てきますので、今年後半ぐらいにはインフレが落ち着いてくるのではないかなと考えています。FRBは、インフレが落ち着いたことを確認してから動くと思いますので、年内に利下げがあるとしても、9月以降であり、政治色を嫌うと大統領選後の12月に1回行うかぐらいかなと考えられます。この結果、年内は金融相場が発生しない、企業業績で株価が上下動する相場が続くのではないかなと思いながら市場の観測を続けたいと思います。

株式

 S&P500種構成企業の24年第1四半期決算シーズンは、まだ途に就いたばかりであるものの混迷したスタートとなっています。ポジティブな面では、S&P 500種構成企業のうち好業績サプライズを発表した企業の割合とサプライズの大きさは平均水準を上回っています。一方、マイナス面では、ヘルスケア・セクターの企業のEPS予想が大幅に下方修正されており、このため先週の第1四半期の利益成長率が大幅に低下しました。この結果、同指数は先週末と比べ、また四半期末と比べ、本日第1四半期の業績予想が下方修正されています。しかし、同指数は3四半期連続の増益(前年同期比)を報告している。
 先週までの時点で、S&P500種構成企業のうち6%が2024年第1四半期の決算を発表しています。これらの企業のうち83%が予想EPSを上回っており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を上回っています。また、発表された結果はアナリスト予想を12.4%上回っており、これは5年平均の8.5%、10年平均の6.7%をも上回っている状態です。
 しかし、ヘルスケア・セクターの企業のEPS予想が大幅に下方修正されたため、第1四半期決算の予想は大きく下方修正されています。その結果、当インデックスは、先週末と比べ、また四半期末と比べ、本日、第1四半期の業績が下方修正されています。ブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定を合算したもの)の第1四半期の増益率は0.9%となっており、先週の3.2%、第1四半期末(3月31日)の3.4%になっています。仮に0.9%が今四半期の実際の増益率であれば、同指数は3四半期連続で前年同期比増益を記録することになります。
 セクター別では、公益、情報技術、通信サービス、消費財を筆頭に、11セクター中6セクターが前年同期比で増益となった、または予想されています。一方、前年同期比で減益となった、または減益が予想されるセクターは5つあり、エネルギー、素材、ヘルスケアセクターとなっています。
 売上高に関しては、S&P500構成企業の53%の企業が予想の売上高を上回った決算を発表しており、これは5年平均の69%、10年平均の64%を下回っています。また、売上高はアナリスト予想を1.2%上回る結果となっており、これは5年平均の2.0%、10年平均の1.4%を下回っています。第1四半期の混合売上成長率は3.4%となっており、先週の売上成長率3.5%、第1四半期末(3月31日)の売上成長率3.5%よりも下方修正されています。エネルギー・セクターの売上高予想の下方修正は、金融セクターの売上高予想の上方修正を相殺しています。仮に3.4%が実際の増収率であれば、14四半期連続の増収となります。
 前年同期比で増収となった、または増収が予想されるセクターは8つあり、通信サービスセクターと情報技術セクターがその筆頭となっています。一方、前年同期比で減収が予想されるセクターは3つで、エネルギーと素材セクターが対象となっています
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第2四半期、2024年第3四半期、2024年第4四半期の(前年同期比)利益成長率をそれぞれ9.4%、8.6%、17.7%と予想されています。CY2024については、アナリストは(前年比)10.3%の利益成長を予想している。
 今週はS&P500種構成企業44社(ダウ30種構成企業6社を含む)の第1四半期決算発表が予定されている。

来週の主な決算発表(予定)

4/15(月):
<寄付き前>Goldman Sachs (GS), Charles Schwab (SCHW)
<引け後>
4/16(火):
<寄付き前>Bank of America (BAC), BNY Mellon (BK), Johnson & Johnson (JNJ), Morgan Stanley (MS), PNC (PNC), United Health (UNH)
<引け後> Interactive Brokers (IBKR), JB Hunt (JBH), United Airlines (UAL)
4/17(水):
<寄付き前>Abbott Labs (ABT), ASML (ASML),
<引け後>Alcoa (AA), Crown Castle (CCI), CSX (CSX), Discover Financial Services (DFS)
4/18(木):
<寄付き前>DR Horton (DHI), Elevance Health (ELV), Nokia (NOK), Taiwan Semiconductor (TSM)
<引け後>Netflix (NFLX)
4/19(金):
<寄付き前>American Express (AXP), Procter & Gamble (PG)

米国の主な経済指標

4/15(月):小売売上高、ニューヨーク連銀製造業景気指数
4/16(火):住宅建築許可件数・着工件数、設備稼働率、鉱工業生産指数
4/17(水):
4/18(木):中古住宅販売件数、新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀景況指数
4/19(金):

今週の着目点

 今週は、小売売上高、鉱工業生産、住宅着工件数、中古住宅販売件数が発表されます。鉱工業生産は、今月初旬に発表された3月製造業PMIの結果を反映したものとなると考えています。
 利下げ回数、利下げ幅が予想を大幅に下回る可能性が高まっているため、住宅ローンが高止まりする可能性が高く、住宅市場にとって値ごろ感の観点から逆風となってくると思います。住宅着工件数が今年中に一桁台半ばまで増加する可能性があるかどうかがユナイテッド・レンタルズ(URI)とバルカン・マテリアルズ(VMC)などの株価にも影響があると思います。
 また、3月の小売売上高は、アマゾン(AMZN)の春季セール・イベントと競合するキャンペーンの展開により、全体的な支出の増加が見込まれます。そのため、デジタル・ショッピングの売上は前年比プラスとなると思われます。マスターカード(MA)から発表されるカードの利用状況などからこれまでの動向と、2024年第1四半期の市場の強さについて考察が得られると思います。
 4月17日には、FRBのベージュブックが公表されますので、各地域連銀のコメントや見識がわかると思います。今週はインフレ・データの発表はないものの、FRB高官の登場が6回ほど予定されています。先週発表された3月の消費者物価指数と生産者物価指数は利下げには不利なデータであり、CMEFedWatchToolからも市場は年内の利下げ幅を縮小するとのシナリオに変わりつつあります。
 今週は、S&P500構成銘柄44社を含む約200社の四半期決算が発表されます。一定数の決算発表を確認することができるようになりますので、今期の企業全体の業績の方向性を大まかに捉えることには十分になってくると思います。
 4月17日(水)に発表される台湾セミコンダクター(TSM)の3月期決算、最終市場の内訳、およびこれらの市場の見通しに注目したいです。PCの底入れは確認されていますが、スマホの底入れが確認されるかは注目しておきたいです。この結果、今後発表される半導体企業Nvidia (NVDA)、Marvell (MRVL)、Qualcomm (QCOM)、Universal Display (OLED)、Apple (AAPL)の業績の前哨戦になると思います。TSMが2024年の設備投資見通しを上方修正した場合、アプライド・マテリアルズ(AMAT)にも動きがあると思います。


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