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大会のライブ配信実況の話

インカレロング(2020年度日本学生オリエンテーリング選手権大会
ロング・ディスタンス競技部門
・10/18栃木県矢板市)でライブ実況配信を行いました。アーカイブがYoutubeにあります。ぜひ他の大会でもどんどん配信や収録を行って、動画投稿や見る人も増えて、オリエンテーリングの楽しみ方の幅が広がったり、興味を持つ人が増えてほしいので、やり方を紹介したいと思います。毎年ビジネスな記事ばっかでアレですね。そういうことしかしてないのでそういうもんだと思ってご容赦ください。
あと今週末開催のインカレスプリントもYoutubeLiveするのでぜひ。

配信本部の機材について

スイッチャー
4入力ある映像を選んだり重ねたりちょっとした加工もしてくれてYoutubeLiveにエンコーダ配信してくれる。エンコーダ配信とはPCを経由せずに機器から直接アップロードできる機能。ボタンを押すと入力映像を切り替えて配信してくれるし、PCで制御するソフトウェアでは細かい編集や設定もできる。機能が多すぎて使いこなせない。私が今回買った機器。

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PC
スイッチャーの4つの映像入力のうち1端子をPC画面の表示に使用していた。Mulkaからのライブ速報画面、中継zoom画面、GPS軌跡画面を確認しっつ切り替えるために3台のPCとHDMIセレクタを使っていた。あと1台はスイッチャーの制御専用。スイッチャーの制御は同時に複数台から可能なので、終盤でテロップの表示を習得した際には4台中2台でスイッチャーの制御をしていた(スイッチャーと同一LANにあれば何台からでも制御できるのがすごい)。

ディスプレイ(大)
スイッチャーの映像出力機能で、大きな画面を映像確認に使った。現在スイッチャーに入力されている4ヶ所から来る映像を確認しながら、どういう映像を実際に配信するか選ぶために大きな画面にいろいろ表示させている。スイッチャーの状態や通信状況や音声入力状態も同時に表示されていて頭が追いつかない。YMOE資材でもう1枚あるディスプレイも隣で使っていた。

ディスプレイ(小)
配信本部の写真で一番左側にあるやつ。スイッチャーの制御用PCは専用ソフトで画面がいっぱいなのでYoutubeLiveの設定や配信されてるかの確認にもう1枚ディスプレイを使った。安定して動作し始めたら見なくてもいいのでLiveのコメント欄やTwitterとかMulkaとか見ていた。YMOE資材、古いので画質が悪い。

その他の機材ついて

実況席ディスプレイ
ディスプレイ(大)と同じ映像をHDMIスプリッタで複製して実況の2人の確認用に使用。長い(5m)HDMIケーブルで繋いだが、風でケーブルが揺れると映像にノイズが入ったりと面倒だった。良い映像が入ってきたときに阿吽の呼吸で話題と映像を切り替えることができる(できない)。坂野機材、高画素なモバイルディスプレイ。下の写真で中央のやつ。

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実況席PC
実況者各自のPCで計2台あってMulka速報やGPS軌跡や選手名鑑を見ていたようだ。実況席ディスプレイにはカメラ入力は見えても、スイッチャーを通したPC画面の入力はほとんど映らないし、見えたとしても小さすぎて読めないため。

実況席カメラ
運営者の私物のSony α7を三脚で固定して放置。電源は繋いでおき、HDMI出力でスイッチャーへ入力。モバイルディスプレイ同様に長いHDMIケーブルと、他の端子と干渉しにくいmini-HDMI変換器だとかが必要。

でかいカメラ
Sony NX5Jという、テレビなどの映像業界で信頼と実績のある古い型のカメラを2台使用した。頑丈でノイズにも強く長くできる(100mとか)SDIケーブルを使って演出本部テントの配信本部まで伸ばして、SDI-HDMIコンバータで変換し、HDMIでスイッチャーへ入力する。一般向けのビデオカメラよりも光学ズームが効くとか高画質とかですごく良い。そういう機材のレンタル屋からの借り物。

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放送音響機器
YMOE資材で、2年くらい前に買ったでかい機器というかシステム。アンプ、ワイヤレスチューナー、アンテナ、有線マイク、無線マイク、無線ヘッドセット、スピーカーをいい感じに頑張って繋ぐ。今回は配信用にアンプからの出力(スピーカーと同じ情報)を配信でも流すためにスイッチャーへ音声入力をしたが、間にオーディオインターフェイスを噛ませた。端子形状はアンプがRCAモノラル、オーディオインターフェイスがRCAステレオ、スイッチャーはステレオミニプラグ。終盤では会長ご挨拶のzoom音声を音響機材に入力するため、PCのミニプラグからステレオ標準プラグに変換してアンプへ入力した。

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トランシーバ
配信メンバーは大体の人が持っていた。接近情報があればカメラを向けて待機したり、ディレクターとカメラの連携、ディレクターと実況席の連携などに使われた。

スマホ中継
森の中からの映像やスタートからの映像中継はスマホのカメラで撮ったものをzoomで演出本部に送った。森の中では追走するためにスタビライザを使用。スタート地区は絵になる位置で良かった。森の中は通信環境や、追走しやすい植生と地形、コースとの調整など事前に調査しておいた。足の速い人に頼んだわけだが不整地インターバル走なので2人一組で交代しつつ走ってもらった。

実況解説のノウハウ

・事前の情報収集と選手名鑑
・氏名や個性を覚えて引き出しを増やす
・緻密なタイムスケジュールを組んで注目選手をピックアップ
・実況情報の優先順位付け
・競技情報との線引き合意
・コース情報やテレイン情報
・繋ぎの小ネタ集
・インタビューは手早くわかりやすく
・いい映像や情報が入ってきたら独断でそれについて話し始める
・タイムや順位や決定的時刻を計算する
・カメラ目線

人員

ディレクター、スイッチャー2人、実況2人、会場カメラ2人、森中継2人、音響管理、配信確認で配信専属が11人。スタート中継、コース解説の2人は他パートとの兼任。設置撤収などは配信専属でもやってる人はやってた。

会計
すごーくざっくりですが。現地下見と機材動作確認のために準備で借りた機材が5万円、大会前日と当日使用した機材のレンタル費用が10万円ほど。GPS端末レンタル費用とGPS表示システム利用料が20万円、音響機材が5万円、私の事業者としての業務委託費の請求が10万円くらい(正直言うとこれでは事業として割に合わなすぎる)。
運営者の交通費や宿泊費やなんやらは別ですが試走や準備含めてざっと30人日、計20泊くらいはしてると思うので20万円くらい発生してる気はします。通信環境が悪いとかカメラを増やすとか凝った演出しようとすると費用が10万円単位で増えます。

今後の目標や展望
短期的には世界選手権レベルの中継動画配信を目指すこと。それでも数年はかかると思います。某ラジオでも言ってますが長期的な目標は、
①オリエンテーリングの観戦文化の醸成
②収益手段の構築
③オリエンテーリングのさらなる普及発展
の優先順位です。
少しずつ同時にやっていきますが①が全然育ってないうちに②は無理です。まずは動画配信回数や動画記録を蓄積して技術と知見を高めつつ、見る楽しみ方を普及させたいです。
お金取れるレベル!というコメントや感想も直接いただきましたが、お金を払ってまで見る層はオリエンティアでもごく一部でしょう。インカレロングでは寄付を募りましたが毎回寄付でやっていてはこの狭い業界ではすぐに限度が来るでしょう。参加者にとっても会場にはいない人にも応援されたり、映像記録が長期間残るのはメリットがありますから参加費に反映するのも一つの手段だと思います。継続開催される大会であればアーカイブは次回参加する動機づけの宣伝にもなります。協賛団体の広告を動画中に挿入して、要項の広告ページや表彰台背景ボード以上の価値を持つ広告募集もおそらく可能です。
③は私の事業目的なわけですが、これのためにはオリエンテーリングに興味を持った人がいつでも気軽に無料で動画を見られるべきだと現時点では考えています。インカレ以外のイベントでも配信に限らず映像記録を残して公開することは、興味を持たれるきっかけを増やすために重要です。最近は競技者視点のヘッドカム動画も多いですが、大会の雰囲気やイベントとしての体験を記録して広報していくのも普及発展に必要と考えます。

最後に
追記という形でごめんなさい。動画実況配信や演出の工夫はかなり以前から施行され発展してきました。偉大な先人のノウハウがあってこの配信事業ができているのに、ボランティアスタッフを酷使して私は事業としてタダ乗りしています。もうちょっと健全化したいとは思っています。
発案者であり直前までクオリティを高めたチーフのKさん、機材と技術の提供や創意工夫をこらして働いてくれたスタッフのみなさん、一緒に運営できてとても楽しかったです。ありがとうございます。ノウハウ提供や機材選定でたくさんのアドバイスをくださったKさん、これまでの演出挑戦と機材貸出だけでなくシステム開発までしていただけているMさんなどたくさんの方の協力がありました。皆様本当にありがとうございました。

長くなったので今日はこのへんで。オリエンテーリングAdvent Calendar 1日目の記事でした。まだスカスカなのでどしどし埋めて書いてってください!

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