逆噴射小説大賞2019セルフライナーノーツ

逆噴射小説大賞2019投稿作品セルフライナーノーツ!

第二回逆噴射小説大賞。僕はすでに定められし5発の弾丸を撃ち尽くし、あとは天命を待つのみです(大袈裟)。

しかしです。何ごとも振り返りは大事。ということで自作を振り返りつつ、今回、どういう気持ちでこの祭りに臨んだのかなども書いていってみようかなと思います。

1. 慟哭の巨人ゼガン

第一弾。
近未来を舞台にした人型決戦兵器ものです。

初日の0時ぴったりに投稿。正直に言うと、これを初弾にするかはけっこう悩みました。と言うのも、これは絶対に逆噴射小説大賞向きではない、800字で魅力を伝えることは難しい内容だと思っていて。だからあまり評価されないだろうなって考えていたからです。実際、今回投稿した中で最もスキの数が少ない(≒支持率が低い)のがこの作品です。

しかし。それでも敢えて僕はこの作品を初弾に選びました。なぜなら僕は世界で唯一、この先の展開を知っている人間です。そしてその先の展開を知っている唯一の人間として「この作品は凄いんだぜ」って思ったのであれば、それは胸を張って出すべきだろうと思ったのでした。

そういう意味でけっこう思い入れが強い作品です。一方、その魅力をうまく800字に込められなかったことは僕の力量不足、それが今の僕の等身大の力なんだろうなって思っています。もっとがんばろ。

作品のイメージについて。
たまたま何かの拍子に「来訪神」という言葉に触れて、その時「暗雲渦巻く空から巨大で荘厳なる機械生命体が降臨する。それこそが来訪神であり、人類を滅ぼす存在である」というイメージが浮かびあがりました。それがすべての始まりです。

作品のテーマについて。
「何かを犠牲にして生きている」ということをフィクションとして極大化した物語を書いてみたいと思っていました。しかし、それを絶望のままに終わらせない──そういう物語を紡いでみたい。そういう想いをこの作品に込めてみたい。そんなことを考えています。

連載の予定について。
連載します。おそらく今回の5作品のうち、一番目か二番目に連載するんじゃないかな……と思っています!

2. 黄金の華

第二弾。
魔術、超能力、超人的な武芸、サイバネ、電脳、なんでもありな世界での賭博ものです。当然、そのゲームのルールも駆け引きも、我々が知る賭博とはスケールが異なるものとなるでしょう。

そしてこの作品。実は去年の第一回逆噴射小説大賞に投稿した作品をリブートしたものなのです!

自分で言うのもなんですが、それまで小説を書いたことがなかったとはいえこれは下手くそですね……。いきなりクライマックスみたいな状況、そしてろくにルール説明もないので読者を完全に置いてけぼり。結果「スキ」が1つもついていないという無惨な結果に。

ただ、当時から思っていました。「この物語はちゃんと書ければ凄まじく面白くなるはずだ」と。そういうことで今回、逆噴射小説大賞の機会を利用してあらためて再始動させてみたというわけです(逆噴射小説大賞のレギュレーション的にもOKなはず)。

作品のイメージについて。
タイトルは古い道教の瞑想書「太乙金華宗旨」から着想。全体的に中華フレーバーを出したかったのです。あと確実に漫画「嘘喰い」の影響は受けています。

作品のテーマについて。
この作品も極限状況を描いてみたいという想いがあります。超人・魔人・怪人たちが博打で競い合う。当然、尋常な戦いとはならない。その極限状況の中で個々人がいったい何を賭けて戦っているのか、それを掘り下げていきたい……そんなことを思っていたりします。

連載の予定について。
連載します。が、これについてはちゃんと時間をかけていきたいですね。特にゲームのルールは話の肝になってくるので、そこはちゃんと練っておきたい。なので、他作品の連載と並行して構想を練っていくことになると思います。もともと一年前の第一回逆噴射小説大賞の時に種が蒔かれたものなので、今さら慌てることなく、この作品は気長に育てていきたいと思っています。

3. 東洋決死圏

第三弾。
桃山時代を舞台としつつ、古代インド神話などの世界観をミックスさせた軍記ものです。

主人公の沙也可ですが、実は史書にも登場する実在の人物です。ただし日本の史書ではありません。秀吉軍が侵攻した李氏朝鮮側の史書「朝鮮王朝実録」などに記録が残されている、日本から朝鮮側に寝返った人物なのです。

今、東アジアの政治状況って混迷を深めていますよね。だからこそ、冒頭800字の中で沙也可は「はっ。くだらねぇ!」と吠えていますが、そんな感じで現実に存在する国際情勢やその確執を「くだらねぇ!」と笑い飛ばし、軽々と越境していくようなフィクションを書いてみたいと思いました。そしてそれは徹底的に多国籍な色彩で、徹底的に娯楽に徹した物語であるべきでしょう。

作品のイメージについて。
沙也可を主人公にする物語は以前から漠然としたイメージがあって、封神演義のように大明帝国の道士や将軍、そして日本や朝鮮の武将などが入り乱れる活劇となるはずでした。そしてそれとは別に古代インド神話をモチーフにした物語のイメージもあって、その二つが、いつの間にかコンタミを起こしてしまったようです。

作品のテーマについて。
上述の通り。ありとあらゆる概念や縛りを、するすると越境していくような人物を描いてみたい。そしてその人物による、国という枠組みを超えた復讐劇を娯楽として描いてみたい……そんなことを思っています。

連載の予定について。
いつか連載します。ぶっちゃけ今回書いた5作品の中ではこの作品が一番、素の僕のノリに近いです。なので凄く楽に書けました。手癖でばぁっと書けてしまう感覚があります。がしかし。真面目に史実を下敷きにしようと考えると、史料にあたらないといけなくなるわけです。なので、さてどうしようかなと考え中です。娯楽作品としてあまりそこにこだわりすぎないというのもアリかなとは思っています。

4. 東京城、血煙り。

第四弾。
和のテイストを大切にしつつ、色や音、あと耽美的な熱量など、感覚的な側面を重視して書いた剣劇ものです。テンポ感にも気を付けて書きました。

実はこの作品、逆噴射小説大賞応募作とするかどうか迷いました。というのも、和風という点で東洋決死圏と被っていたし、あと感覚を重視した文体がちょっと癖がありすぎるかな……と感じていたためです。自分の文章ってあまり客観的に見ることができないので、不安になる時があるんですよね。でも思いのほか評価をいただき、思い切って出して良かったなと思いました。嬉しかったです。

作品のイメージについて。
もともとふっと浮かんできた「東京城」という言葉が始まりでした。続いて、雨降る藪の中でじっと潜み続ける少年(もしくは少女)の姿が浮かんできました。そこからどんどんイメージが膨らんでいった感じです。ちなみに主人公のナキリは今のところ少年とも少女とも明言されていません。なのでしばらくは、読者の想像に委ねます。ご自由にご想像ください!

作品のテーマについて。
色や音、淡い恋心などの感覚的なもの、それから刹那的な生き方、あっさり途切れる命、そういったものを僕の力量の中で可能な限り美しく描いてみたいという想いがあります。さて、どこまでできるかな……。

連載の予定について。
連載します。この作品に関してはイメージが膨らみ続けているので、「慟哭の巨人ゼガン」か「東京城、血煙り。」のどちらかが次の連載になる可能性が高いかなと思っています。

5. 根源のヴィリャヴァーン

第五弾、最後の弾。
異世界ファンタジーものです。

これはもともとゴリゴリのファンタジーを僕が書いてみたらどうなるだろう……というところから考え始めた作品でした。この作品は5作品の中で一番苦労しました。最後の弾だから凄いものにしようという妙な気負いがあったし、あと、800字の中で可能な限り盛りあがる箇所を作りたいとも思っていました。しかし、どうにもうまくいかない。

それで「うー」となっている時に、ふと「いやいやいや、そもそもお前は、この作品で何が書きたいのか?」という問いかけが浮かんできたのです。その問いかけに対して自分なりに考え、答えを出した結果がこの冒頭800字だったわけです。

逆噴射小説大賞の場合、当然ですがやはり800字でインパクトを残すということが重要です。で、その定石として「あっと驚く設定で惹き付ける」とか「最終行で全てをひっくり返す」とかそういったものがあったりするわけですが、今回、そういった「逆噴射小説大賞としての定石」みたいなものは一切無視して「丁寧に小説冒頭を書く」ということに専念してみました(と言っても、もちろん800字に収めるために歪めた部分はあります)。

あと、僕は地の文で物語の設定を細かく説明するのが苦手なんです(読み手としては苦手ではないです。あくまでも書き手として)。可能な限り、その世界の事は情景描写や人物の言動の中で伝えていきたい。だから詳しい説明はしないけれど、どういう世界なのかしっかりと肌触りが伝わる、そんな描写を心掛けました。結果「逆噴射小説大賞のレギュレーションの中では評価はされないかもしれない。でも、僕はここまで書けるようになったんだぜ!」と自分の中では凄く納得できる文章を書くことができました。

なので「これは評価されないかもしれない」と思って公開したわけですが、実際にはけっこう評価いただけて嬉しかったです。自信にもなりました。いつもの「客層」とは違う方面からも評価をいただいている感触があって、手応えを感じています。

ちなみに今回は完全に省きましたが、実は戦闘描写なども書いていました。

 炸裂する閃光、殺到する光。バ・ザは跳躍していた。宙を舞うその体を取り巻くようにして、鎖が螺旋の軌道を描いていく。刹那。宙を切り裂き暴れ狂うそれは、まるで空を駆る大蛇イルルヤガのごとく! ばん、ばん、ばん。兵たちの頭蓋が弾ける音。舞い散る花弁、そして血霧。

「ふん、愚かな」

 冷たく言い放つル・リエム。その体が淡い光に包まれ、その手が不気味な印を結んでいく。

「大力神通、光悦来来、急急如征令」

一部抜粋ですが、こんな感じです!

作品のイメージについて。
間違いなく富野由悠季のバイストンウェルからは影響を受けていると思います。あとはグノーシス神話や仏教的なイメージとか、ユングとか、エリアーデとか、僕の中にあるそういった素養がベースになって生まれてきているような気がしています。

作品のテーマについて。
ここではないどこか、胸焦がれる郷愁を感じさせるもの、それへの憧れ。そしてその憧れを縛りつける世界とのコンフリクト。さらには小さな流れが大きな流れとなり、個人の運命が世界の運命に結びついていく。そういったもの娯楽活劇として描いてみたいなと思っています。

連載の予定について。
連載……したいです。でも他の作品もあるのでどれだけ先になるんだろう……? せっかくなので、じっくり世界観を熟成させていきたいと思っています!

全体を通して

今回、明確に自分に課した基準として「本気で連載するつもりで考える、そして実際に連載をする。その気が起きないものは弾丸とはしない」というものがありました。また「全作品の読み味、テイストを変える」という目標もありました。結果、本気の連載を前提にしたことで世界観の掘り下げもうまくできたし、読み味を変えるという点でもそれなりにうまくやれたんじゃないかなと思っています。

一方で「本気の連載」を前提としてしまったがために、逆噴射小説大賞のレギュレーション攻略としてはちょっと弱くなってしまったかな……とも思っています。もっとパルプパルプしたものだったり、胡乱度やトンチキ度が高いものも書きたかった!

ネタ帳にはいっぱいあるんですよね……。少しワードを拾い上げるだけでも「人体低気圧バースト」とか「電脳快楽処刑装置」とか「地獄からの使者ブレンダーマン」とか「異世界転生レボリューション」とか「計算機科学文明とその諸相」とか「水戸黄門監禁事件」とか、意味不明で面白げな言葉が躍っています。実際、面白くできるイメージもあります。

あとジャンル的にも、もっとバラエティー豊かにしたかったなぁという想いがあります。たとえば推理ものとか、ホラーものとか。あ、コズミックホラー書きたい。コズミックホラー。うん。

ただ今回、本気の連載前提で5作書いたということもあって、しばらくは連載ネタには困らなそうです。ということは、来年また逆噴射小説大賞が開催されるのであれば、次は連載度外視でこの辺りに取り組んでみるのもありだなって思っています。

自分の成長について

前回の逆噴射小説大賞から小説を書き始めて一年が経ちました。「この一年でどれだけ自分が成長できたのかを確かめる」ということが、今回の自分にとっての大きなテーマでした。結果、「お、ちっとはやれるようになってきたかな」という感触を得ることができています。嬉しい。

そしてこれは断言しておきましょう。間違いなく来年の今ごろには、僕はもっと上手くなっている。やってやるぜ。

逆噴射小説大賞について

今回の逆噴射小説大賞、めちゃくちゃ楽しいですよね。前回は400字ということでアイディアの断片みたいな内容が多かった印象ですが、今回はしっかり小説しているものが多いなと感じました。

今回から5作までの応募という制限がついたことで、皆さん、けっこう練り上げてから投稿しているという印象です。正直最初は5作は少なくないか? と思っていましたが、全然そんなことはなく、かなり良い塩梅のレギュレーションで最高だったなと感じています。

今後について

まずはしっかり、今連載中の「死闘ジュクゴニア」を進めていきたいなと思っています。連載頻度を高めていきたい。

そして「死闘ジュクゴニア」が一区切りついたら、今回の5作品の中からどれかを選んで新連載を始めてみたい。上でも書きましたが「慟哭の巨人ゼガン」か「東京城、血煙り。」のどちらかが最有力です(が、確定ではありません)。

もちろんタピ子についても連載は進めていきます。こっちは僕にとっての息抜きなので、同時並行でも大丈夫でしょう。

そんな感じで、これからもよろしくお願いします。


【おしまい】

補足

ボツ作品含めた逆噴射レギュレーションな作品の紹介は下記からどうぞ!

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