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【AIと戦略】 その広告、意味ある?『予測マシンの世紀 第四部』#26

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

AIとの共同に関して、『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』をまとめていきます。推理小説のようで、ドキドキワクワクです。

目次
はじめに―機械知能
安さはすべてを変化させる
第1部 予測
第2部 意思決定
第3部 ツール
第4部 戦略
 第十五章 経営層にとってのAI
 第十六章 AIがあなたのビジネスを変容させるとき
 第十七章 あなたの学習戦略
 第十八章 AIリスクの管理
第5部 社会(AIと人類の未来) 

いよいよ第四部、戦略です。どう戦略に組み込むか、一番大事な部分です。先日の記事は以下。

■AIリスクの管理
AIニューロサイエンス、面白いですね。説明可能なAIに関して、名著が日本語訳が有志からでました!

今後必須な分野なので、上記もいずれはまとめます。

さて、AI導入に関してのリスクを考察していますが、本日は品質に関してのリスクです。通常、広告の効果はROIで測定するそうです。

消費者向けのビジネスを展開している企業であれば、広告を購入し、その広告のROIを測定したことがあるだろう。例えば、Googleの広告費を支払った結果、ウェブサイトでのクリックスルーや購入が増えたという経験があるのではないか。つまり、Googleで広告を買えば買うほど、その広告からのクリック数が増えたのだ。

Google広告打ったことがある方はわかりやすい話です。ここに予測マシンを入れてみましょう。

そのデータをAIに見てもらい、新しいGoogle広告のクリック数が増えるかどうかを予測してもらうと、これまでの正の相関関係がAIによって裏付けられる可能性が高い。その結果、マーケティング担当者がもっとGoogle広告を買いたいと思ったときに、それを裏付けるROIのエビデンスが得られる

なぜROIが上がるのでしょうか?

ひとつの可能性として、広告がなければ消費者は商品を知らないということがある。この場合、広告は新たな売上を生み出すので、広告を掲載したいと思う。

広告を打つと消費者が商品を知ります。そうすると売り上げが上がります。あり得る話ですね。

もうひとつの可能性は、広告は潜在的な顧客にとって最もクリックされやすいものだ。

広告は潜在顧客にアピールできるので、潜在顧客→広告見る→商品購入でROI上がる可能性あります。しかし、です。潜在顧客が広告を見て、商品を見つけたというのは、どうやったらわかるのでしょうか?

つまり、広告が売上増加に結びついているかもしれないが、それは潜在的なフィクションだ。広告が無くても、売上は関係なく増えたかもしれない。このように、広告とそれに費やす費用が新たな売上を生み出しているかどうかを本当に知りたいのであれば、状況をより深く検証する必要がある。

予測マシンからすると、広告を出すと売り上げが上がっているように見えるので、正の相関関係を予測します。しかし、これが本当かどうかは、広告を打たなかった場合に売り上げがどうなったかを検証する必要があります。ebayの話が本では取り上げられています。

2012 年、eBay に勤務する経済学者は、eBay を説得して、米国の 3 分の 1 の地域における検索広告を丸 1 ヶ月オフにした 。この広告の ROI は、従来の統計を用いて測定すると 4,000 パーセント以上だった。もしROIの測定値が正しければ、1ヶ月間の実験を行うことは、eBayにとって莫大なコストになる。

詳細は以下の論文です。

結果はどうだったでしょうか?

しかし、経済学者が見つけたものは、彼らのアプローチを正当化するものだった。eBayが掲載した検索広告は、売上にほとんど影響を与えなかった。そのROIはマイナスだった。Googleは、eBayのリスティングを関係なく上位に表示する。しかし、BMWやAmazonなどのブランドでも同じことが言えた。唯一、広告が効果を発揮しそうな分野は、eBayに新規ユーザーを呼び込むことだった。

なんと、ROIはマイナス。広告の効果はなかったと。ここから何を学べるでしょうか?

この話のポイントは、因果関係のある実験ではなく、相関関係に依存するAIが、データや単純な統計を使う人と同じような罠に陥りやすいことを示すことだ。広告が効果的かどうかを知りたければ、広告が売上につながるかどうかを観察すればいい。しかし、それだけではなく、広告を出さなかった場合に売上がどうなるかを知る必要があるからだ。

AIを学習させる際に、広告を打たなかった場合も考慮しないと、正確な予測が出来ないと。AIは相関関係に依存するので、罠に陥りやすいと。

たくさんの広告と売上があるデータで学習したAIは、広告が少ないとどうなるかを知ることが出来ないそのデータがないのだ。このような未知の可能性は、人間が判断しなければ克服できない予測マシンの大きな弱点だ。今のところ、AIがその罠に陥っているかどうかを見極めることができるのは、思慮深い人間だけだ。

人間の可能性を感じます。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/

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