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ルッキズムに加担(3月の日記)

もやもやとして朝起きた。先日web雑誌の撮影の現場で会った男のスタッフさんが、声も太く身体も大きく、人を年齢で判断するタイプだったので嫌だなあとか、早起きなんてもうやりたくないなあとか思っていたけど、違った。私は、マスコミにいて、ルッキズムに加担しているんじゃないか。そう思ったら止まらなくなった。

玄人(テレビに出ている若手俳優さんとか、女性ファッション誌の専属モデルさんをここではそう定義する)以外の撮影をする機会は、意外とたくさんある。スナップもそうだし、体験記事、ヘアカタログ、読者モデル撮影、広告タイアップ・・・。でもそういう撮影には、いわゆる「モデルとして誌面に写れるレベル」というものが存在する。スタッフ側で事前に顔や身体の選定があり、この子はOKこの子はNGこの子は肩幅が広いからバストアップならOKこの子は右側の横顔だけ抜群にかわいいから角度限定とかいろいろある。

現場でつくる「かわいい」ってなんだろう。誰の価値観の中から作られた「かわいい」に当てはめてるんだろう。それに合わないと「(顔が太ってて)びっくりした」とか「きわどい顔だね」とか平気で言うものだから、驚いてしまう。しかも、それに現場で同調するしかない自分の情けなさにはもっと驚いてしまう。
「かわいい」が難しい。この業界では、自分らしくいることはかわいいではないようだ。結局撮影中に「かわいいね〜〜〜っ!!」とスタッフが声を上げる瞬間って、たまたまその場にいたカメラマン、編集、ライター、企業の人などもろもろの人間の「かわいい」の価値観が合致しただけなはずだ。
「かわいい」ってなんだろうか。ヘアメイクで映えること? 見るものを引きつけるカリスマ性があること? なにが「かわいい」?

ある時、ちょっとぽっちゃりめの丸顔のモデルさんが現場に来たのだけど、私はその子のことすごくかわいいと思った。澄んだ黒目と黒髪も、丸い顔と同じくらいまんまるな瞳も含めてかわいいと思った。けど、その現場での「かわいい」ではなかったみたい。その子が"パンパンに太っていた"から。「顔、ぱんぱんじゃない?」とカメラマンがささやく。どうやって撮る? 寄って肩幅が目立たないようにすればいいんじゃないですか? 横顔を撮ればきっと目立ちませんよ。そういう会話が飛び交う。その子に聞こえてしまっただろうか。

私は、雑誌や様々な媒体の制作を担う仕事をしている。それがライターだ。雑誌や様々な媒体は、"きれい"や"かわいい"の価値観を作る役割も担っている。メディアだからだ。
華やかで、きらびやかな世界の中で、ただ"かわいい人"を"かわいく"する仕事ってなんなんだろう。ある一種の"かわいい"を押し付けるルッキズムに私は加担しているんじゃないだろうか。

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以前、手にとって途中までしか読んでいないのに手放してしまった本がある。当時、弟が「美しくなければ意味がない」というようなことで悩んでいる時期で、きっとこの本が役に立つだろうと弟に渡した本だ。

犬山紙子さんが推薦コメントでこう言っていた

世間が勝手に決めた美のスタンダード そこからするっと抜け出して自分を慈しめる、最高の本です

今こそ読み返す時期なのかもしれないなと、片足だけでもファッション・ビューティの世界に突っ込んでいる私みたいなライターは思うのだった。


今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!