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第42回読書会レポート:永井荷風『濹東綺譚』(感想・レビュー)

(レポートの性質上ネタバレを含みます)

7月の回も、満員御礼定員オーバーのキャンセル待ち回となりました。

永井荷風には失礼ですが、『濹東綺譚』で正直こんなに席が埋まるとは思っていなかったのでびっくりです。

コロナも明けてリアルで集う場が求められていると感じています。

これからも文学をツールにより楽しく、おしゃべりしてスッキリできる読書会を追求していきます!

どうぞよろしくお願いします。

ご参加の皆さまの感想

・当時の雰囲気が伝わってくる
・小説?随筆?世相史?
・当時の読者にとっても既にレトロだった
・黄昏時に読むといい!
・朗読で聴くといい!
・答えがない小説
・読者に委ねている
・情緒、情景が美しい
・ラビラント
・現実に生きる女性、私娼
・人格が違う複数人で書かれているように感じた
・最後の詩が下手
・思想が無い小説。
・当事者性が薄い、傍観者
・いわゆる耽美派


「今日は何の話しだったんだろう......」という女子大生の意見が象徴している!?笑


私も初読は、あまりにふわっとしていてよくわからない作品だった、というのが率直な感想でした。

それでも人数が集まれば、様々な意見がどんどん出てくるもの。

参加者の皆さまの声をまとめながら、本作品のレビューにしたいと思います。

「これは名文だ」と主張する人もいれば、

「女性の立場からはやはり、私娼をネタにしている時点で、女性を蔑んでいるように見えてしまう」などと様々な意見がきかれ、

それに対して「これが女性蔑視だなんてまったく理解できない」という男性もいました。

最終的には(主張のない作品なのに)「こんなに盛り上がるとは思わなかった」という感想も聞かれ、『濹東綺譚』の奥深さを味わうこととなりました。


「当事者性の薄い、異邦人的な立ち位置」という意見に共感!

淡々と情景を写しとっている傍観者的な語りの特徴は、作中作という構造からも意識していることが分かりますし、徹底しています。

6月の課題本に取り上げた『蒲団』は自然主義文学を曲解している、という評価もある問題作でした。
本来の自然主義とは、ありのままをそのまま描くことであり、露悪的なものではありませんでした。

永井荷風は海外への渡航経験もあり、外側から日本を見る機会があったために、『蒲団』をもてはやすほど独特に変化を遂げた日本版自然主義に対して、本来の自然主義というものを示したかったのではないかと考えます。

いわゆる”耽美派”

文学史上で永井荷風は「耽美派」とされています。

耽美派とは、、、
美を人生最高の価値とおき、そのためには道徳功利性を除してでも美の享受・形成をめざした文学の流派、とされています。

玉ノ井の私娼を通し、愛の眼差しを持ってありのままにこの世界をとらえ、そこに人間らしい在り方と本来の美しさを捕らえようとした、
まさに一筋縄ではいかない「人間世界のラビラント」を玉ノ井で生きる一人の私娼の生活を借りながら、唯美的に描くことへ挑戦したのではないかと思います。

そこには、社会とは一線を画した立場から淡々と事実を描写していく、冷静な眼差しも共存していることが必須で、その独特な筆致はノスタルジーを醸し出すことにも成功しています。

とはいえ、美の感覚は人それぞれであるのも事実であり、共感できる場合と、そうでない場合に分かれるものです。

女性の皆さま、これが「女性賛美なんだ!」ということなのですが、、、
いかがでしょうか???

(2023年7月9日日曜日開催)


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【第42回課題本】


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