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読み終えてレビューを見たとき、思わず「えっ!なんで!」と叫んでしまった。【菅広文『京大芸人式日本史』幻冬舎】

「自分的にはイマイチ」
「あんまりおもしろくなかった」
「つまらない」
「菅ちゃんの本はおもしろいけど、これは微妙」

え?え?
もしかして、自分の感覚がズレているのか・・・?

もちろん、レビューが全部「イマイチ」と記されていたわけではない。
「おもしろかった!」「ロザン仲良すぎ!」という肯定意見もある。
しかし、某サイトでは、「おもしろい」「つまらない」のレビューが、ほぼ半々。

正直、自分の感想を否定されているような気がしてすごくショックだった。

と言うのは、僕は「日本史の入門書」として、この上ない最適な本だと思ったからだ。

少し前述したが、著者はお笑いコンビ「ロザン」の菅ちゃん。
この本は、彼がある年の新聞に掲載されたセンター試験の日本史をさっぱり解けなくなっていて愕然としたところからはじまる。

言うまでもなく、菅ちゃんの相方は京都大学卒の宇治原だ。
そんな宇治原には、歴史を勉強するにあたって一家言がある。

「物語を読むように学べ」

この一家言に対して、菅ちゃんが提案したのが、自らがタイムマシーンに乗って、「日本史の旅」に出ることだった。

中大兄皇子と中臣鎌足が、租庸調制について漫才で解説する。
達筆だと謳われた弘法大師に菅ちゃんが「菅」の文字を一筆もらいに行く。
菅ちゃんがインタビュワーとして、徳川吉宗・水野忠邦といった将軍や大名に突撃する。
そしてロザンの2人が、新島襄や福沢諭吉を相手にクイズ対決に挑む。

これらは、ほんの序の口。
そして、さすが芸人!という個性豊かな比喩表現も、すとんと知識として落ちてくる。

ではいったい、なんでこの本はこんなに賛否両論が分かれるのだろうか。

思うに、たとえば租庸調制など、すでにその知識を確固たるものとしている人にとっては、あらためて漫才で説明されても「スベっている」と感じるのだろう。
もしくは、なにかこう、硬派な歴史書や教科書で覚えないといけない、という先入観もあるかもしれない。

僕も、様々な堅い歴史の本を読んできた。
それらもたしかにおもしろかった。
しかし「おもしろい」ことと「とっつきやすい」こととは、また別の問題だ。

僕は高校地理歴史の教員免許を持っているのだが、教育実習のときそれは苦労した。教科書のことをただひたすら授業しても、つまらない生徒にはとことんつまらない。
そこで自分が撮った写真を見せたり、教科書には漏れたプチ情報を交えたりして、歴史が身近に感じられる授業をしようと心がけた。

実際、生徒の反応が良かったのは、くどくど説明していたときより、僕自身が元寇防塁跡で自撮りした写真を見せたときだった。(女子からは「キモッ!」と言われたが)

歴史の入り口は、なにも教科書だけではない。
こんな「歴史漫才」が、歴史っておもしろい!と思える最初のきっかけでも、いいじゃないか。
この本は、「歴史は物語を読むように学べ」と豪語した宇治原と「だったらタイムマシーンに乗ったらええやん」という菅ちゃん、つまり「ロザン」の2人の発想力の大勝利だ。


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