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国内で報道が少なすぎるモーリシャスの船舶座礁、重油流出問題について解説してみた

皆さんこんにちは、shunGoです!!

本日は、今年7月にインド洋沖で日本の貨物船が引き起こしてしまった大惨事について分かりやすく解説をしてみたいと思います。

日本国内では報道されることが少ないこの事故ですが、日本の貨物船が原因で起きてしまった事故であることは間違いなく、私たちも加害者側としての認識を高めるため一定の情報を知っておく必要があります。

日常生活ではあまり触れることのない分野の出来事かもしれませんが、内容そのものは決して難しくはありません。私も知らない単語がたくさんあったので、意味をしっかり説明しながら解説しようと思います!(^^)


①事故の概要(座礁とは?)

まずは大まかな事故の流れについて説明したいと思います。

岡山県の長鋪汽船という企業が所有しており、事故当時は商船三井という海運会社が利用していた貨物船「WAKASHIO」は中国からシンガポール経由でブラジルへ向かっていました。

商船三井によると、船には約3800トンの重油と約200トンの軽油が積まれていたということですが、日本時間の2020年7月26日にモーリシャス島付近で航海中のWAKASHIOが座礁してしまいました。

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*座礁・・・船舶が海の浅瀬に触れてしまったり、乗り上げてしまうこと

この座礁により船体が損傷し、救助作業中の8/6に大量の重油が流出しました。その量なんと1000トンと言われています。回収作業が行われましたが、すでに流出した重油はモーリシャス島の海岸線まで到達しており、様々な生態系をはじめ、観光産業が重要な産業であるモーリシャスにとっても相当な損害となってしまったのです。

また、この事故によってモーリシャス政府は "環境緊急事態宣言" を発し、生態系への壊滅的な危機が訪れる可能性があるとしました。各国からも、流出した燃料の除去作業のための人員や物資などの様々な援助がされています。

日本企業が所有する船舶であると最初に言いましたが、この事故当時の乗組員は計20人で出身国はインド3人、スリランカ1人、フィリピン16人と日本人は乗船していませんでした。事故後、地元警察は安全な航行を怠った疑いでインド人船長とスリランカ人1等航海士の2人を逮捕しました。

②モーリシャスってどんな場所?

この事故、ここまで深刻な問題になっている理由として、流出した燃料の "量" ではなく、流出した "場所" が非常に悪かったと言われています。

領域としてはモーリシャス周辺と報道されていますが、このモーリシャスとは一体どんな国であり地域なのでしょうか?

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↑赤いピンで示された場所

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モーリシャスは、アフリカのマダガスカルの東側に位置する東京都と同じくらいの面積の島国です。人口は約130万人であり、インド系民族が多数派です。

この国はその美しさから "インド洋の貴婦人" と称され、「トムソーヤの冒険」の著者であるマーク・トウェインは「神はモーリシャスを作り、それをまねて天国を作った」と評したことで有名です。

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写真を見れば、称賛されるのも納得ですよね!!
一生に一度は行ってみたいなあ、なんて思っちゃいます笑

この美しい楽園を求めて、世界中から毎年約100万人の観光客が訪れる観光大国でもあるのです。

モーリシャスの周辺は、非常に豊かな生態系が整っており "生物多様性のホットスポット" とも言われ、多くの絶滅危惧種が生息するエグレット島自然保護区や、ラムサール条約指定領域であるブルーベイ海洋公園・ポワントデスニー湿地帯が存在します。

※ラムサール条約・・・世界中の湿地の保護をして水鳥を頂点とした食物連鎖を守ろうという条約

このような、生態系・環境にとって非常に重要な意味を持つ領域に重油が流出してしまったのです。つまり、重油の悪影響で生態系の崩壊がもっとも心配されているのです。

実際、事故後多くの魚やカニが死んでいることが確認され、イルカの大量死(原因が不確定)も確認されていることから、徐々に生態系への影響は出てきているのが現状です。

③事故の原因は?

座礁した原因についてですが、依然として(9/2時点)明確な原因は発表されていませんが、専門家などから複数の予測が立てられています。

まず、座礁地点の周辺で何かに衝突した可能性。位置情報のデータ分析を扱う会社の調べによると、事故直前、約1分間に針路をほぼ90°変更しており、速度も大幅に落ちていることが分かりました。専門家によると、このような急旋回・減速は人為的なものではない可能性が高いとして、何かに衝突したのではないかと推測しています。

一方で、そもそも座礁のリスクがある領域で航海することは考えられず、商船三井によると、予定されていた航路から外れていた事実も把握していると発表しています。これに関して、インド人船長らが「インターネットに接続して故郷の家族と通話し、新型コロナウイルスの流行状況を知りたかった」と供述していることが分かりました。

現在、原因の発表については公式のものは発表されていませんが、上記のようなことが原因として考えられています。

④被害はどれくらい深刻なの?


被害の大きさとして示される数字のデータは調べきれませんでしたが、もっとも深刻な影響を受けると考えられているのが生態系です。特に、世界的に希少と言われるサンゴ礁への被害はかなり問題視されています

また、沿岸部のマングローブ林にも重油が流出したことで、マングローブの呼吸の役割を担う根っこの部分に油がついてしまい、約半年で枯れてしまう危険や、周囲に生息する生き物たちの生命にも関わる可能性があります。

マングローブまで到達した重油は除去するのが非常に困難であり、人の手で除去する他ないのが現状です。地域の住民を中心に、美しい海を守るために手作りのフェンスを海に浮かべて重油を岸から遠ざけたり、岸まで到達した重油を手ですくってバケツに移したりしています。

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さらに、モーリシャスの経済にとっても深刻なダメージがあります。観光業はモーリシャスにとって重要な産業の一つですが、既にコロナウイルスの影響で大きなダメージを受けていた中で今回更なる事故が起きてしまったため、経済的な打撃はダブルパンチ状態です。

同様に、漁業へのダメージも考えられており、今後の労働者への支援も必須になると言われています。

⑤これからどうなっていくの?

地元の環境団体などによると、サンゴなどの回復までには20〜30年ほど要すとされているため、日本政府や企業による継続的なサポートは必要になると言われています。

また、モーリシャス国内では政府の事故対応の遅さや、イルカの大量死の原因についての抗議デモが行われており、モーリシャス政府の迅速な対応が求められています。現在、モーリシャス政府は漁業支援のために日本側に32億円の支払いを要求していますが、今後何かしら日本に求める可能性も大いにありそうです。


いかがでしたでしょうか??

今回の事故によって、1つの国の経済がさらに悪い方向に傾いてしまう可能性や生態系の秩序が崩れてしまう懸念があることが分かりました。

テレビであまり報道されない理由は様々でしょうが、常に被害者面をして偏った報道に目を向けるのではなく、もっとリアルの、生の情報に触れることも大切かなと思いました。

では、また!!!!!



[画像出典]
https://www.ikyu.com/global/mu/
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f35f9e8c5b65bbd8c8ac6eb
https://www.sankei.com/world/news/200813/wor2008130011-n1.html



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