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東証の市場区分変更(市場再編)を3つのポイントでざっくり理解する

2022年の4月に東証の市場区分再編が予定されています。再編まで残り1年弱となり、最近ではプライム市場やスタンダード市場といった言葉をニュースで目にする機会も多くなってきました。

しかし、東証の再編は論点も非常に多く、なかなか全容を把握することは難しく感じます。そこで今回は、東証の市場再編について3つのポイントに整理してお伝えします。詳細にはあえて踏み込まず、ざっくり理解するのが目標です。

ポイント1.そもそもなぜ市場再編を行うのか?

ーーーヒトコトで言えば、肥大化した東証1部のダイエット?

東証再編の背景には、そもそも東証1部上場企業が多すぎるという問題があります。現在日本には約3,800社の上場企業があります。そのうち、全体の6割にあたる約2,200社が東証1部に上場しています。

ちなみに、日本の大学進学率が約6割ですから、東証1部上場企業というのはそのくらいありふれているというわけです。

なぜ、これだけ東証1部上場企業が多いのでしょうか。それは、東証1部上場のハードルが極めて低いからです。そもそも、東証1部に上場するには250億円の時価総額が必要です。しかし、これには抜け道があります。

実は、東証2部やマザーズを経由する「内部昇格」には優遇措置が設けられており、この場合は時価総額40億円で東証1部に上場できるのです。この制度を活用するケースは非常に多くなっています。

このように上場のハードルは非常に低くなっており、いわば「ぬるま湯」の状態にあります。ですから、東証1部上場企業が上場企業全体の6割を占めるほどに膨張してしまっているわけです。

日本最高の市場である東証1部の上場ハードルが低く放置された結果、日本企業の収益性は欧米に比べ劣っています。この問題意識が、東証再編やコーポレートガバナンス改革につながっているのです。

ポイント2.どういう基準に変わるのか?

東証は市場区分変更によって、3つの市場に分けられます。プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つです。最上位のプライム市場に上場する企業には、現在の東証1部より高いハードルが課せられます。

具体的には、流通株式時価総額100億円以上というのがプライム市場の上場基準になります。流通株式が基準になるので、親子上場企業やオーナー企業は市場再編により不利になります。

また、他の市場からの内部昇格の仕組みは廃止されます。例えば、スタンダード市場からプライム市場に移行する場合、新規上場基準と全く同じ基準が求められるように変わります。

当面の間は経過措置が取られるものの、上場に対するハードルが上がることで、プライム市場は現在の膨張している東証1部よりスリムな企業数になることが予想されます。

ポイント3.市場再編で何が起こるのか?

市場再編によりプライム市場の上場基準が厳しくなるので、現在の東証1部のように膨張することはなくなるものと思われます。今回の市場再編は、肥大化した東証1部のダイエット計画とも言えるかもしれません。

また、そもそも利益相反問題を抱える親子上場企業には厳しい目が向けられています。今回の市場再編によって、親会社が保有する子会社株の売却や、逆に親会社による上場子会社の買収などの企業イベントが増加することも予想されます。

ちなみにアメリカでは、規制強化などにより上場維持コストが高まった結果、上場企業数が20年で半分にまで減少しました。日本においても、企業によっては上場廃止を選択するケースも出てくるかもしれません。

今回は以上です。

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