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首下がりに対する全身への介入

首下がり症候群(DHS)は頸部伸筋群の著明な筋力低下によって、頚部中間位保持が困難となる一連の症候群である。

首下がり症状を頚部局所の障害として捉えるだけでなく、立位姿勢の評価から脊椎全体および骨盤帯にも着目し、立位姿勢全体の矢状面アライメントを是正することも有効。


疼痛の一例
・肩後面痛下垂した頭部を支持するために生じた僧帽筋の過用性疼痛

・頚部後面痛首下がり症状によって生じた頭板状筋の伸張痛


姿勢の一例
首下がり症状に伴う頚部屈曲モーメントに随伴して、頸胸椎移行部および胸椎後彎が増大

・腰椎前彎の過剰代償によって立位矢状面パランスを維持


・骨盤後傾によって重心を後方偏位させ立位矢状面バランスを維持


介入の一例

・リラクゼーション
頚部痛は頸部深層筋の活動抑制と表層筋の活動進による筋活動コントロールに異常をきたし、頚部運動に影響を及ぼす。


ㆍROMex
下衣頚椎および頸胸椎移行部を徒手にて伸展方向へ誘導しながら頚椎伸展ROMを行う。

頚椎矢状面上の運動には屈曲・伸展に加えて前方突出と後退があり、下位頚椎の最大伸展は後退した状態から伸展することで生じる。

したがって、頚部伸展最終域ではやや顎を引かせて頚部を後退させ、その状態で3 秒維持させると良い。


ㆍMSE
頚部伸展運動は関節運動に貢献する表層筋と頚椎前彎支持に寄与する深層筋がそれぞれ協調して収縮することによって円滑な関節運動が可能となる。

その中でも首下がり症候群の改善には表層筋である頭板状筋や、深層筋である頚半棘筋が重要。

第一に頚部中間位から伸展方向への等尺性運動を行うことで頚半棘筋を賦活化させ、次に頚部伸展と同時に肩伸展・肩甲骨内転運動および胸椎伸展運動を組み合わせて実施し、菱形筋から頭板状筋への頸胸椎筋膜運動連鎖によって頭板状筋の促通を図る。


腹部引き込みによるドーインは腹横筋の筋活動を促すことで、腰椎屈曲方向への剛性を高め、体幹安定機能に関与する。


したがって立位姿勢矯正運動として頚部中間位保持姿勢にてドローインを実施し、頚部中間位保持の延長、体幹安定性向上を図ることが大切。

頚部伸展運動を頚部伸展と同時に肩伸展・肩甲骨内転、胸椎伸展運動を組み合わせて実施する。これにより頚部伸展時に頸胸椎筋膜運動連鎖の働きが得やすく、その結果、頚部伸展筋群の筋出力増加に繋がる。

加えて頸胸椎アライメントが是正され、頚部痛・肩後面痛が軽減する可能性がある。


まとめ
首下がり症状による前方注視障害の代償を考える上では、腰椎や骨盤帯による代償機構が働いているか否かが重要。

前彎代償や、骨盤後傾代償は重心の後方偏位に繋がる。長時間前方注は後方重心の改善が重要。

頚部自動伸展機能の改善に加えて、矢状面上における脊柱全体と骨盤帯のバランスが取れた立位姿勢を目指した介入が有効。


参考文献 首下がり症状を呈した変形性頚椎症症例に対する脊柱アライメントの改善を指向した理学
療法介入の効果検討佐野裕基他 理学療法学4巻2号

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