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現役限定!愛してやまない映画監督たち①

みなさんこんばんは。
今回は私が存命中の映画監督の中で愛してやまない方々をあげていきたいと思います。

日本編

橋口亮輔

ベスト3
①『ぐるりのこと。』
②『ハッシュ!』
③『恋人たち』

1962年生まれ、現在59歳の映画監督で、ゲイを公表している数少ない日本のフィルムメーカーです。
非常に寡作な映画作家で、1993年の長編デビュー作『二十才の微熱』から今までで5本しか長編は撮っていません。
にも関わらずというか、だからというべきか、その全てに監督自身の「痛み」が刻印された作品になっています。

特に『ぐるりのこと。』は唯一夫婦愛について描いた作品で、日本映画史上に残る傑作だと思っています。

「もっとちゃんとしたかったのに」と木村多江演じる妻が言います。
「何を」とは言わない重みがそこにはあります。直接的には子供を産むことですが、「ちゃんとした夫婦」「ちゃんとした人生」「ちゃんとした自分」になれないというあのシーンは素晴らしかった。

そして『ハッシュ!』は片岡礼子さんという突出した才能が発見された映画でもあります。基本コメディタッチなのですが、他の人が扱っていたら不誠実な作品になっていそうなところを、監督自身の「痛み」がしっかりと刻印されておりとても誠実で、日本の家族像を一変させるような力を持った作品です。未だにこれを超える「新しい家族のかたち」を扱った作品はないように思います。

前作『恋人たち』からもうすぐ7年、そろそろカムバックしてくれないかなと心待ちにしています。

石井裕也

ベスト3
①『生きちゃった』
②『茜色に焼かれる』
③『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

1983年生まれ、現在38歳と非常に若い監督ながらも日本では今や押しも押されぬ名監督となりつつあります。
個人的に惜しいと思うのは、海外の映画祭でほとんど評価をされていないことです。本人が興味がないのかプロデューサーの意向なのかは分かりませんが、もっと海外でも評価されるべき作家だと思っています。

正直言うと石井裕也監督の全作品を観ているわけではありません。特に評価の高い『舟を編む』や『川の底からこんにちは』など代表作をまだ観ていません。

最初にノックアウトされたのは『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でした。観た理由はキネマ旬報ベストテンで一位だったからです。隅々まで計算され尽くした画面、役者のベストアクトを引き出す演出力、映画的な視覚的カタルシス、全てがそこにありました。

そして『生きちゃった』で完全にファンになりました。この作品はキネマ旬報ベストテンには漏れてしまっていますが、前述した冴えわたる画面構成、演出力に加え狂気にも近いようなエネルギーを感じる一作でとても好きな作品になりました。

今年は『茜色に焼かれる』に続き韓国との合作映画『アジアの天使』も高評価、現代日本を代表する監督と言っても過言ではありません。断言します。次の作品もきっとすきになる。

外国編

ラース・フォン・トリアー

ベスト3
①『メランコリア』
②『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
③『ニンフォマニアック vol.1 / vol.2』

1956年生まれ、現在65歳のデンマークの映画監督です。

決定的に好きになったのは池袋・新文芸坐のオールナイト上映でした。そこでは『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『メランコリア』が上映されたのですが、まるで地獄のような展開がてんこ盛りなのに何故か惹きつけられてしまう。特に最後に上映された『メランコリア』はスローモーションを多用し、この世のものとは思えない極上の映像美にすっかりやられてしまいました。


映像が美しいだけの監督ならごまんといます。ただラース・フォン・トリアーが他と違うのは「疑似鬱」体験に否応なく引きずり込まれてしまうことです。

その意味では最新作の『ハウス・ジャック・ビルド』は鬱というより残虐性に振り切ったつくりなためそこまで好きにはなれませんでした。

ラース・フォン・トリアーは「ヒトラーに共感する」といった趣旨の発言をしてしまい物議を醸してしまいました。どんな文脈であれ言ってはいけなかった一言だとは思いますが、それをもってしてもやはり偏愛する監督の一人であることには変わりありません。

ともあれ最新作があれば真っ先に駆けつけます。次は何を企んでいるのやら検討もつきません。

フランソワ・オゾン

ベスト3
①『スイミング・プール』
②『危険なプロット』
③『ぼくを葬る』

1967年生まれ、現在54歳のフランスの映画監督です。ゲイであることを公表しており、橋口亮輔同様同性愛を扱った作品が多いです。ただ橋口亮輔とは対照的にオゾンは制作ペースが恐ろしく早い!

2000年に『焼け石に水』で長編デビューして以来現在まで17本の監督作品を発表しています。1年に1本ペースで撮り続けていることになり、しかもその全てが軒並み高評価を得ています。

オゾン作品でみていないものはまだ結構あるのですが、最初に何気なく観て惹かれたのは『危険なプロット』でした。フィルモグラフィー的には地味な一作ではあるのですが、「何かおかしいぞ」という思いが観ていてありました。そして監督がゲイであるということを知ってこの違和感の正体がすっと分かりました。なるほどこれは「隠された同性愛」の物語であったのだとストンと納得しました。

フランソワ・オゾンは作品ごとに趣向を変えています。『危険なプロット』のように隠された同性愛をユーモアを交えつつ描いた作品もあれば、『スイミング・プール』のように同じく隠された同性愛を心理サスペンス的にシリアスに描いた作品もあり、はたまた『8人の女たち』のようなミュージカルサスペンスもあり、『17歳』のような王道青春ものもあり、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』のような社会派サスペンスもある。

これほど多彩な色を持ちつつ、観れば「あ、これはオゾン作品だね」と分かる作家性を持つ監督もいないのではないでしょうか?

オゾンの作家性とは何かと考えると、「コンパクトな作劇に裏テーマを設定した謎の残るストーリーテリング」ではないでしょうか。2時間を超えたのは今までで『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』のみで、それ以外は大体80から100分ほどと短い尺の中で淀みなく語る作劇がまず非常に上手い。そして表面上のストーリーとは別に裏テーマがあり、解釈の余地が残された魅力的なストーリーテリングをすることがオゾンの最大の美点だと思います。

制作ペースのはやいオゾン、まだまだ観られていない作品もあるのでそれらを観つつ、新作を楽しみにしたいと思います!

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