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「芸術祭」と「教育現場」の関係について(SACPの実践から①)

芸術祭の現場では、作家が作品をつくり発表するだけでなく、教育やその他の現場との連携のプログラムも数多く行われています。

「さいたま国際芸術祭2023」の市民プロジェクト「さいたまアーツセンタープロジェクト2023(SACP2023*)」では、「アウトリーチプログラム」として、市内5つの小学校と連携し、作家との制作の時間をつくっています。

その中で重要なのは、「作家の表現したい制作」と「現場のこどもたちの学びの関係」です。作家は教育のプロではないので、「こどもたちの学び」について、自らの活動がどうそれと結びつくのかはわかりません。逆に現場の先生たちは、「作家の表現したい制作」が、目の前の子供たちの学びにどう結びつけたらいいのかがわかりません。授業の中で行われる活動は、教育課程といって、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児童生徒の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画に基づいています。またその活動の評価も様々な観点で行われます。

その中で、双方の活動のめざすところを言語化し、プログラムをつくるコーディネートの仕事が必要になります。翻訳家とも言ってもいいかもしれません。その間の仕事がないまま、現場に「作家の表現したい制作」が持ち込まれると、現場の先生は、子どもたちへの学びはなんなのか?教育課程との結びつきが持てず、この時間は誰のために行われているのか?が腑に落ちず、「やらなきゃよかった。」が残ることになります。その結果は、作家にとっても現場の先生にとっても良いものが生まれず、アートには関わらない方がいい、利用されるだけだったというような残念な雰囲気が生まれてしまいます。

そうならない為に、現場の先生とのヒアリングを重ね、どのようなプログラムが現場に生きるのか、またプログラムの構成や実施の計画等を練る必要があります。SACPでは、このような教育現場との連携を行うのが初めての作家も含め、現場を双方に豊かなものにできるように努力しています。

作家と教育現場との連携による子どもたちの作品もぜひ楽しみにしていただけると幸いです。

□2023年度プログラム実施予定の学校と担当作家

・『別所沼の光を感じて描く』 担当:石上城行

 さいたま市立仲町小学校 4年生 (浦和区) 

・『彩るディスタンス』 担当:寿の色 

さいたま市立尾間木小学校 3年生(緑区) 

・『未来龍さいたま大空凧』 担当:遠藤一郎

 さいたま市立神田小学校 6年生(桜区) 

・『糸で編む-未来の種をつくるワークショップ』 担当:山本彌

 さいたま市立太田小学校 3年生(岩槻区)

・『影をつかまえる-小学校の記憶を写そう!-』担当:浅見俊哉

 さいたま市立東大成小学校(北区) 

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●「さいたまアーツセンタープロジェクト2023*」について

「あなたのライフスタイルにアートを。」をあいことばに、日常生活のなかで、誰でもアートに参加する習慣を生み出す「アーツセンター」を創造するプロジェクト。2019年から約120ものプログラムを実施してきた経験をいかし、創造性・リアル・対話のある場を大切にしながらワークショップ、レクチャーや展示を行う。「展覧会プログラム」は、建物が登録有形文化財に登録している料亭からアーティストが集うギャラリーまで市内8ヵ所で展開される。場所×アートとのマッチングにも注目。また、「ウィークデーアーツプログラム」では水曜・金曜・土曜に音楽やアートに触れられるプログラムを用意。8月より先行プロジェクトとしてプログラムを展開する。

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●さいたま国際芸術祭2023

2023.10/7-12/10

●SACP2023✳︎


⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター