半生最大の課題だったもの:習慣化


 毎日勉強するって不可能じゃないかと中学生の頃は思っていた。
 私の中学校は学力の上下差がかなり大きかったと思う。北海道一位を取ったことのあるような子が何人かいて、成績優秀レベルの人が学年全体100人中20人弱もいた。全く勉強ができない人も、授業をまともに受けれない人も、髪染めて怒られてる人もいた。おそらくベルカーブで。これが学力でなく、地域で集まる中学校ならではのものとして普通なのか?
 私の成績は、成績優秀の少し下あたりだと思う。成績が高い人を見ては、尊敬していた。いや、それ以上に毎日勉強していることを特に尊敬していた。私より成績が低い人でも、教科書やノートに大量に貼られた付箋から努力の跡が見えたり、ノートを復習に使うために綺麗に書いているのが見えたりすると、もはや怖かった。
 毎日勉強してる人と勉強の話題になると、私が決まって使っていた言葉がある。
 「偉い」

 テスト近いから問題集やらなきゃ。偉いね。
 ここの問題が分からなくて、昨日家でやったんだけど。偉いね。
 塾で毎日自習してるよ。偉いね。

 偉いはひどい言葉だと思う。あなたは普通とは違うんだねという意味と、自分の卑下と、嫉妬と。その時の気分以外で、自主的に勉強したことが一度もなかった。テスト前に勉強する意味が分からなかった。
 偉い人達に恐怖していた。どうやって勉強を習慣化したのか。親に言われて?塾の雰囲気に誘われた?自然にできるもの?
 考えているうちに中学校は終わった。受験の時ですら特に勉強はしていない。その時の気分と、周りの雰囲気以外で勉強したことはない。

 高専(5年制)に入って、数学の勉強をし始めた。そう、環境のせいだったんだ。寮に入れば全て変わる。そう思っていた。最初のテストまでは要するにすごく浮かれていた、おかげで勉強が続いた。数Aで100点、数Bは96点を取った。そこで満足して、気分も落ち着いて自然と勉強をやらなくなった。
 どこに逃げても勉強を習慣化した偉い人はいるもので、劣等感で苦しいままなのは変わらなかった。そのままずっと過ごしているうちに、成績は3年かけて下がり、習慣化の謎は解けないまま、19歳、4年生になった。普通の人で言えば大学一年ということになる。私の現在の歳である。

 本気で変えたいと思った。変な足掻きから、それは始まった。
 習慣化する手法をまずは検索した。まずは簡単にできるものから。少しずつ。そう言った内容のものしか無かった。このページで習慣化に成功した人が一体何人いるんだ?当然実行したけど続くことはなかった。7日目あたりから自然と脳の外に出て行き、帰ってくることはない。
 いままで度々人生の中で、習慣化の手法を見ては、これならいけると思い、その度に失敗した。また変わらなかった。今回はここでは終わらなかった。
 人生はある日突然爆発するもので、その場の気分だけで人生を大きく変えることができると考えていた。なにか人生を大きく変えそうなものに出会うたびに、そう思った。毎日の行動を記録するとか、ノートを持ち歩くとか、今の日常を全く変えなくても、これにプラスすることで変わるのだと、そう考えていた。
 埋まりきった日常の器に新たに要素を無理やり加えようとしていたことに気がついた。今までやろうとしたことはあまりに大きすぎて、ずっと溢れていたことに気がついた。

 いらないものを捨て始めた。新しいゲームを買うのを一切やめた。飯を選り好みするのをやめた。服もその度一番右にあるのを着る。寄り道しない。
 自分の以前の器で一番大きな要素だったのは新しいゲームを買うことだと思う。あとやったことはそこまで大きい要素ではない。ついでにいらないものを捨てただけ。
 そのあと、特に手法は考えずに、習慣化したいことをリスト化し、本気で欲しいものを選んだ。
 なぜか続いている。今も。

 半生の意味の一つに人間の一生の半分を指す、とある。人間の感覚で言えば18歳は半生に相当するらしい。生きれば生きるほど1日の価値は下がっていく。80歳の1日と1歳の1日は全く異なる時間を経験していることは想像しやすい。反比例(双曲線)になるので積分する(面積を求める)と人生の半分は大体18~20歳であるらしい。
 厳密さはともかく、この考え方がすごく好きだ。あまりに楽しく、苦しく、辛く、幸せで、生きてることを実感する19年が、人生の半分に相当することを知って安心したから。あとこれを死ぬまで4、5回ほども繰り返すなんて御免だ。

 人生はある日突然終わる。だけど学びは永遠に生きられると思って始めたい。
 例えば今日人生が終わるなら、最期は何かを学んでいたい。
 学び続けた意志を最期に残したいから。
 だから、今日も少しずつ学ぶ。あまりに僅かだけど、永遠に生きられるならいつかすごいところまで行けるかもしれないと想像して。

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