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新人ライターや編集者に教えている「文章の面白さは“小ネタ”に宿る」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。

今回は、久々に「新人ライターや編集者に教えている」編として、文章についての個人的な見解を述べようと思います。

ところで、「読ませる文章」とか「面白い文章」って、書きたいとは思っているけれど、漠然としすぎていてよくわからないですよね?

読み手が、なにに興味を持ってくれているのか? なにを面白いと感じてくれているのか? おそらくは勘に頼るしかないと……。

方法論として、最初はそれでいいと思います。

これが面白いのでは? こう書けば読んでもらえるのでは? そうやって試行錯誤しながら、自分なりの方法論を探すことが、おそらく正解なのではないかと思います。

書いた文章の反応を検証するには、やはり多くの人の目に触れることが大切です。世に出す前なら編集者や上司、周囲の人など、世に出した後なら読者の反応を自分で確認し、少しずつ自分の「面白い文章」を体系化していけばよいと思います。

で……ここまでが、一般的に広く通ずる方法論。
ここからは、個人的な「面白い文章とはなんぞや」的な見解です。

安直かもしれませんが、文章を木に例えてみます。

は、「文章のテーマ」でしょうか。こういうことを伝えたいというスタート地点。そこからどういう木(文章)を育てていくのか、が決まります。

文章の基礎となる起承転結の構成は、の部分。問題提起から結論までの「伝えたいこと」の骨格といえます。必要最低限、これができていれば「言いたいことは伝わる」と思います。

枝葉の部分は、「わかりやすくするための演出」といえるかもしれません。メッセージをしっかり伝えるため、ターゲットごとに表現を演出します。これで全体の輪郭がしっかり伝わり、「こういう木なのね」というのがわかります。新しい情報や、ターゲットに寄り添った表現などがあれば、この状態でも十分面白いと感じてもらえるのではないでしょうか。

つまり、ここまででも育て方次第で十分立派な木(文章)が育ちます。
なので、ここからは応用みたいなイメージでお読みください。

で、さらに木を育てていくと、花や実がついてきますが、これが多くの人が「面白い」とか「好き」という一歩進んだ感情を抱いてくれるヒントになります。

では、花や実ってなにかというと、「小ネタ(細部)」かな〜と。雑誌や書籍を長年やってきて感じること。それは、読者は「細かいところまで見ている」ということです。

おおむね伝えたいことの主旨を盛り込み、ターゲットに合わせたわかりやすい表現ができれば、ムダのない感じに仕上がるはず。

でも、意外にも読者は主旨から外れた「小ネタ」のほうが、メインの情報より強く反応することが多かったような気がします。

例えば、初心者向けのランニングの情報なら、走り方などのメソッドがメインの情報となりますが、そこに、「実は長時間走り続けるとシャツに乳首が擦れて痛くなるからニップレスが必要」のような「ちなみに」的小ネタを入れると、グッと面白さを感じてもらえるように。

ちなみに(笑)、かつて某雑誌の欄外に「はみだし」記事があったのですが、それに対する感想のハガキがたくさん編集部に届きました。「こんな細かい(しかも反応が熱い)ところまで読んでいるのか!」と驚いたものです。

メインの情報から外れてしまうので、効率よく伝える観点ではムダと感じられる小ネタですが、それを効果的に折り混ぜ、挟み込んでいくと、演出の厚みが出たり、個性が出たり、まさに「花や実がついた」感じになります。

時にはムダのある文章も

ムダのない文章は、論文とか教科書とか、ストレートに伝えるものには邪魔になりますが、読者を楽しませる目的がある文章であれば、適度に盛り込むのが、読み手に「余裕」を与えてくれるのかもしれません。

お笑いの定義でも、面白さは「緊張と緩和」といわれますが、文章もまさに同じ。ストレートに伝えるだけでなく、時に緊張をゆるめる「小ネタ」を挟むことが、内容にメリハリをつくることになり、その強弱が「面白さ」につながるのではないかと思います。

ちょっと今回は、小ネタが少ないかもしれませんが……。


文/編プロのケーハク

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