ゲイもの創作がメイン。

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マガジン

  • 大きく手入れのゆきとどいた公共の公園

    【短編小説】

  • 倒され、のこぎりで切られた木

    【詩】

  • 文学会の集まり

    【読書の記録】

  • 噴水で鳥に水をやる子供

    【散文】

  • 【連作短編】きみはグラチネ

    面倒臭いこじらせリーマン・鈴河涼来と、Mと自称しているわりには涼来先輩を抱く気満々の棉吹ケンタ。ちっとも胸キュンしない煩悩まみれ小説。ものすごく時間のある方は、どうぞ。

最近の記事

【詩】幢幢白白

雪は炎 なぜなら炎は 千切れゆくいのち その無限 雪は心臓 なぜなら心臓は 今よりあふれる 柔らかな衝撃 雪は花 なぜなら花は 目的地をもたない 旅のとちゅう 雪は声 なぜなら声は いく重にもかさなった 一つの景色 雪は毛布 なぜなら毛布は 忘却されゆく時間 そのやさしい匂い 雪は肌 なぜなら肌は もどってくる時のために のこしておく温もり 雪はあなた 雪を見つめるあなたの中に あなたが積もる 雪は明日も降り積もるでしょう となりであなたを見ている ぼくがいても

    • 【詩】インチキ ランチ

      給食はきらい にんじん きらいじゃないよ ブロッコリーとも 仲良くやれる 牛乳飲めるし おさかな平気  でも 給食 キライ 真っ直ぐな線路が好き ぼくは生まれたときすでに  三十歳だったのだろう、ね 給食たべ終わるの すごくきらい 風船はじけたみたいに  クラスメイトが 遊び出す 遊ぶの きらい 自由時間 きらい 「好きなことしていいよ」 好きなことって何? ぼくには無いよ 給食たべている間 とてもきらい モノを噛んでいると 聴こえてくる あのヒトとあのヒトの ののしりあう

      • 【詩】絶海の囚人

        目醒めれば 絶海の囚人であった 樹々はなく 草もなく 屋根もない 荒れた岩肌だけの孤島に 置き去りにされていた 見上げれば 微動だにしない太陽 夜は来ず 月もなく星もない 空と海とが 青々とした口を開く 灼熱のいがみ合いに 延々と眼を焼いた 千万年と続く青と青との争いに 放り込まれる刑罰なのか 両手で顔を覆い 岩肌に縮こまっても 目裏に押し付けられるのは 真青なる焼鏝 聞き覚えのない声が 番号を発し それが僕のことのようだと 目を開けば 絶海を背にして 真っ白なキャンバ

        • 【詩】方舟はもう戻らない

          そよご 冬青 風よんで そよご 赤い実 そよ吹かれ いい気になって おどったら おっちょこちょいが ころんと落ちた 沖には 方舟 もう見えない ぼくが乗るはずだった 舟 水平線で くるんとめくれ 地球の裏側 星の国 そよご 冬でも 青い葉が 消えた 赤い実 風に訊く 見えなくなった あの舟で ぼくを探している人 いるのかな 方舟に乗れなかった者 すぐに死が来るのでしょうか 来ないとおもう人 手をあげて そよごの葉陰 ふて寝をするのは ぼくとおんなじ  乗せてもらえなかった

        【詩】幢幢白白

        マガジン

        • 大きく手入れのゆきとどいた公共の公園
          8本
        • 倒され、のこぎりで切られた木
          33本
        • 文学会の集まり
          4本
        • 噴水で鳥に水をやる子供
          1本
        • 【連作短編】きみはグラチネ
          7本
        • 【短編小説】一星欠けた
          6本

        記事

          【詩】あしたの夜もここにきて

          小さなけもの達は  こおりの夜  さがしものをする とうのむかしに やんでしまった曲 星をすかした枝々は 凍ての夜 うごきだそうとする なくした楽器に ふれていた指づかい こんなにも こんなにも あふれだす 憎しみは 透明で 純粋で 北風の夜は 解析度があざやか すれちがう人々は すれちがうこころ こんなにも こんなにも 透明に純粋に 夜をおおう 貴方はなにに つかれていますか なくしたんだっけ? あのプリズム ぼくのたからもの かざした指のあいだから 虹がうまれ き

          【詩】あしたの夜もここにきて

          2023年によんだ小説

          ぼくはあまり、いま世の中で話題になっている本や 本好きではない人まで読んでいる、 いわゆるブーム本というものを読まない。 そういう本を安易に手にするのは あまり本を読んでいない人みたいで格好わるい、 と思ってしまう。 でも、そうやって無駄に格好つけてみるのが じつは格好わるいのだけど。 そんなこだわりはさておき、 作家が売れたいと思って書いた本ではなく、 好きで書いたという匂いのする本に むしろひかれる。 こっちの方が、本の中からその作家らしいものが 出てきそうで、わくわ

          2023年によんだ小説

          詩をかいて、気がついたこと

          詩を書いていると、 「あ、じぶんってこんなことにこだわっていたんだな」 と気づくものがある。 今回はそれについて、書いていこうと思う。 どうしてそんなことを書くのかというと、 今こだわっていると気づいた事柄は、今の僕についての話であって、 もしかすると将来の僕にとっては 何の関心もなくなるかもしれない事柄だからだ。 こまったことに僕は移り気なのだ。 そして忘れっぽい。 だから、じぶんの記録をのこすために書いておく。 【一人称】 ほとんどの詩で、一人称は「僕」か「ぼく」

          詩をかいて、気がついたこと

          【詩】鬣よりも 牙よりも

          弱いから 連れて来られた 大人しいから 閉じ込められた 鬣を持たず 牙はなく ナイフのような爪もないから 貧弱な檻を 与えられた 強いから 銃で撃たれた 野蛮だから 遠ざけられた 鬣を靡かせ 牙を磨き お前らを切り裂ける爪があるから 朝日のように 尊ばれた ぼくを切り裂いた肉を どうするんだい? 四肢を切断され 腹を裂かれ 臓腑を引き摺り出される 一刻一刻 ぼくの瞳は あなたを視ている 檻に閉じ込めたおれを どうするんだい? あいつの檻より頑丈な檻に閉じ込めて 熱風に黄

          【詩】鬣よりも 牙よりも

          【詩】ふたりは音楽

          鶺鴒の高らかな歌声は 銀色 咲きそめし花水木の梢より さし出される光の指 居ずまいをただして 四番目の指へとおさまる その啼き声のカンタータは 銀色のまばゆい指輪 風にめくれるページの音は 草色 初夏の午前 書に耽るきみの栗色の目が 夢のつづきを追うように 空の果てへと移ろえば ページの鍵盤が奏でるのは 草色のグリッサンド 煉瓦路の落葉を駆けゆく音は 深紅色 出会うより以前の日々を 記した二冊のノートブック ひと日会う度ひと日を破り 彩雲の空へとふり撒くぼくら 夕陽の炎の

          【詩】ふたりは音楽

          【詩】海に一色だけ残るとしたら

            Ⅰ おまえのことならよく知っている、あめふらし 海浜の浅瀬に生息し 時折はその海へ紫の雨をとりとめもなく 柔らかな筋肉の奥の一箇所に 祖先の貝殻を捨てきれずに宿し 泥塊さながらの姿で 岩砂の起伏を緩慢に越えゆく雨虎 あめふらしに生まれた不思議 シンデレラウミウシ/ガーベラウミウシ/シロウサギウミウシ 見目良くその名さえ麗しいウミウシに生まれなかった不思議 おのれの名さえ知らない不思議 宝玉のようなおまえの近縁者を羨むでもなく誹るでもなく 平然と海中を這い 必要とあらば煙

          【詩】海に一色だけ残るとしたら

          【詩】知っていることを書きつづけよう、知らないあなたのために

          ぼくが知っているのは 風化の流砂にさそわれた一対の喉仏 ぼくが知っているのは なにも開けられない鍵の冷ややかな稜線 ぼくが知っているのは 明日ここを立ち去っていく あなたという肉体の重量 あなたのそのか黒き先端は 今はもう あなたではなくなった或る男 過去にしか存在しない所作が  生きたいあなたを末端から蝕む壊疽となる すでに不要となったその男を あなたは 襤褸となった肌着できつく縛り  切り落とせと  ぼくに命じる ぼくが怯えるのは 肉体上の痛苦と醜悪 腐肉 血みどろ

          【詩】知っていることを書きつづけよう、知らないあなたのために

          【詩】海風へ、生まれる。

          抱卵の姿勢なら 燕 卵の上に水平にその身を置いて それは 抱くというより 水平線の水平を 文字通り卵上に保ち この季節は だから 燕は 一艘の船となる おのが卵の中にも 海が眠ると 海をわたった燕は 知っている 吊革の下が一時の アサイラム わたることが出来ない 空の為 地下鉄のトンネルの闇は 車窓をたよりない鏡にかえて 人ごみを歩くのが苦手なのに 人ごみを歩くのは得意そうな 顔 映し出さないのは 虚/実 どちら 身体の中を 光が 走り抜け 昔むかし 豊蘆原瑞穂国の葦の群

          【詩】海風へ、生まれる。

          【詩】A song for two boys

          わたしは泣いたことがない 呟く彼女 泣き虫だった少年は 泣き虫だったのに 自分のことを 言い当てられた気がした 確かに抽斗を開けると いちども火を着けたことのない ロウソクが一本あった その白さ 的に当たった矢羽根がゆれる (彼女のその後はまた別の物語) 濃い眉毛 短いまつ毛 きみを挿入している時に 左目尻へと触れてみる すきだな、この黶 への字に曲がった口が呟く 「キライなんだ、泣き黒子」 堅い毛髪を両の手のひらでつつみ ぼくはもっときみへと降りていく 「泣き虫だったから

          【詩】A song for two boys

          【短編】セルフプレジャー・ティータイム

          【連作短編】きみはグラチネ 第5話 登場人物のしょうかい。 🍭棉吹ケンタ  涼来先輩が好き好きなサラリーマン 🎐鈴河涼来   ケンタに好かれて、どんな気分よ?のサラリーマン —————————————————————————————————— アダルトビデオでしかせえへん体位ってありますよね? ふつうにセックスしとったら、まず除外するわなっつうヤツ。 なんて名前の体位か知らんけど、タチの男が仰向けにベッド寝そべっておっ立ったちんぽ手でグイって上向けて、その上にウケの男の

          【短編】セルフプレジャー・ティータイム

          【俳詩】アヲアラシ・初メテノ

               ✫ 俳句に詞書をそえました ✫ ――――――――――――――――――――――――――――――――――      青あらし情事始めに晒す腋 消えた手花火踏んづけて 裂かれた火薬に蘇生無理 昨夜のゴミはだれかの手紙 人目みたいにゴミだらけ 文字も書かずに爪先で 何をしたいかバレバレで ひょんな晴れ間に ハジメテみたい照れ笑い 経験ごとにハジメテ領域 なくなって 何をあげよう、何くれる? Tシャツ脱いで shower 浴びない流儀かい? (驚かないふり、ボクの流儀)

          【俳詩】アヲアラシ・初メテノ

          【詩】菖蒲咲く、黄色いハンマーとして

          水ぐるま 烈しく水に回されて 烈しく水を蹴り返す 夢中に蹴れば いつしか 宙にあくがれ 水上0センチメートルでも そこは空 菖蒲 黄色いのが咲いた朝 一輪だけ迷い出た 水の激しさ 岩々に 崩され尽くした彼方には 紫紺に群れる 天の河の形象 あの宙はかんけいないさ 一歩一歩 その予感を踏み固める どこまで行っても一人 この径は それなのに 明日 会う 壊せるものなら壊してみろよ 挑発は ぼくのシルエットばかりが 巨大に映る姿見 明日 会う 明日と会う カーブを曲がる気楽さ

          【詩】菖蒲咲く、黄色いハンマーとして