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映画小説

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未発表のシナリオを小説形式にした「映画小説」/第一弾は国際アイドル物語「セブンカラーズ・ストーリー」全5話/
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SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.5(終)

SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.5(終)

<ジャズバー>(夜) 

ステージでは、「サマータイム」の演奏が、続いている。

恭二のバイオリンと崇のサックスが、美しいだけでなく、人を惑わす、蠱惑的なハーモニーを奏で、それを、夏美のピアノが柔らかく、包むように束ねて、耳に優しく聴こえてくる。

テーブル席には、黒川、周平、夢乃が並んで立ち、その音楽に心を捕らえられてしまい、暫く何も考えられないでいた。

しかし周平は、ハッと我に帰り、ためらい

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SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.4/

SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.4/

赤い巨大なアメーバが激しく動いている。
それはまるで飲み込んだばかりの生き物がお腹の中で暴れているようだ。
しかし動きは大人しくなり、一つの巨大なかたまりとしてゆっくりと動き出す。

<夏美の家>

家の中を、ゆっくりと見て回る恭二。何もかもが、なつかしい。

夏美は、恭二の後ろについていき、彼の背中、足元などをじっと見つめる。本当に恭二だ。本物だ。それは疑いようが無い。でも、何故、いま・・・?

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SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.3/

SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.3/

前回までのあらすじ

クラシックピアニストであった純夏美だが、恋人のバイオリニスト井坂恭二を飛行機事故で失って10年後、ジャズバーでサックス奏者・坂西崇と演奏し、同棲していた。ある大雨の日、恭二が夏美の前に、10年前と変わらぬ姿で現れ、混乱のうち家に帰ると、排水口から逆流して来た赤いアメーバ状の生物に襲われて気絶した。が、青いアメーバが夏美を助けるように赤いアメーバを無力化して去った。死骸となった

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SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.2/

SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.2/

前回のあらすじ

純夏美は22歳のクラシックピアニスト、恋人は25歳のバイオリニスト井坂恭二。彼らのクインテットがザルツブルク音楽祭に招待されながら、夏美は腕を折る怪我をして行けなくなったが、飛行機が北極海で消息を断ち、10年後、32歳の夏美はジャズバーで、35歳のサキソフォン奏者・坂西崇と「サマータイム」を演奏していた。夏美は両親に先立たれた実家で、崇と同棲している。ある大雨の日、恭二が夏美の前

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SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.1

SF映画小説『Summer Time 雨に消えた男』Vol.1

< クラシックコンサートホール>

上品な照明に浮かび上がったステージの上で、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ピアノという編成の「ピアノ五重奏」ユニット、”マジカル・クインテット”が、一糸乱れず演奏している。

ピアノだけが少し奥の位置で、マリンブルーのロングドレスの女性・純夏美(すみなつみ・22)が弾いており、あとの4人はその手前で黒いスーツを着て、ボウイング=弓で弾いている。
男たち

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映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.5(終)アイドルよ、武道館じゃなくて世界を目指せ!

映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.5(終)アイドルよ、武道館じゃなくて世界を目指せ!

<鹿児島県民交流センター>

7人は一曲、歌い終わった!
嵐のような声援が、客席に沸き起こっている。声援はパワーをくれる。
紅潮したメンバー7人の表情は、まぶしい笑み。荒い息づかい。
汗の噴き出す笑顔を見て、更に声援を送る客席。パワーが倍加する。
表情がもっとまぶしくなる。輝いている。
客席と舞台が一体になって・・・
セブンカラーズは、ここに再スタートをきったのだ!!

<ごみ収集場・朝>

捨て

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映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』 Vol.4/嵐の予感S.C.1thステージはどうなる?

映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』 Vol.4/嵐の予感S.C.1thステージはどうなる?

< ステージ衣装専門店・カゴシマバード><衣装合わせ部屋>

派手な衣装が、たくさんハンガーに掛けられてカラフルだ。
そんな雑多なところに、セブンカラーズメンバー⇨彩華・絵莉花・あかり・星星・ジョナ・那智・イザベルの7人が集まっている。

小鳥の巣のような帽子を被った小鳥遊(たかなし)芽衣子(58)が、スケッチブックを片手に持って説明している。スーツ姿の西郷も側にいる。

ハイテンションな小鳥遊「

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映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.3/新生アイドルグループ誕生@鹿児島City

映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.3/新生アイドルグループ誕生@鹿児島City

前回までのあらすじ

ASGを卒業して2年後、大久保彩華(22)が地元の鹿児島でアイドルグループ「セブンカラーズ」結成を呼びかけ、自分の家でキーボードを弾くと、JAに働く神木あかり(23)、ヘアメイクアーチストの森永絵莉花(23) 、沖縄出身ダンサーの姿那智(20)、フィリピンの歌手兼リモート英語教師イザベル・ガルシア(23)らが、時空を越えて、それに答えるように自分の心を歌った。中国からの留学生

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映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.2/アイドルG@鹿児島 7人のBeauty



前回のあらすじ

大久保彩華(22)は国民的アイドルグループASGを2年前に卒業、地元の鹿児島に帰ってFMラジオで「セブンカラーズ」結成をアナウンスすると、鹿児島大学では、中国からの留学生・李星星(19)、韓国からのパク・ジョナ(19 )が反応した。JAに働く神木あかり(23)、ヘアメイクアーチストの森永絵莉花(23) 、沖縄出身ダンサーの姿那智(20)、フィリピンの歌手兼リモート英語教師イザ

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Musical映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.1/彩華、アイドルG結成をラジオで呼びかけ

Musical映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.1/彩華、アイドルG結成をラジオで呼びかけ

虹を感じる デザイン きらめく背景に 白く 光る 文字
<Seven Colores Story>
が、ワイプでスーッと現れると・・・
宇宙から見た、アジアと日本の衛星写真だ。
微妙に横移動しつつ、静かにズームインしている。
青い海が瑞々しく、陸地は深い緑。
ところどころ 白く薄い雲が渦を巻き 流れて見える。
「北京」 「ソウル」 「東京」 「マニラ」 「鹿児島」
とタイトルが浮かび
カメラアイは

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