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【書評】税所篤快さん著『未来の学校のつくりかた』を読んだ話

「これからの教育はどうしていくべきか?」という問いは、教育業界に携わる人間として常に意識している問いです。特に、このコロナ禍ではその問いがより一般的かつ緊急的なものとして扱われているのは、皆さんご存知のことかと思います。今、私たちの目の前には、例えば「9月入学にするのか?」「ICTをどう活用していくのか?」といった論点が山積みで、これらに対して社会一丸となって取り組んでいく必要があります。

そんな中で、この本『未来の学校のつくりかた: 5つの教育現場を訪ねて、僕が考えたこと』は、「これからの教育はどうなっていくのか?」という問いに対する答えを導くための方法を教えてくれています。

著者の「アツ」こと税所篤快(さいしょ・あつよし)さんは、バングラデシュ版ドラゴン桜とも言われるe-educationの創業者。まさに最初に挙げた問い「これからの教育はどうしていくべきか?」に向き合い続け、途上国でのインパクトを生み出してきた人です。私からすると、もう同じ業界の同世代のキラキラスター!この本は、そんなアツによって日本における「未来の学校」たちとじっくりと向き合い、書き上げられたものです。

あ、さっき、「答えを導くための方法」なんて言いましたが、実はそんな誰にでもできるノウハウがここに全て書いてあるわけではありません(笑)ただ、その答えは明確にある、と本を読んでて感じました。それはいったい何でしょうか?

アツが実際に足を運び目にして耳にした5つの事例には共通点がありました。どれもこれもそこに関わる人達がまっすぐだということ。もう、それは眩しすぎるほどに。どうしたらこんなにまっすぐになれるんだ!?と憧れてしまうくらい。例えば、大空小学校の木村先生は「みんなで新しい学校を、いい学校をつくりましょう! !」と第一声で住民を巻き込み、文字通り「みんなの学校」を創り上げた。とにかく他の事例で出てくる先生や行政の方々も、本当に思いに忠実で、まっすぐな人たちばかり。とにかく「子どもにとって最高の教育の場を提供したい」という思いが共通しています。これこそが、先述の問いへの「答え」なのではないでしょうか。そして、まさにこのコロナ禍の中で、教育に関わる人々全員に求められている姿勢でもあると思います。文科省が学校の情報環境整備に関する説明会において批判覚悟で強いメッセージを発していましたが、色々理由をつけてICTを導入しないような公立校は、もう取り残されるだけではなく、「思い」すら失ってしまっているかもしれません。よっぽどこの文科省の担当官の方のほうが思いが溢れているように感じました。

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↑学校の情報環境整備に関する説明会YouTubeより

今、私はHLABという組織で、Residential Collegeという未来の学校づくりに取り組んでいます。この本のおかげで、様々な制約条件がある中でも決して自分の中にある「思い」を忘れてはいけない、全ては子どもにとって最高の教育の場を創り上げるためなんだ、という決心を新たにすることができました。まっすぐでいることを諦めはしない。

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実は、この「まっすぐさ」と「思い」は本の中の登場人物だけでなく、著者のアツからも本を通じてガンガン伝わってきます。それだけ熱がこもった本です。そんな思いを込めて書かれた『未来の学校のつくりかた』、教育に関わる皆さんはもちろん、そうでない皆さんにもぜひ手にとっていただきたい本です。2020年6月1日発売。




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