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「くじけないで」 柴田トヨ


「さあ 新しいカップでコーヒーのみましょう」



「くじけないで」 柴田トヨ



貯金

私ね 人から
やさしさを貰ったら
心に貯金をしておくの
さびしくなった時は
それを引き出して
元気になる
あなたも 今から
積んでおきなさい
年金より
いいわよ


柴田トヨさんの詩を読んで、たくさんの
やさしさをいただきました。


心の貯金はもういっぱいです。


さびしくなったら、この詩集を読んで、
貯金を少しずつ使い、心をあったかく
満たしていきます。


この詩集は、心の内側からじわじわ
あたためられて、胸がふるえます。


気持ちいい風が空虚な心に
吹いてきて、ひだまりの
中にいるようなあったかさを
感じます。


そして


トヨさんの視点で、日常を切り取って
いますので、セピア色に焼き上げた
写真のように懐かしく、やさしい
気持ちになり、芯から癒されました。


序文には


この詩集は、もうすぐ百歳になろうと
している栃木県在住の柴田トヨさんの
処女作品集です。
と紹介されています。


驚いたのは、トヨさんは90歳を
過ぎてから詩を作りはじめたのですね。


トヨさんのお母様のこと、
息子さんのこと・・・
自分のこと、社会のこと、
思い出・・・


すべて素敵な作品なのですが、
心に焼き付いた作品を紹介させて
いただきますね。

自分に

ぽたぽたと
蛇口から落ちる涙は
止まらない
どんなに辛く
悲しいことがあっても
いつまで
くよくよしていては
だめ

思いきり
蛇口をひねって
一気に涙を
流してしまうの

さあ 新しいカップで
コーヒーのみましょう
肩叩き券

埃にまみれた
がまぐちの中から
出てきた物

父ちゃん 母ちゃんへ
15分肩たたき券
(31年12月まで使えるよ) 健一

当時 小学生だった倅が
わら半紙を小さく切って
作ってくれた券の束
今でも
使えるかしら
秘密

私ね 死にたいって
思ったことが
何度もあったの

でも 詩を作り始めて
多くの人に励まされ
今はもう
泣きごとは言わない

九十八歳でも
恋はするのよ
夢だってみるの
雲にだって乗りたいわ



縁側でおばあちゃんが囁きかけてくる
ような、やさしい作品たち。

ぜひ、あなたも近くで感じてみませんか。





【出典】

「くじけないで」 柴田トヨ   飛鳥新社


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。