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逃げ恥 新春SPで注目!?ブルックスの法則とは。 デザイナーのためのPM豆知識

こんにちは!
アートディレクター・デザイナーのシクです!🦉

2021年1月2日にTBS系列で放送された『逃げるは恥だが役に立つ』新春スペシャル

主人公の“平匡”こと星野源さんのシステム系の仕事は、デザイナーの働き方と似ている点が多く、このドラマを観ているデザイナーは僕の周りでも多いんだよね。

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今回の新春スペシャルで、プロジェクトリーダーを務める“灰原慎之介” こと青木崇高さんと部下の“平匡”が仕事を進める中で「ブルックスの法則」という言葉が出てきた。

これはプロジェクトマネジメントをする上でよく知られた法則で、プロジェクト形式で仕事を進めることが多いデザイナーは豆知識として知っておくと良い法則。

今日はこの「ブルックスの法則」を簡単明快に解説するよ!

それではスタート!!🦉


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ブルックスの法則とは

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ブルックスの法則(Brooks's law)とは、

「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせる」

というプロジェクトマネジメントに関する法則。

アメリカのソフトウェア技術者Frederick P. Brooks(フレデリック・ブルックス)が、1975年に「人月の神話」という著書を通じて提唱したとされている。

このブルックスの法則の根拠は何か?
著書によると3つの根拠がある。それぞれ解説していこう。

余談だけど、
Frederick P. Brooksさんは、IBMの System/360 とそのオペレーティングシステムである OS/360 の開発者として有名らしい。
そういうのに疎い僕にはなんのことだか分からないが...。


根拠1:生産性の問題

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この法則を成り立たせる1つ目の根拠は、

「新たに投入された開発者が生産性の向上に貢献するまでには、時間がかかる。」

ということ。

単発ではなく、わざわざ「プロジェクト」として仕事を進めるということはそれだけ複雑な作業であることを意味する。
途中で新たにプロジェクトに参加した人は、仕事に取りかかる前にまずは開発の現状や設計の詳細などを理解しなければならない。

つまり、新たに人員を追加するには、その人員を教育するためのリソースを割かなければならないということだ。

したがって、人員の増加がチームの生産性に与える効果は、短期的にはマイナスになる。
また、プロジェクトに慣れない間はミスを犯しやすいので、プロジェクトがさらに遅れる可能性もある。


根拠2:コミュニケーションの問題

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2つ目の根拠は、

人員の投下は、チーム内のコミュニケーションコストを増大させる。

ということ。

プロジェクトを進めるうえで、チームのメンバーは協力して同じ課題に取り組む必要がある。
その為に、日々のコミュニケーションを通じて共通認識をすり合わせるための調整コストをかけている。
しかし、途中参加要員はこれをゼロから理解していかねばならない。このコストが負担になり、プロジェクトは短期的に遅れる可能性があるということだ。

計算上メンバーを2倍に増やすと、4倍のコミュニケーションコストを負担しなければならない。


根拠3:タスクの分解の問題

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3つ目の根拠は、

タスクの分解可能性には限界がある。

ということ。

100室あるホテルの各部屋の清掃であれば、タスクの分解可能性は高く、人員を増やせば一人当たりが担当する部屋数は減るので清掃タスク全体の所要時間は短くなる。

しかし、必ずしも複数人で分担できない分解可能性の低いタスクもある。
著書にはこう書かれている。
1人の妊婦が9か月で赤ちゃんを出産できても、9人の妊婦が1ヶ月で赤ちゃんを出産することはできないのである。と。

遅れているプロジェクトに要員を追加したとしても、全ての仕事が前者のような分解可能性の高い仕事ではないのだ。


解決策はあるの?

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以上の3つの根拠をもって、「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせる」というブルックスの法則は成り立っている。

プロジェクトリーダーを経験したことがあるなら分かると思うが、ブロジェクト形式の仕事が予定通りに進んでいないと、プロジェクトチームの内外問わず、「人員を追加すれば?? 〇〇さんとか空いてるよ!」なんてことを言ってくる人は必ずいる。
善意でのアドバイスなのは承知だが、「そんな簡単なことだったらさっさとそうしてるよ!」というのが心の声ではないだろうか。

ではプロジェクトが遅れているときに、どのように解決するのが良いのだろう。
著書ではこう述べられている。

プロジェクト全体を小規模のグループが担当できるサイズに分け、より上位のチームがシステムの統合を引き受ける必要がある。

つまり、一つのプロジェクトチームを分割し、統括部門といくつかの作業部門とする。
作業を適切に分割することで、どの作業が遅れているのかより正確に把握ができるようになり、それを統括部門が管理するというロジックだ。

例えて言うなら、車を作るときに、チームみんなが一斉に車を作るのではなく、統括部門、エンジン担当部門、ミッション担当部門、タイヤ担当部門のように担当人員を分割させているイメージ。


解決策は100点ではない。リスクも考えよう

この解決策にも問題点はある。
著書にはこう続いている。

プロジェクトを適切に分割できなければ、チームの間の意思疎通コストが増えるので、プロジェクトがさらに大きくなってしまう可能性がある。

先の例で例えるなら、誤ってタイヤ担当部門を「前輪担当部門」「後輪担当部門」に分けてしまったとしよう。
そうすると、前輪と後輪で多少サイズに違いがあったとしても、タイヤ自体の設計は9割同じものだから、前輪担当と後輪担当の部門間で頻繁にコミュニケーションを取り、設計の整合生を揃えないといけない。
「タイヤ担当部門」として前輪と後輪を一緒に開発した方が効率が良いのに、プロジェクトリーダーが誤ったチーム分けをしてしまったせいで非効率が起きてしまうという訳だ。

プロジェクトマネジメントを学んだことがある人なら「リスク管理」スキルの重要性は知っているだろう。

100点満点の解決策もなければ、100点満点の進め方もない。

とにかく「絶対」という言葉はあり得ないと考え、あらゆるリスクを想定することが大切になる。

と言うわけで、著書ではブルックスさん自身が解決策として提示した方法にブルックスさん自身がリスクを呼びかけている体裁だ。
この振る舞いは正真正銘のプロジェクトマネージャーだ。


シクさん的視点:これはあくまで短期的なリスク提起だ!

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ブルックスの法則の3つの根拠を理解すれば薄々気づいていると思うけど、これはあくまで短期的なプロジェクトに対するリスク提起だと僕は考えている。

根拠1:「新たに投入された開発者が生産性の向上に貢献するまでには、時間がかかる。」
根拠2:人員の投下は、チーム内のコミュニケーションコストを増大させる。

特にこの2つの根拠については、時間さえあればリスクは少ない。

つまり、

・プロジェクト全体期間:2年
・案件:大規模サイトリニューアル

というようなプロジェクトだった場合、

「プロジェクトの納期が残り1週間なのに、予定より進みが悪い!どうしよう!!」

こんな短期的な危機に対しては、ブルックスの法則が当てはまるので単純に人員を追加したって解決はしないし、むしろさらに遅れる可能性もある。

しかし、

「プロジェクトの納期まで残り1年を切ったが、予定より進みが悪い!ペースアップしないと。」

という場合には、人員追加によって最初こそ一時的に生産性が落ちるかもしれないが、3~6ヶ月もすれば途中参加要員でも十分な戦力として成り立っているだろうから、途中の一時的な生産性のロスを巻き返し、最終的な納期遅延は防げるかもしれない。

このように、ブルックスの法則は自身のプロジェクトの残りの期間や作業内容を熟考した上で、人員の追加可否を判断しよう。


人月の神話の「人月」って?

最後に余談を。
冒頭で紹介した通り、ブルックスの法則はアメリカのソフトウェア技術者Frederick P. Brooks(フレデリック・ブルックス)が、1975年に「人月の神話」という著書を通じて提唱したとされている。

この「人月の神話」というタイトルの『人月(にんげつ)』とは何か。

仕事の現場でこんな会話を聞いたことがないだろうか。

営業:「デザイナーさん、お客さんに見積もりを送りたいのですが、このデザイン案件どのくらいかかりますか?」
デザ:「う〜ん、このボリュームだと2人月くらいかな。」

「人月」というのは、開発や作業規模を表すときに用いられる単位。
上記の例では「このボリュームだと2人月くらい」と言っているので、「この案件を1人で担当したら2ヶ月くらいかかる」と言い換えることができる。

つまり、この本のタイトルは、

「人月という単位なんて神話さ!」
=「人を増やせばいいってわけじゃないぞ!」
=【「人月」という単位の不確かさ】

を提起しているということ。


---🦉---


という感じで今日はおしまい!
ハッピーデザイニング🦉

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