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ジングル ベル

ここは、モノカキサンタが集う、クリスマスプレゼント製造工場。
イブまで1か月をきった今、サンタたちは大忙しでプレゼントの準備にあたっています。

それぞれ、いったい何を送ろうというのでしょうか?

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あとすこしでクリスマス。
冬の一夜、街の明かりを包む空気がどんなに凍てついても、部屋の中では子どもたちがサンタを待っていると想うだけで、クリスマス・イブは暖かく特別な夜になる。

僕たち "モノカキ空想のおと" の面々も、モノカキサンタとしてクリスマスの準備を始めていた。

でもまだ、誰が何を届けようとしているのかまったく知らないのだ。
それぞれの部屋からゴトゴト、ごそごそ、プレゼントを準備する音が聞こえる。

自分の届けるものはもう決まっている。
正確に言うと「もの」ではない。
ここで何を届けるか明らかにするかわりに、自分が子供の頃に経験した出来事を話そうと思う。

多くの子どもにとってクリスマス・イブの夜が特別であるように、
僕もワクワクしながら布団へ入った。
プレゼントが楽しみなほかに、その年はもう一つ、決意があった。
「サンタさんを見る。眠らないでずっと起きてる」

冬の寒さとはうってかわり、布団の中はぬくぬくと暖かい。
いったい何度まどろんだろう、まぶたがくっつくたび「まだだぞ! いまのはただのまばたき!」
と自らを鼓舞し続ける。

そして、どれくらい時間が経ったか。
あれほど決意したのに、幼き自分は眠りへと落ちてしまっていた。

だが、サンタさんを見届けるという決意は忘れていなかったのだ。
だから深夜、わずかな物音に目を覚ますと、意識はすぐサンタさんを探し始めていた。

《 シャン、シャリリリン…… シャン、シャリリリン…… 》
クリスマスの鈴の音が、ハッキリと聴こえた。

あっ、サンタさんだ!
必死に目を開けようとするが、まぶたは重く動かない。
まぶたをすぐ動かしたい、いや動かない、と押し問答を続けているうちに、
またすぅーっと眠りの世界が呼びに来た。
ぱっちりと目を開けられたのは、明るい日差しの降りそそぐ朝になってからだった。

あれは果たして夢か、現か。
思うのだけど、クリスマス・イブに鈴の音を残していったサンタを空想できること、サンタクロースという存在について想像できることが、もうそれだけで素敵なプレゼントだったと思う。

クリスマスの夜、眠りながらふと鈴の音を聴いたような気がしたら、
それはきっとサンタクロース。


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イラストは小山さとりさんれとろさんの作です。



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