見出し画像

CHIMERA ~嵌合体~ 第二章/第三話 『転』        



診療情報提供紹介書

記入日

○○○○年 〇月 〇日

紹介先保険医療機関

医療機関名
  ○○病院 皮膚・内科  〇〇先生

患者情報
  ○○ ○○   
様    性別  男

傷病名
   発疹(水疱)~痂皮。各角膜、結膜部にもあり。

症状
  
発疹(++)発熱(+)頭痛 リンパ節の腫れ(++)筋肉痛など
  神経症状(-)

応急処置の内容
  ゲンタマイシン軟膏を各部位へ添付。内服抗生物質。

紹介目的・その他
 いつもお世話になります。この度は上記患者様につきご紹介させて頂きます。
 皮膚患部への直診治療だけでなく何らかの感染、内部からの発疹の可能性が高いと思われる為、ご多忙の中申し訳ございませんが何卒、御高診のほどよろしくお願いいたします。

紹介元施術所情報
 ○○医院 皮膚科 ○○
所在地ーーーーーーー電話番号ーーーーーーーメールーーーーーーー




施術情報紹介書

記入日

○○○○年 〇月 〇日

紹介先保険医療機関

医療機関名
  ○○病院 感染症内科医  〇〇先生

患者情報
  ○○ ○○   
様    性別  男

傷病名
   流行り風邪やインフルエンザといった一般的感染ではない模様。

症状
  
発疹(+)発熱(++)頭痛 リンパ節の腫れ(++)筋肉痛(+)
  神経症状(-)

応急処置の内容
  内服抗生物質。解熱鎮痛薬。痛み止め(ロキソニン等)

紹介目的・その他
 この度はお忙しい中、上記患者様につきご紹介させて頂きます。
 各症状を見るに一般的な感染症状ではないと疑いがあり。
 痘瘡とうそうの症状にも似ていて、それに付随、類似した何かではないかと懸念なため、何卒御高診のほどよろしくお願い致します。

紹介元施術所情報
 ○○医院 一般内科 ○○
所在地ーーーーーーー電話番号ーーーーーーーメールーーーーーーー





110番通報 音声記録データ


プルルルルル・・・プルルルルル・・・ガチャ
「はい、こちらは警察110通報です。事件ですか?事故ですか?」

「ああ!えっと・・・あの!何かが居るんです!誰かきて!!」

「どうしました?落ち着いて下さい。侵入者ですか?」

「あの・・・変な生き物が家の中にいるの!とにかくきてぇ!!」

「ご自宅にですか?ご住所を教えて下さい」

「はい、○○県○○市・・・・・・」

「ただいま派遣致します。誰かケガ人はいませんか?」

「大丈夫だと思い・・・まって、息子が!!!」

「もしもし?もしもし?」
 一定時間、走る音や通報者の息切れの呼吸音、何かが暴れているような衝撃音が聞こえる。

「大丈夫ですか?もしもし?」
 警察側のオペレーターが何度も声をかけるが応答はない。

「・・・あなた!あっち!」
 電話の向こう側の、少し遠くで通報者本人と思われる女性の声で叫んでいる。そしてまた、先ほどより近場で衝撃音。

・・・バタバタバタ・・・ドンドンッ・・・ドタンッ

「もしもし!大丈夫ですか!もしもし?!」

「・・・もしもし、早く!」

「侵入者でしたら抵抗などせずに、できるだけ逃げるようにしてください!5分程度で警察のものが到着しますので・・・・・・」

「なんか・・・おっきいモモンガかムササビみたいな・・・・・・」

「野生動物ですか?害獣ということですね?」

「・・・ああ!あなた!!」
ツー・・・ツー・・・ツー・・・・・・




行政医療法人 国立軍事病院機構(NHO)

各担当者様宛


 いつもお世話になります。
 この度は、国家規模での重要案件だという現状にて各医院を代表し、添付資料と共に筆を執らせて頂いた次第です。

 私は○○総合医療センターの院長 大久保と申します。

 今月、八月に入り多くの患者が同じ症状にて当院でも入院をしております。その症状は全身、特に粘膜系統に多く発疹が見られ、それはまるで『天然痘』のように最初は感じられました。しかし、確認を致しました所『天然痘』ではなくエムポックスサル痘に近いのですが、致死率や毒性は天然痘に近く、約30%~50%の割合でウイルス血症にて全身に様々な合併症を起こします。

 いまのところの措置としまして、血液透析にて殺菌と毒素を取り除くと一時的に回復はするものの、血液”だけ”をろ過しても皮下や臓器にまで浸食しているこのウイルスは数時間でまた全身に増殖します。
 他では免疫グロブリンを投与し抗生薬などを併用して症状を軽減できたという他院での報告もございますが、どれも現状『延命』にしかなっておりません。

 このウイルスは新型であり、近いDNA構造は上記にも記したエムポックスサル痘に近く、接触感染及び経口感染にて拡大します。
 基本、遺伝子構造はサル痘ではありますが部分的に不自然な点がいくつかあります。これも先ほど延べさせて頂きましたが毒性やヒト体内での繁殖力は天然痘のそれに当てはまり、その他では人為的操作をしている点もいくつか見受けられます。何かそのような政策、意図がございましたらまたご報告頂ければ幸いです。

 攻撃性の部分は天然痘に付随している可能性があるとしまして、発生経路、感染元はサル痘と同じネズミ等のげっ歯類かと思われます。
 この感染の拡大の発生地「グランド・ゼロ」は当院が所在している○○県である可能性が高い状態です。○○県に生息しているネズミ、猫、イタチなどの検体もお送りいたしますので是非DNA解析をお願いしたします。

 WHOもしくはソ連、アメリカのどちらかの天然痘保存国へも進言頂き、天然痘との正式な分析と、万が一ですが、その保存状態等の確認もお願いしたい。天然痘がなんらかの原因にて流出、もしくは中央アジア、インドにて健在なサル痘、そのどちらかの『突然変異』もしくは人為的遺伝子操作=バイオテロであることが懸念され、場合によっては国際問題、及びパンデミックも引き起こす場合は世界保健機関WHO案件へと発展しかねません。

 このウイルスがどこから発展したか、原因を突き止めておかなければ責任を世界から問われることになり得ます。

 当院も全面的にご協力致しますので、ご回答とご指示の程、何卒よろしくお願い致します。




分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌


◉REC

急な依頼が殺到してきて手が回らないわ。先ずはもっと人手を要求します。
当面は日記記録や報告書も作業効率のために割愛させてもらう。作業しながらの同時進行にてこの動画で報告とさせてください。

上からのこの追加案件まで、ずっとカブラや残された検体や細胞からの研究の分析をしていたのだけど、それらは全て中止状態。そこを理解した状態でこの追加指示書の内容を私はとりあえず把握していきますよ。そこのところもよろしくね。

ええ・・・っと

『サル痘及び天然痘に類似したウイルスが外部で多発・・・・・・』

現地住民の一名が実験体Bの分裂体(単為生殖した個体)に襲われ瀕死状態から復活、しかしその後、上記ウイルスに感染・・・・・・

ちょっと、アルビーとオリバー以外はせん滅したはずじゃないの!?

・・・で、えー、実験体のB分裂体は回収分以外の可能性として、地下の下水から外部へ逃走したと思われる・・・あー、身を挺して心中したあの兵隊さん・・・こいつだけ生きてしまっていたのね・・・・・・

発見した町では地元警察と害獣駆除業者、ハンターたちが総出で捜索し駆除が完了。その間の被害者は現状6名。研究所職員たちと同様の被害だと思われる。実験体の回収は数日で送られる予定。

・・・VIRUSウイルス、か・・・・・・
私が一番心配していた展開になっちゃったわね。

突然変異体であろうが、人工的な単独種だろうが、生命というのは複数の種で維持される。いい例が現に”性別”という二つの同種。
YとXと、同種ではあるが異なる染色体を持った二つの個体があり、それぞれの『人生』を送りその過程での環境に適しその情報を遺伝する。そのかけ合わせこそが進化であり淘汰でもある。

ウイルスであれ細菌であれ、それらの”免疫”を相互の持ち合わせて進化・・・いや、環境に順応していき時には退化していく必要がある。
もしなんらかの生物がこれで完璧、完全体だと断定したならば、何らかの変異により現れる『天敵』の存在ですぐに絶滅する運命になってしまう。
その天敵がウイルスだとすると、ウイルス自体にも繁殖が最大の目的であり『宿主』は選ばなければならない・・・ウイルスの特徴として、繁殖が全てだと言っても過言ではない。なのである程度の宿主が安定化すると宿主を殺してしまうほどの毒素は自分にとっても不利になり、狂暴性=致死率が低下し弱毒化するものなの。

しかし、その『仮宿』が単独の生物だとすれば、その繁殖方法を変えざるを得なくなる。毒素を多くして自分達で外部に浸食しにいくための保菌期間を定め、宿主を少しだけ延命した状態で活動をさせて、その最後は爆発的に猛威を振るい外部へと移行するようになる。

その状態でキメラ化した実験体がなんらかのウイルスの保菌者、並びに仲介者となればどのキメラ細胞、遺伝子がその反応をしたのか等がそもそも分からない・・・多様性をもたせた遺伝子ならば、それに順応したのかもしれない。

ヒューマンジーの初期実験段階からヒトの遺伝子は組み込まれているために、宿主が実験体からヒトへ変わるのにそんなに時間は要しない。多くの遺伝子を組み込んだ分、他の生物との互換性も上がっている。このキメラ生物実験体はウイルスにとっても優秀な仲介者となりえるのだ・・・・・・

例えば鳥インフルエンザなどのようにヒトには直接に感染しないのだが、鳥類の遺伝子を組み込んだ実験体を経由すると適応、そして変異してヒト感染を容易にするだろう。それは他の生物にも当てはまり、どこのどんな菌やウイルスを貰い、どこのだれに渡すのかは実験体の支配的な遺伝子情報によって変わってくるのだが・・・これらは全て推測の範囲を出ない。そこまで人類は遺伝子を解明できていないのだから。

ジャンク遺伝子というのがまだまだある。そこの中にこれらを決定付けていく情報もあるだろうが、そこまでの解明に人類が費用をかけていないのが現実だ。つまり、解明をしても”金儲けにならない”ってことよね。

ああ、ごめんなさい、話が脱線したわね・・・・・・

まぁ要するに、複雑化させた実験体の遺伝子に入ったウイルスたちも複雑化しちゃうよね、って話ね。

ここを懸念して警戒レベルをKeterケテルにしなきゃだめなの。わかる?
まぁ、まだ決まった話ではないけどね。

さて、その私の推理の証明をしていく作業を開始するわけだけど。
先ずは感染して死亡した経緯と、実験体の足取りね・・・・・・
実験体が捕まったエリア、実験体に接触した被害者にこのウイルスに感染しているかどうか。から始めますか・・・・・・



○○○○年
 〇月 〇日

研究データ詳細

記述者 近藤 紀子

実験体B´被害者A~C

 三名の被害者から様々な部位の検体を調査した。

・B´と接触した部分(口腔内から鼻腔、眼窩)
・※シスト(筋組織)と、※オーシストへの影響確認の有無。胃の内容物調査
・骨髄や内臓の各組織

※シスト(嚢子(のうし))休眠状態のサナギのような形態。筋組織などに潜伏している。
オーシストという卵のような形態で動物の体内に運ばれた後、栄養型に変化して活動を開始しまたシスト化する。

※オーシスト(接合子嚢(せつごうしのう))は糞便中に卵のような状態で潜伏し、便と共に排出される。その環境下や次の媒体内で数日間かけて成熟し感染可能なオーシストとして数ヶ月以上生存している。最終的に寄生して有性生殖し子孫を増やすことができること。

 結果、この三人からは例のウイルスの摘出は見られなかった

 だが、トキソプラズマに似た原虫を摘出、発見をする。胃の内部と口腔内から恐らく実験体B´の分泌したものによりオーシスト状態の原虫とその卵が数個見つかった。これらのDNA解析も同時に進めている。研究所での実験体B´群の被害者職員の焼却処分、及び遺族への変換がまだな”ご遺体”があれば提出願いたい。研究所内部と外部との差が歴然に調査ができる。

 被害者が窒息死してしまうことから、この感染からどのような経緯を辿るのかが現状不明。被害者D(襲われたが一命を取りとめた)の体組織を調べる必要がある。こちらも提出を急を要したい。

 例の『サル痘キメラウイルス』とこの原虫との接点があるかどうかも様々な被検体にて検証しないと断定はできない。現状、まだ推測にすぎないが、この原虫がキメラウイルスの『二次中継』しているかもしれない。そしてその媒体がサル痘との関連があればげっ歯類のどれかが媒体宿主と断定できる見込みである。



分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌②


◉REC

この原虫・・・そうね、仮で名付けるなら
『マイクロキメプラズマ』
は、トキソプラズマとの遺伝子差は99%が一致している。経緯はまだ分からないが下水で接触したトキソプラズマ保菌者であるげっ歯類を捕食した上位肉食獣へか、もしくは実験体B´が捕食した保菌げっ歯類のオーシストから実験体の体内でシストした経緯で変異した可能性は高い。恐らく後者だと思われるが、実験体本体の到着を待つしかない。

・・・・・・そこがなんでこんなに時間がかかっているの?

・・・そうか、目撃者も被害者も多くその後始末に手間取っているんだろうけど。
だからこそ分析を最優先しなきゃだめでしょうに。

・・・となると実験体XのアルビーとC´オリバーが気がかりだ。取り返しのつかないことにならなければいいのだけれど・・・・・・

この経緯を考えると、まだ日本国内でいる間は「マシ」よね。様々な寄生虫問題は何十年も昔に改善され、”潔癖国”とすらいえる日本だからこそ衛生的な場所で人間に守られているうちはまだなんとか・・・海外の、寄生虫やヒトにも感染可能で危険なウイルス・・・例えばエボラやマラリアがこの実験体に感染したときの変異、もしくは強毒化は正にペストパンデミックを越える最悪の事態になるかもしれない・・・・・・

どうせNHOは世界公開、つまりWHOへの報告はまだしていないだろうね。

・・・・・・もし・・・これが意図的に日本に持ち込まれたウイルスだとしたら・・・・・・?

天然痘が完全に撲滅した後は、ソ連とアメリカの研究所で保管されているはず・・・サル痘も、日本ではまだ拡大していないはず。

各実験体の元となる被検体も調べる必要がでてくるわね・・・・・・





○○○○年
 〇月 〇日

将 官  牟田口 准将 

樹海村抗争報告書

  1. 目的 制圧と調査

  2. 期間 任務完了済み

  3. 結果 任務完了済み

詳細・経緯

⑴襲撃と鎮圧

 逃走者 浅倉博士・object実験体Cトラビス+C´オリバー捜索隊員が突如、目的捜索中に現地人から銃撃に合う。その後、襲撃にあった一隊は応戦しながら応援を呼ぶ。
 比較的に近い二隊が合流し村の制圧へと向かい、その村は武装をしていたため鎮圧までには翌朝の六時ごろまで要した。


⑵捕獲と回収

 村人三名を捕虜として確保。
 objectobjCトラビスの死体を確保。C´オリバーの行方は依然不明のまま。
 確保した村人から、別の捜索対象であるミシェル二等兵が村に潜伏し、Cトラビスを殺害したと証言している。
 残された銃弾、薬きょうからもミシェル所属のアメリカ軍が使用するSIG SAUERであることから、間違いないと思われる。引き続きミシェル隊員の足取りも同じく追っている。


⑶カルト集落

 我々が銃撃を受けたこの村、集落はカルト集団でした。
 名称は『ディグ・ニダ教』
 中央アジアに見られる「奇形信仰」に準ずる教えに伴い、村に逃げ込んできた実験体であるトラビス親子をと崇め、保護していた模様。

 この宗教は裏社会へのルートがあり武器商人との繋がりもあるため、当村も銃火器装備が充実しており銃撃戦へと発展。鎮圧に時間を要した原因でもあります。
 各地でそういった集落、組織が点在している。武器弾薬をこの国へ供給している主要組織と見られている。警察も組織犯罪対策部4課、通称『マル暴』とずっと睨み合っている組織の一つでもある。

 麻薬の製造にも各地で関わっている可能性もあり、麻薬取締局『麻取』からも全国で見つけ次第報告、もしくは撤廃の姿勢を見せるようにと、犯罪組織クラスはAとなっている。

 この組織に実験体の存在がどこまで広がったかにもよるが、こちらは軍とも繋がりがある武器商人ルートからは圧力をかけ調査ができる可能性がある。各陸軍武器科への連絡と疎通、情報収集を強化して隠ぺいを図る。
 

その他

 銃撃を受けた原因はミシェル元隊員がこのカルト集落で保護されていた実験体Cトラビスを射殺してしまったからだと思われる。
 各犯罪組織と繋がっている団体でもあり、警察が軍と組みスパイを送り込む、もしくは突入カチコミにきたと勘違いした。
 その後のミシェル元隊員は、待機させていた援軍兵と接触。その足取りは把握中。
 実験体C´はミシェル元隊員と同行していると見ている。




分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌③


◉REC

オリバーは視力がすごく低く、自然界での行動範囲はかなり狭いはず。嗅覚がオリバーの世界を支配していて、遠くからヒトの臭いなんて、特に軍人は火薬や鉄の臭いが強いためにすぐ嗅ぎ分けられるとは思うけど、あの金色の体毛は昼夜ともに目立つためすぐに見つけられるはず・・・・・・

『ディグ・ニダ教』か。
ある政党が各地で広めた宗派の一つなんだけど、中央アジアを経由してここ日本へやってきたのよね。

恐らく調べればわかると思うけど、元々あそこの集落、廃村は昔から登録されていない村で、ずっと噂だけど樹海に自殺志願者が方々から入り込み、死ぬに死にきれずに迷子となる。そんな人たちが集まってちょっとした集落になったとかなんとか。他には、自殺志願者のを待ち伏せし殺すという殺人狂たちの村があるとかないとか。

 実状は麻薬の栽培場所として使われているのよね。『自殺名所』と有名になってからは特に一般人は怖くて踏み入れなくなるし、心霊現象や都市伝説が横行しているから、何かを見たと証言があったとしても幻覚や気のせいってことにできる。隠れて何かをするにはうってつけってこと。

 だから、私たちもここに研究所を設立しているわけだし。みんな考えることは一緒だわ。ここの研究所は樹海の南側。この集落は北側。西、東にもなにかあっても不思議じゃなくなってきたわね。

 そんな噂が本当だったのかどうかは分からないけど、そんな人達がディグ・ニダ教の宣教師と出会い今に至るのか、教徒が都合のいい場所を見つけて居座り集まったのか・・・・・・

 ・・・ってことで、そのカルト集落で捕らえた村人Aの唾液の検査結果だけれども、サル痘キメラウイルスの感染は陰性だった。トラビス及びオリバーの二体による直接的な接触による感染はしない、もしくはこの二体は保菌者ですらないかもしれない。

 実験体Bモスマンからの単為生殖分裂体からの発生、もしくは何らかの媒体の経由でウイルスが活性化する可能性が高くなってきた。

あ、え?結果がでた??OK。見せて・・・・・・


えー・・・・・・


一般民間人宅へ侵入した実験体B´と接触したヒトたちの検査結果なんだけど、一家全員が陽性・・・
B´本体は・・・陰性?!
んー・・・・・・

ねぇ!ちょっと・・・ここさ・・・これ・・・『飼い猫』がさ・・・・・・うん、そう。お願い・・・・・・


ゴホンッ・・・・・・
えー、最悪な結果かもしれない。

以前の各実験体すべての細胞を確認できないからこれもハッキリと断定はできないけど、この実験体B´の細胞には『マイクロキメプラズマ』原虫のシストが見られた・・・でもキメラウイルスは陽性ね。

トキソプラズマの場合の話だけど、この原虫に感染したネズミ、げっ歯類等は天敵にワザと襲われに行く、食われに行くという性質がある。これもまだ研究が最近になって明らかになってきたレベルなのでここも断定はできないが。
正確には動きが鈍くなって猫やイタチなどの天敵を”恐れなくなる”という。
トキソプラズマが脳細胞にまで浸食すると宿主にそのような行動の変化を伴わせるらしい。

こういった一種の|洗脳支配《マインドコントロール》の仕組みは原虫だけではない。
カマキリやカマドウマに寄生するハリガネムシ。
この寄生虫は昆虫の腸、腹部に寄生しそこで成虫まで成長する。その後ハリガネムシは水中での繁殖行動をするために宿主を洗脳し、入水自殺をさせる。

この・・・分裂体の行動。浅倉は『ホカホカ』疑似恋愛性交、コミュニケーションだと言っていたけど・・・このマイクロキメプラズマによるマインドコントロールで支配されていた行動だとしたら・・・・・・?





国営放送 ○○放送局 速報ニュース


「お昼のニュースです。昨夜の10時未明、ある一家に何らかの動物が侵入し住民を襲いました」

「襲われた一家は○○さん宅。○○県に住むごく普通の家庭で、○○さんご夫妻とお子様が一人の三人家族でした」

「○○さんがご帰宅され、ご自宅の専用駐車スペースへと車を停めた際に侵入したと思われ、その後○○君の子供部屋にて○○さんの奥様が発見。すぐに110番通報をしますが○○さんとそのお子様○○君が襲われ緊急搬送されました。現在は○○病院にて治療を受けていています」

「110番通報を受けた警察が○○さん宅に到着した時点でその生き物はすでに居なく、その後は警察と専門の地元猟師が捜索し捕らえました」

「目撃者や関係者は、その生き物はまるで大きなムササビ、イタチ、コウモリのようだったと証言しています」

「その周囲一帯は一時的に外出禁止令が発令していました。先ほど解除となりましたが、引き続き外出の際にはお気を付け下さい」



民間放送 ○○放送局 ○○TV「スクープ!新種のUMA襲来!!」


 MC
「みなさん、こんばんは。MCを務めさせて頂く早川です。本日は未開!UMA特番です。今までにも多くのUMA、未知の生物、ツチノコ、河童、ネッシーやイエティといった未開の生物について討論してきました。本日は田中さん、いつもとは違うんですよね?」

 田中
「あ、はい、一連のニュースにも報道されているように、新たな新種、UMAの出現に世間と専門家の間ではトレンドなんですよね」

 MC
「そうなんです!本日はいま話題である新種のUMA『モンガ―』について新たな情報と、そしてなんと!当番組独自調査の結果、このモンガ―ではないかと思われる映像を入手したんです!それらの情報を元に、各分野の専門家の皆さんを集め、このモンガ―の正体について解明していきたいと思います!本日は皆様、よろしくお願い致します」

「まず一人目のゲストはこの方、UMA専門家でオカルト研究家でもいらっしゃる大槻さん!」

「二人目は生物学者のエマさん、そしてUMAは勿論!動物愛好家でアイドルでもありますひなちさん!」

「そしていつもお馴染みの田中さんです!」

「さて田中さん今回はですね、話題のUMAについてなのですがこのモンガ―とは、いったいなんなのでしょうか?」

 田中
「いやぁこれはですねー、間違いなくUMAですね。UMAといえばイエティや雪男、ビックフットといったこう、おっきくてデカい類人猿みたいなものをみなさんイメージしていると思いますが、そんなことはないんですよね。それこそあのツチノコなんてね、大体、子猫とか子犬ぐらいの大きさじゃあないですか。何だか怖いなぁ、恐ろしいなぁ、ってインパクトが先行しすぎてこう、化け物、モンスター化したくなるのが派手でエンタメとしても面白いですからね、そうなっちゃうんだけども」

 MC
「ええ、まぁそんな傾向といいますか、願望みたいなとこもないことはないですね」

 田中
「でしょ?だからまぁ、先ずは皆さんにUMAとは、基本知識から知ってもらって、そして話し合っていきたいと田中は思います。だって言っちゃえばイッカクやセイウチ、カモノハシなんかも19世紀以前なんかはUMA扱いしていたんだから。なんだったらゴリラもパンダもそうだったでしょ?」

 大槻
「確かに、おっしゃるとうりです」

 ひなち
「え?!パンダも元々はUMAだったんですかぁ?びっくりぃ~」

 MC
「では田中さん、今回のテーマでもあるこのモンガ―も、もしかしたら・・・・・・」

 田中
「ええ、今後どうなるかはわかりませんよってことですよね?」

 エマ
「・・・はい、現状では未確認生物UMAとなってはいますが、””新種”って可能性もありますからね」

 MC
「新種?!」

 エマ
「毎年、約100種類もの新種の発見がされていますから」

 MC
「100種類?!そんなになんですか?」

 エマ
「突然変異での単独種も多く発見されています。生息エリアが特定でき生態系が生成されていれば、それはもう未確認ではなくなりますからね」

 MC
「なるほど~、ではそうなると番組のタイトルも変えなければならなくなりますね!」

 大槻
「新種の可能性もありますが、地球外生命体の可能性だってありますよ」

 MC
「ほう、大槻さん、その根拠とかあれば聞かせてもらえますか?」

 大槻
「いいですか?最近、宇宙人が捕まって解剖をしたという話も話題でしたよね。あのリトルグレイ型のですよ。飛行機のパイロットも実は何人も未確認飛行物体を目撃してるんですよ。でも言えなかった。そんな圧力が国や軍からあってですね、みんな口を閉ざしているんです。言っちゃうと精神の問題を問われちゃってクビになるか、消されることだってあるって証言もあるんです」

 MC
「では大槻さん、あのモンガ―は宇宙からの来訪者・・・ってことですか?」

 大槻
「いいえ、違います。あの生命体は知的生命体であるリトルグレイの”ペット”みたいなものですね」

 MC
「ペットですか?!」

 大槻
「我々だって猫や犬などをペットとして飼っているでしょう?まぁ、可愛がっているペットが逃げ出した可能性もありますし、もう一つは”モルモット”ですね」

 MC
「モルモット?!」

 大槻
「ええ。私たちが、例えば未開の地、宇宙や深海などの船や乗り物の”テスト飛行”はどうしていますか?今までだって犬や猿を宇宙に飛ばしてきたでしょう」

 MC
「ああ、確かに・・・・・・」

 大槻
「宇宙人だってバカじゃないんです。いきなり自分達が降り立ったり飛び立ったりなんて危険なことはしません。まずはモルモット実験をして安全を確認して確保してから、彼らはやってきます。我々だって、そうしているようにね」

 MC
「なんか、説得力ありますねぇ~。ひなちさんは、どう思われますか?」

 ひなち
「ひなちはねぇ~、河童だと思うの~」

 MCと数人
「えぇ?!河童?!(笑)」

 ひなち
「え、だってだって、ここ日本だし、河童かわいいじゃん」

 MC
「あ、希望の話をしてます?」

 田中
「いやでもね、河童説もありえますよ。だって今では河童と言えばカエルのような質感で甲羅を背負って、頭には皿があり歯がないってイメージ。これは亀人形態説なんですが、関西での目撃証言では類人猿形態が多いんですよ?」

 MC
「類人猿・・・ですか」

 田中
「ステレオタイプのイメージとは大分ちがうんです。体毛があって似た形状でいうと本当に猿のような伝承なんです。共通している点もあって、それがハゲた頭頂部と、甲羅を背負っている。その共通点から、まとめて河童だってことにしたんじゃないでしょうか」

 ひなち
「そうそう!だから、モンガ―は河童の末裔なのぉ~」

 MC
「オホンッ・・・では、改めてみんなで映像を見ながら検証と確認をしあっていくとしましょうか。準備の方は・・・いいですか?・・・・・・」

「はい・・・それでは準備が整いましたので、ご覧ください。どうぞ」


・・・・・・


 MC
「・・・・・・どうでしょうか、みなさん。偶然、発見した青年がスマートフォンで撮影したものと、コンビニ、ガソリンスタンドの監視カメラで撮影されたものとをみて頂きましたが・・・エマさん、これはなんなんでしょうね?イノシシでもイタチでもないのは明らかですよね」

 エマ
「そうですね。大きさとしては中型犬ぐらいの大きさだと思います。この静止画で見ると、本当に甲羅を背負っているようにも見えますね」

 MC
「えーっと、この映像では四足歩行で右から左へと走っている瞬間の姿をみると、まるで甲羅のようにも見えるのですが実際の目撃証言を集約するとですね、この手足にあいだに見られるのは羽か”膜”のような感じだったそうで、どちらかというとムササビかモモンガのように滑空し襲い掛かるみたいなんですね。なので、猿やタスマニアデビルのような顔とモモンガのような生体から、モモンガとモンキーが足されて『モンガ―』と呼ばれるようになったのだそうです」

 ひなち
「なんだかかわいい~ね~!」

 MC
「いや、ひなちゃん、けっこう狂暴だそうですよ?実際に遭遇した人は何人も怪我をして運ばれていますからね」

 田中
「この足の爪なんて、かなり鋭そうですよね。ナマケモノの爪ぐらいあるんじゃないですか?」

 エマ
「映像で見て、足も相当速いですよね。この爪でどこでも登れそうです。この長い尻尾のようなものは哺乳類ではハクビシンのようにも見えるし、質感は爬虫類、ヘビやワニの尾のようにも見えますね」

 MC
「水中でも、ものすごいスピードで遊泳するらしいですよ!」

 大槻
「ね?こんな生物は地球上ではありえない。間違いなくextraterrestrial biological entityEBA(イーバ)ですよこれは」

 田中
「この羽のような部分は、やっぱり河童の水掻きが進化した形じゃないですか?河童ですよこりゃ」

 エマ
「オカピってみなさんご存知ですか?ロバのような長い耳に、ウマのような体型や顔の見た目、大きさも小型のウマぐらいで、黒っぽい褐色の体に前足と後半身には美しい縞模様があります。この容姿にて、シマウマなどウマの仲間だと考えられていました。しかし、その後、キリンの先祖に近い動物であることが判明しています。皮膚で覆われた角と長くのびる舌、蹄もウマのようではなく二つに分かれているんで、これらはキリンと同じ特徴なので現在、オカピはキリン科の科目なんです。モンガ―もこのオカピのように色んな要素を嵌合体かんごうたいした単一種、突然変異、もしくは新種かもしれません。オカピを初めて発見した19世紀初頭も、今のような反応や状況だったことが想像できます」

 MC
「ええ、ええ、みなさんありがとうございます。色んな可能性がありますよねぇ。さて!続きましてはそんなモンガ―ですが、映像を見ながらですね、当番組スタッフが実物大をご用意しました!みなさま、是非、前へ移動お願いします。色々比較していきましょう」

「どうでしょうか、えー、これは?いや、本当にまぁよくある柴犬ぐらいの大きさですねぇ、尻尾を入れると体長は1.5メートルぐらいでしょうか?少し大きめのニホンザルみたいですねー」

 田中
「見てこの爪!こんなんで引っ搔かれたらたまったもんじゃないですよー」

 エマ
「この爪は主に木に登るようになってますね。あとこの甲羅なのか膜なのかはハングライダーのように滑空できそうです。そしてこの長い尻尾は水中で発揮します。ワニのようにくねらせて、かなりの推進力になるんじゃないでしょうか」

 ひなち
「ちょっと、この顔こわい~、かわいくな~い」

 MC
「では水陸両用の生物ってことですかね」

 大槻
「それにしては外見は哺乳類か鳥類のように毛に覆われているなぁ」

 エマ
「短い産毛のように細い毛に覆われている感じですね。これはカモノハシやペンギン、ラッコのように保温機能と水はけがよくなるようになっていると思われます」

 田中
「これで成体なんですかね?」

 エマ
「それは実物を見て調べないとなんともわかりませんねぇ」

 田中
「この大きさでまだ子供だったら、ちょっと怖いですね流石に・・・・・・」

 MC
「えー、実勢にはですね、○○県での目撃証言が多く、このモンガ―の被害にあったという話も少なくないんです。謎の生物に襲われたという報道が当時あったのですが、その後の報道は一切なくその正体も明かされては居ません」

 大槻
「そうなんだよ、そこなんだよ。宇宙人との接触を各国はしているんだよ。逃げ出したペットを秘密裏に捕まえられなかった。だから報道規制を敷いて詳細を国は話せず、このまま有耶無耶にしようとしている!」

 MC
「被害者もその後どうなったかが不明で、ニュースで報道された一家は全員『病死』しているという話なんですが、調べによるとこのUMAとの関係性は一切ない、ということなんです。その病気というのも何なのかは流石に個人情報、守秘義務により教えてもらえませんでした」

 大槻
「絶対に国は隠している!未知の生物による未知のウイルスだよ」

 MC
「いま、日本全国に猛威を振るっている『キメラウイルス』これもあらゆる陰謀論が飛び交っています。大陸の方から持ち込まれた説、天然痘という、1980年以前に震撼させた恐怖のウイルス。その生物兵器であるという説も出てきております。当番組は独自の取材と捜査にて、今後もみなさまにお伝えしていきたいと思います。それでは、みなさまご一緒に」

「受け取り方も、考え方も、あなた次第です!」

「それでは、またお会いしましょう、さようならー!」




分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌④


◉REC

サル痘キメラウイルスとマイクロキメプラズマとの因果関係はまだ分からない・・・・・・
でも、発生源と感染範囲、出現のタイミングまでが一致しているの。だからまだ無関係とは言いきれないわよね。

第一発見者の一家は一匹の猫を飼っていた。トキソプラズマと同じ経緯を辿ってみようと思う。

ウイルスというのは宿主細胞を自分の再生工場として使い、 コピー(分身)を作らせる。寄生相手が必ず必要となる。
原虫(寄生虫)とは自分達で卵を生成し繁殖が可能だが、移動手段や仲介、媒体としての寄生主を必要としている。

原虫の遺伝子内に何らかのウイルスが混入していることは多数、報告されている。そして中には『共存関係』にある場合もいくつかあるという。

例えばロタウイルスクリプトスポリジウムの外部共生の研究をしている教授もいて・・・講義を聞きに行っとけばよかったわね。

まぁとにかく、イチジクに寄生するハチがいて、更にそのイチジクキセイバチに寄生するイチジクキセイキセイバチがいるように、寄生と共存の世界は奥が深い。
もうここまできちゃうと流石に私の専門外よ。限界。各専門家を雇ってここにつれてきてよ本当に・・・・・・

とにかくまだ検体も全て揃っていないし、第二第三感染者のはまだ分析中。実験体B´のシストしたマイクロキメプラズマの遺伝子の解析は完了。感染者の中からウイルスの遺伝子を取り出して解析し、そのDNAデータが原虫内に組み込まれているかどうか。ここが素直に同一なら話は早いのだが、この段階、もしくはオーシスト以降でDNAが変異していたら断定がまた出来なくなる。そこの照らし合わせが一番困難なのよ・・・・・・

更に時間が経過すればするほどまた変異していく。だからはやく検体をもってきてちょうだい。最低期間は六か月、半年よ。
いま要求している検体はリストにして送っておいた。

⑴第一被害者宅にいた猫(現在分析中)
⑵○○県に生息しているげっ歯類(ネズミやリス等)
⑶追加された別途保管されている霊長類ヒューマンジー等の検体と遺伝子情報

なんで⑶がこんなに遅いのかが分かんないんだけど。

・・・・・・仕方がない。これもいやだけど、やるしかないわね。
モルモットにマイクロキメプラズマを人為的にシストさせて、オーシストからの経緯を実験しますか。
とりあえずその経緯のどこの段階で「サル痘キメラウイルス」が独立していくのか。

あと、普通のサルに実験体B´の遺伝子を組み込んでオーシストからマイクロキメプラズマの感染・・・いや、逆かもしれない。実験体B´の体内にシストからオーシストした原虫の卵をげっ歯類が感染し、キメラウイルスへと変異したかもしれない。
だとしても、変異と感染が早すぎる・・・自然の流れに任せた速度ではないのよ。だから違う経緯も考えておかなければならないんだけど・・・・・・

今のところ、一通りの考えられるパターンを試すしかない・・・・・・


分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌⑤


◉REC

⑴第一被害者宅にいた猫(現在分析中)
の、結果がでたわ。
マイクロキメプラズマの感染は陽性で、オーシストまでしていた・・・・・・
他の被害者の家にも何らかのペットを飼っていたのか、調べる必要がある。
そして・・・サル痘キメラウイルスは陰性・・・だけど、この飼い猫のマイクロキメプラズマ内にはキメラウイルスが生息、共存している・・・という結果に。

つまり

この猫がオーシストしたマイクロキメプラズマの卵を他の動物、もしくはヒトなどが感染した可能性がある。

だけど・・・・・・

これは『マイコキメプラズマ』がヒトに感染し得るということを示唆したに過ぎない。肝心のサル痘キメラウイルスまでたどり着けてはいないわ。

・・・・・・このキメラウイルスが共生しているマイコキメプラズマを、誰かヒトに感染させることなんて・・・できないわよね。いくらなんでも・・・・・・

あ・・・・・・
実験体B´内しシストした、もしくはオーシストした卵のマイコキメプラズマ遺伝子内部にもキメラウイルスが共生しているかもしれない・・・早速、調べてみるわ。





○○○○年
 〇月 〇日

所 長 Ilya Ivanov 殿 

報告者 Gordon G. Gallup

捜索報告書

 浅倉 祥子の足取りが判明。
 各逃亡者、捜索中に遭遇した例のカルト集団『ディグ・ニダ教』と別支部(分派した宗派)にて浅倉は接触し、教団本部である本拠地へと実験体X‐2と共に移送された可能性が高い。

 下記、くだんの抗争にて確保した捕虜の証言

「我々が位置していた支部がこの『聖なる地』樹海の北西部分にあたる。山のふもとから山神様を主として信仰していた。山が神の住まいであり、我々はあそこに足を踏み入れてはいかんのだ。その山からご神体が二体、舞い降りてきた・・・なのに、愚かな異端因子神殺しを行った・・・恐ろしいことが起こるぞ・・・・・・そして分派した我らが同士の元にも。聖なる地、南部にも支部があり、そこは海に面した海神様を信仰としてこの国を守っていたのだ。山と海、同時に神が・・・これはなにかの『予兆』に違いない・・・貴様ら、全員災難が降り注ぐぞ!」

 この証言から『山の神』とは実験体CとC´親子のトラビスとオリバー二体のことを指し、『海の神』とは実験体Ⅹ-2アルバートのことを言っているのではないかと推測。その周辺での当研究及び、政府軍事関係者運営の店舗等カメラデータで確認された”浅倉だと思われる姿”も確認済み。それらの時系列とこの教団の『本部』と言われる場所との位置関係も合致する。

 当局はこの教団への圧力と制圧に尽力する必要と共に、早急な対応が必要である。
 前述したようにこの教団はカルト集団であり、表向き”強行する十分な体裁”があり、警察や人権団体への協力と共に情報操作は容易である。上層部からの働きかけもご協力を頂きたい次第である。

 最悪の場合、彼らの”信仰対象”を考えるに今回の騒動の黒幕としての”尻拭い”としてのシナリオも用意しています。ディグ・ニダ教が神を創造したということにすることが可能です。

 状況は至って深刻であり、複雑で厄介ではありますがタイミングや情報の範囲によっては千載一遇のチャンスでもあります。我々が実験体を”回収”しその後、調査しているという状況を作り得れます。

 教団に武器、薬物、人身売買などを指示している”後ろ盾”の掌握と買収、繋がりや関係性を洗い出してください。その後の指示にて浅倉及び実験体X-2確保に向けた強行、もしくは交渉の有無に影響します。

 ディグ・ニダ教の都市本部は一か所に集約していません。まるでリスクヘッジのように分散しているため、全ての都市本部をほぼ同時に制圧していく必要があり。その分、人員と時間を要してしまうため現状は動けない状況でもあります。

 空港や大きな港は軍の協力の元、管理体制も万全で休航もいつでも可能ですが海域の全て掌握は不可能であり、どこか無人島経由される可能性を考えると小型船舶までの逃走経路が考えられます。

 マスコミ、メディア、ネットなどを使いこのカルト教団の公開とイメージ操作、民間から各団体へと”静かなる協力”を得て、あらゆる動きを封じたいと思います。

 捕らえた信者からバックボーンの吐露も得られませんでした。徹底した”尋問”をしましたので、末端信者へは純粋に信仰活動をさせていたと思われます。

 私たち捜索部隊は上記の上層部からの返答待ちの間、都市本部の一部だけを静圧していき教団の幹部を探していきます。
 地元の裏組織の手を借りるためこちらは足が付く心配はありません。この依頼する組織は元々ディグ・ニダ教とは敵対関係にあるため、本部の情報や報酬を提供するだけで動いてくれます。

 詳細が分かり次第、追って報告致します。何卒こちらへも情報提供を迅速に願います。




分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌⑥


◉REC

あった・・・・・・
実験体B´及び、猫へ感染したマイコキメプラズマ内にはキメラウイルスが共生していることが分かった。


ここから考えられるのは、実験体と猫が今のところ同仮宿であり仲介者として同等、第一被害者の一家への感染は実験体となんらかの接触をした飼い猫からヒトへ感染した経緯ということになりそうだ。

トキソプラズマの能力、つまり感染経路を”真似ている”としたら、ヒト以外のほぼ全ての温血脊椎動物が感染対象者ということになる・・・・・・

下水か・・・・・・

とりあえず、急いでブタ、サル、犬、鳥、牛といったヒトと関係性が近い動物たちの”サンプル”を用意して欲しい。

整理すると・・・・・・

疑問①
スタート地点が実験体B´群がマイコキメプラズマの保菌者だったのか、実験体にトキソプラズマがシストしてマイコキメプラズマへと変異したのか。
そして

疑問②
マイコキメプラズマ内にキメラウイルスが共存するポイントはどこか。これは実験体が経由している可能性が高いと思うけど、確認はしておいた方がいい。

疑問③
キメラウイルスが原虫に頼らず、単独で繁殖行動に出るポイントがどの生物か。これが、ヒト限定だとすると・・・・・・

疑問④
双方のグランドゼロ地点はどこか。これが一番重要だわね。
少なくともこの十数年間の研究所内部で発生はしていなかったのも事実・・・・・・
まさか・・・私たちの体内にもすでに、マイコキメプラズマがシストしている??
・・・・・・一応、調べておいた方がいいわね。

あ、それと、やっと現地下水にて
⑵○○県に生息しているげっ歯類(ネズミやリス等)
の検体が届いた。遅くなった原因は・・・捜索チームのキメラウイルスの感染・・・か。
状況証拠時点で最悪じゃない・・・ペストパンデミックの再来だわ・・・・・・
今すぐにlaboラボ内にて調べるわ。


分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌⑦

◉REC

⑵○○県に生息しているげっ歯類(ネズミやリス等)の件だけど。
結果はマイコキメプラズマ、サル痘キメラウイルス共に・・・・・・
『陽性』
だが、どちらも”その毒素”を出していない!キャリア、健康保菌者として活動している!

まるで・・・狙っているかのように・・・ヒトを?

今すぐにこのサンプルから各動物への実験を開始します!
感染経路は・・・・・・
マイコキメプラズマは保菌者からの糞や肥料といったオーシスト、経口感染(糞口感染)からと、吸血種、蚊媒体感染。
キメラウイルスは・・・接触感染、蚊やノミ、ダニなどの吸血種媒体感染。
空気感染はしない。もしそうならとっくにもっと被害は広大だわ。飛沫感染の有無も調べなければ・・・・・・

今すぐにこの情報を全国に、各病院関係者や政府にまで、NHOに知らせて!猫や犬といったペットからも感染する!緊急事態だわ!!







⑶追加された別途保管されている霊長類ヒューマンジー等の検体と遺伝子情報

これは・・・・・・




この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?