シン・仮面ライダー～ドキュメンタリーについても～
『シン・仮面ライダー』2023年公開（日本）
監督、庵野秀明 脚本、庵野秀明 原作、石ノ森章太郎
キャスト、池松壮亮・浜辺美波・柄本佑
※ネタバレあり
ある日、改造人間として目を覚ました本郷猛は、自分を改造した悪の組織から逃げてきた女・ルリ子の目的に協力することにする。
シン・仮面ライダー鑑賞を鑑賞してきました。
面白かったです。
シンシリーズの中では一番好きだと思いました。
鑑賞前、「庵野節」「庵野さんの映画」……みたいな、大衆が楽しむには難解なのでは？ と不安になる感想をみかけていたのですが、むしろわかりやすかったです。
王道でわかりやすいストーリーだったので、初見の人でも楽しめるのではと思いました。
個人的には、あまりシン・シリーズを見て癖が強すぎるとは思わないんですよね。
鑑賞後は思ったより大衆向けに作られていて安心！ エンタメとして普通に楽しい！ と毎回思って帰ります（笑）。
常に覚悟をして観に行くからか、それとも旧エヴァで鍛えられているからか？
この映画はまず役者さんがすごく良いです。どの方も演技がすばらしく表情一つで感情が伝わってきました。
ストーリー自体は普遍的な王道なのですが、役者の演技力が高いのでしっかりと深みを感じました。
ラストのほう、イチロウが仮面の外に出ようとするときの、ルリ子の「兄さん、兄さん」の表情がすごく良かったです。
浜辺美波さん演じるルリ子、めちゃくちゃ可愛いです。
私、黒髪ショートボブが好きなのだと再認識ｗ
衣装もレトロですが好きです。
見た目だけではなく性格とか表情とかすごく魅力的なキャラクターだと思います。
浜辺美波さんは今回初めて注目したのですが、演技力もありすごく魅力的な俳優さんだと思いました。覚えておきます。
主人公の本郷猛も、雰囲気が落ち着いていて観ていて安心感がありました。
本郷猛、名前からして原作はもっと男らしく激しい性格なのかな？
原作を知らないためか、私はこの映画の本郷好きです。
どこまでも清くて悪さを感じるところがなくて、好感度抜群です。
作中で「優しすぎる」ことをよく弱点として非難されるくらいです（笑）。
でもここまで自己犠牲しなくてもよかったんじゃないかな？
もっと自分のこと大事にしてもよかったんじゃないかな？ みたいな切ない気持ちにもなりました。それはルリ子、２号、みんなですが……。
ルリ子は何と途中で魂だけになって出てこなくなります。
この展開にはびっくりしました。死んだように見せてどうせ生きているだろうと思ったら……本当に死んだ！
ヒロイン退場の暗い空気を救ってくれたのが仮面ライダー２号（一文字隼人）です。
本郷とは逆の軽くて楽しい性格なので、空気を明るくしてくれました。
最終的にはなんと主人公本郷も死んでしまい魂だけになるので、隼人に主人公がバトンタッチされます。
最初は洗脳されて敵方として出てきました。「ライダーを洗脳された状態で出すなんて、ファン的には大丈夫なのだろうか」と思ったのですが、すぐに洗脳は解け、味方になってくれました。
変身ポーズをしてくれたのも嬉しかったです。
ライトな層的にはこのくらいわかりやすくないと原作オマージュってわからないので。
ルリ子は本郷に赤いスカーフを巻き、次は隼人にも巻きます。「めっちゃスカーフ持っとるやん……」って感じでちょっと面白かったです（笑）。
公安の二人もいることで世界観が安定したように思います。
主人公二人は若者っぽいので、見守ってくれている大人がいることで安心できました。
主人公もヒロインも死んで（？）魂だけになってしまうのは予想外でした。
ヒロイン、死ぬの？ 主人公も、死ぬの？ え、まじで？？（困惑）
正直、これは……と思いましたが、仮面に魂が宿ることで一文字と一緒に旅をする本郷……というラストは良かったです。
私は仮面ライダーは平成の一部しか知りませんが、基本的に悲劇的なヒーローのイメージがあります。
なのでこのオチも受け入れやすかったです。
オーグについて。
また、敵のオーグ（怪人）のキャラクター性やデザインがすごく良かったです。みんなケレン味がある。
実写版「キューティーハニー」の怪人たちも好きなんですよね。
庵野監督の作る怪人は私の好みみたいです。
私は戦隊ものシリーズを観ていたので、どちらかといえば宇宙人系より怪人系のほうが好きなんですよね。
それもあってオーグ（怪人）がたくさん出てきて楽しかったです。
また、テンポよく倒されていくので退屈しませんでした。
まずはクモオーグ。
シン・ウルトラマンにも出てきた敬語紳士系怪人。
制作陣のタイプなのでしょうか？ 私もです。
デザインも格好いいです。ポケットから手が出るの素敵。
一番好きなキャラクターです。
次にコウモリオーグ。
「こうもりおじさん」とルリ子に呼ばれているところがよいですね。
いかにも昭和の怪人を踏襲したレトロな雰囲気で、私は好きです。
誰かと思ったら手塚とおるさんだったのですね。
次にサソリオーグ。
お約束のお色気悪のお姉さん怪人。
なんと長澤まさみさんが演じております。
しゃべり方が色っぽくてめちゃくちゃ良かったです。
部下が網タイツなところも素敵。
仮面ライダーどころかすぐに人間にやられてしまいましたがｗ
次にハチオーグ。
ハチオーグ（ひろみ）とルリ子の関係は非常に良いですね。
非人間的な二人の、一粒の人間的な感情のつながり。
付き人の男性も良い味を出していました。
デザインはオーグの中でも好きです。戦い方も格好良い！
本郷が優しさを忘れず、ハチオーグを死なせないのはよかったです。
最終的には公安の男性に殺されてしまうわけですが。
ハチオーグが死んだあと、ルリ子と公安の男性のやりとり。
「ひろみを処理したの、仕事として理解してる」
「感情を殺す必要はない。嫌われるのも俺たちの仕事だ」
大人たちに見守られてルリ子や本郷という若者が心を取り戻していきます。
本郷とルリ子も信頼をどんどん深めていきます。
変にお色気や恋愛っぽさを出しすぎていない感じが良かったです。
初々しい青春って感じで。
バイク（サイクロン）の変形や、敵たちとのバイクアクションは格好良かったです。
バイクに興味のない私にバイクを格好良いと思わせたのはさすがだと思いました。
サイクロンがコロコロと本郷たちの後をついていくのは可愛かったです。
KK（カマキリ・カメレオン）オーグ
登場シーンは少なかったですが、魅力的でとても印象に残りました。
役者さんは実写「嘘食い」の目蒲なんですね。
クモ先輩を慕う姿が、少ないシーンの中でキャラクターに深みをつけています。
クモ先輩格好いいもんね。あこがれるよね。わかるよとっても。
イキった性格も嫌いじゃない！
そしてチョウオーグ。
今回のラスボスです。ルリ子の兄。
フィクション世界の悪いことするお兄ちゃんはベタですが好きな設定です。
（何でみんな悪いことするんでしょうねお兄ちゃん）
壁の模様が羽根になっていて、椅子にいるときはもちろんアクションのときでもその前に立つと羽根が背から生えているように見えるんです。
めちゃくちゃ綺麗なんです。
作中で一番好きな点かもしれません。
映画において見栄えのする映像って本当に大事なのだと思いました。
ふらふらした演技もよかったです。ダンスをしている方で、かなり有名な方なのですね。
チョウオーグから仮面ライダー０号になるところもよかったです。
ラストバトルですが、私は「これはアクションというより３人の精神性を重視したシーンなのだろうな」と感じながら観ました。心と心のぶつかり合い。
後述するドキュメンタリーの話で、この解釈は当たらずしも遠からず、だったのかなと（違います？）。
総じて役者さんが非常に魅力的な映画でした。
テーマ性としては、庵野監督はエヴァの時から変わらず、ストレートに人間愛を追求し続けているのかなと感じました。人との相互理解。他人は怖い。でも他人と生きていくことを諦めたくない。新劇を終えてもなお……。
その他。
平成の仮面ライダーは何作か見ていた。でも昭和は知らない。
その距離感が楽しむのにちょうど良かったのかもしれません。
平成仮面ライダーはオリジナルから改変されているのが基本なのと、オリジナル自体を知らないので。
お腹のベルトが風を受けるのが大切なのか！ だからバイクに乗ってスピードを追求するのか！ とか。勉強になって楽しかったです。
ライダーキック。
昔の仮面ライダーの音楽が鳴るのは正直浮いて感じたけど、これは必要なのでしょう。
ゴジラで絶対にゴジラのテーマが欲しいように。
シン・シリーズでなぜ一番好きなのか？
まず、シン・ゴジラは映画としては良作ですが、私の求めるゴジラではなかった。
次に、シン・ウルトラマンはちょっと引っ掛かりがあった（米国への悪口、真剣なシーンで浮いているお色気）。
特にシン・ウルトラマンは思った以上にあれらが嫌だったことが今回でわかりました。
引っ掛かってもやっとするポイントがなかったので、とても気持ちよく観ることができました。
……映画本編は！
さて、次のページからNHKで放映された「シン・仮面ライダー」ドキュメンタリーに対する怒涛の激重お気持ち表明が始まります。
庵野監督がパワハラだ何だと話題になっていましたが、一応表現の場の末席に名を連ね、絵描きとしてクライアントの要望を形にする仕事をしている立場での文章です。
知り合いに映画監督の立場、俳優の立場の人もいてその辺の事情も全く知らない人よりはまあまあわかるつもりです。
ではGO！！
ドキュメンタリーについて
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