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まちづくりの手がかりを、地域の祭に見た話。


はじめに

「祭の在り方」は、「地域の在り方」を示す一つの指標ではないだろうか。
今日は、そんなことを考えるきっかけになった、夏の初めのある日のことについて書き留めたい。

ここは、福井県あわら市の田園風景の中に佇む「新郷小学校」。少子化の影響で5年前に休校となり、それから地域の人々が力を合わせて利活用を進めている「奇跡の休校」だ。

新郷小学校が利活用されるに至った経緯はこちら↓

そんな新郷小学校では3年前から毎年、夏の初めに「地域のお祭り」が開催されている。その名も「新郷祭」。

わたしは、今年初めてそのお祭りに参加させていただくことになったのだが、それは、"一般的な" 地域のお祭りではなかったのだ。

一般的な地域の祭り

一般的な地域のお祭りとは、おそらくこんなイメージだろう。

こっちでは、地元のお父さんたちがフランクフルトや焼き鳥を焼いていて、引換券のようなものを持った人々がそれを買いにくる。
あっちでは、スーパーボール掬いやヨーヨー釣りの小さな屋台をやっていて、子どもたちが遊んでいる。
そしてステージでは、中高年の人々によるカラオケ大会が行われていて…

一般的なお祭りのイメージ

地元の壮年会・婦人会・老人会などが中心となって行われる、地域の行事。それは、ある種の懐かしさを感じさせる一方で、形骸化された何かになりつつあるような気がしていた。

そのようなお祭りに慣れ親しんできた外の人間であるわたしが、色々な運びで今年初めて「新郷祭」に参加させていただくことになったのだが、それは形骸化されたお祭りとは明らかに一線を画すものだった。

ここからは、そんな「新郷祭」の様子を、新郷小学校に足を踏み入れた気分でご紹介しよう。

新郷祭当日の様子

まず、ここが新郷小学校の入り口。外観はかつてのままで維持されていて、「心ひろく かしこく たくましく」の校訓が目に飛び込む。さあ、さっそく中に入ってみよう。

新郷小学校の入り口

入り口すぐの受付では、このような会場案内図が配布される。たくさんのブースや企画があって、見ているだけでワクワク。

会場案内図

まずは体育館へ。午前中の体育館では、子どもたちが体を動かして楽しめる様々なゲームを開催していた。ラダーゲッター・ポッチャ・スティックリング・モルックなど…珍しいゲームが盛りだくさんだ。

レクリエーション

体を動かして暑くなってきたので、少し休憩。中庭ではプールやスーパーボール掬いの場所があって、子どもたちが元気に遊んでいる。かき氷が無料で振る舞われるサービスもある。暑い夏には嬉しい。

子どもたちに大人気のプール
スーパーボール掬い
かき氷で休憩

もう少し足を伸ばそう。かつて幼稚園だった場所は、新郷小学校で半年ほど前から開講されているフリースクールに通う子どもたちがカステラを作っている。店への呼び込みも子どもたちが担当する。

フリースクールの子どもたちが焼くカステラ

旧職員室では、近隣の公共施設(金津創作の森)がろくろ体験のワークショップを行なっていた。写真に写っている外国人は、体験者ではなく講師。愉快に楽しく、ろくろの技術を教えてくれる。

ろくろ体験

その隣では、新郷小学校で開講されているプログラミング教室が、子ども向けのプログラミングワークショップを開いていた。子どもも講師も、ニコニコと楽しそうだ。

プログラミング体験

向こうの教室からも賑やかな声が聞こえる。覗いてみると、地域の食育スクールが「勇者と伝説のお弁当」と名付けられた、クイズとゲームを使ったオリエンテーリングを開催していた。ドラクエ風に企画されたこのオリエンテーリングは、小学生たちに大人気。

クイズとゲームのオリエンテーリング

かつてランチスペースだった場所では、隣の小学校の創立150周年を祝して手形アートの体験があった。小さい子どもたちは、初めての手形アートにちょっと嬉しそう。

手形アート

そろそろお昼休憩の時間。体育館へ行くと、地域で飲食店をやっている事業者が手作りしたお弁当が配布される。種類も豊富で、エビフライ弁当・マクロビ弁当・ハンバーグ弁当・蕎麦の中から選べる。料金は全て500円というお求めやすさ。

配布されるお弁当

お弁当を食べ終えた頃、体育館ではビンゴ大会が開催されていた。素敵な景品ゲットのチャンスに、多くの人々が集う。

ビンゴ大会

お祭りも終盤に差し掛かった昼下がり、外ではお菓子まきが開催された。子どもからお年寄りまで、童心にかえってお菓子をゲットしようと空へ向かって一斉に手を伸ばす。新郷祭一番の賑わいを見せた瞬間だった。

お菓子まき

参加者が帰る頃、空はすっかり晴れ渡っていた。夏の暑さと多くの人々の笑顔で、新郷小学校が活気に満ち溢れた1日だった。

今年の新郷祭りもおしまい

お祭りは地域の在り方を示す

新郷祭は、全ての人たちが楽しむ側にも、楽しませる側にも回るお祭りだった。そこに、スタッフとお客さんの区別はほとんどなかった。

ブースを出す人たちも、このお祭りを全力で楽しむ。時には子どもたちも、スタッフになる。直接的ではないにしても、このお祭りに何かしらの形で関わる人たちがたくさんいる。そんな雰囲気に、地域の新たな可能性を感じた。

何より、ここにいる人たち全ての笑顔が眩しかった。
あぁ、ここにこのお祭りがあってよかったなと、心からそう思った。

新郷祭に関わる人たちは、先代から過去のものを引き継ぐのではなく、自分たちで新しいものを創り上げようとしていた。前を向き、ひたむきに頑張る大人たちと、それを楽しむ子どもたちの姿が、今でもわたしの目に焼き付いている。

この地域には、まだまだ課題はあるのかもしれない。
だけど、これがこの地域の在り方。
この地域に生きる、人々の在り方。

お祭りは、地域の在り方を示す指標だと、わたしは思う。

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