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【小説】そうちゃん

"不安に思わないから、大丈夫だよ"
"だって、そうちゃんが真っ直ぐ私に向き合ってくれているから"

そうちゃんの誕生日、私は彼への手紙に、こうやって記した。
ある意味、自分への言い聞かせだったのかもしれない。この恋は絶対叶う!っていうおまじない。

そうちゃんは私の一つ下で、2年前にネットで知り合ったお友達。精神的に不安定だった私が新しく仲良くなった、ちょっぴりデリケートな男の子だった。
2年前の彼と私がよく繋がっていたのは、某無料通話アプリ。精神的な苦しみとか、病気の話とか、精神病棟に入院していた話とか…。そんな話をよくしていて、お勉強会みたいだった。病気の発症のタイミングが近かった私たちは、多くの時間を通話アプリに使った。

当時、私にはお付き合いしている人がいて、そうちゃんは恋愛対象にはならなかったけど、「今、私に恋人がいなかったら、そうちゃんと色んなところへ行きたかったな」と思ったことも、実はあった。

最近は、そうちゃんと1日おきに連絡していたのだけれど、声が聞きたいなあと思ってダメ元で「時間があった時で良いから、また話そうよ」と送ったら、なんと30分後なら時間があると送られてきた。
あわわわ…そんな、突然、そうちゃんの声を、独り占めできるなんて。
そうちゃんが、誰のためでもない、私のためにこれから話してくれるのだ。
そうちゃんと通話なんて何だかんだ1年ぶりで、久しぶりだった私は、わくわくドキドキ、そわそわしながら、30分経つのを待っていた。

通話したとき、なんだか凄く照れ臭くて、「こんなに照れたら、そうちゃんのことが好きなのがバレちゃう」って意識したらもっと照れちゃった。
でも凄く楽しくて、ずっと笑っていた。
そうちゃんも沢山笑ってくれて、1年ぶりの通話は盛り上がった。
結構深い話もしちゃって顔赤くなっちゃって、熱かった。こんなことまで曝け出してくれるなんて、そうちゃんは、よっぽど私のことが好きなんだなあって思った。
でも、違った。私とそうちゃんは、ちょっと違った。
彼の好きは「友達としての好き」だったのだ。話していて、何となく分かっちゃった。
勘違いしていた私が、恥ずかしくなった。

それからというもの、悲しみと不安がつきものになってしまった。


私は未だ忘れられずにそうちゃんのことが好きだ。
恋をする余裕があったら、私のことも好きになってくれていたのかな?
そしたら、2人は幸せでいられたのかな?

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