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静かに鑑賞が鉄則?美術館でしゃべってもいいのか問題

美術館は静かなイメージがありませんか?
シーンとしていて、靴音にさえも気を使う。ましてや私語なんてもってのほか。友人に話しかけなければならない時は、ひそひそ小声で。

この「しゃべってはいけない」「音を立ててはいけない」という暗黙のルールがプレッシャーになって、美術館を避けてしまう人もいるようです。たしかに緊張しますよね。

でも、「会話禁止」を掲げている美術館は、基本的にありません。

海外の美術館はもっと自由

欧米の美術館に行ったことのある人は、日本と比べてオープンな印象を持ったのではないでしょうか。

というのも、欧米の美術館では友人と感想を言い合ったり、子供たちに作品を解説したり、鑑賞者がのびのびと過ごしているからです。写真撮影も基本的に自由だし、作品の前で模写をしている学生もいます。

一方日本では、「美術館内での私語はマナー違反である」という意識が根強くあります。「他人に迷惑をかけてはいけない」とか、「美術品は貴重で有り難いものである」という考えが刷り込まれているのかもしれませんね。

美術館スタッフとしての経験談

私は学生時代、美術館の監視員として働いていました。展示室で見かける、隅っこにいる人です。

(余談ですが、欧米の監視員は椅子に深く座ってスマホをいじっていることもよくあります。日本の美術館だと微動だにせず立っている監視員が多いですが……)

当時、私語がうるさい場合はやんわり注意するように言われていました。同僚の話だと、「うるさくて集中できないから注意してくれ」と訪問者に頼まれるケースもあるそうです。

実際に注意することはほとんどありませんでしたが、次のような場合はお声がけの対象です。

  • 声が大きすぎる(展示室全体に聞こえる)

  • ずっとしゃべり続けている

  • 明らかに展示と関係のない談笑

他の鑑賞者への配慮は必要ですが、展示を真剣に見て作品について話し合っているのであれば、周りも大目に見てくれるでしょう。

対話型鑑賞のすすめ

「対話型鑑賞」は、作品を見て感じたこと、考えたことを他の人に伝える鑑賞法です。1980年代に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が教育プログラムの一環で開発しました。

「美術館では特に何も考えなくていい」が私の基本姿勢なので、作品をぼーっと眺めて帰ってくるだけでも構わないと思います。

でも時には「対話型鑑賞」を取り入れ、自分の気持ちや感覚を言語化するのも楽しいですよ。思考力のトレーニングにもなります。

周りに迷惑をかけないことを心掛けつつ、一緒に美術館に行った人にちょっとだけ話しかけてみてはいかがでしょうか?

「この絵を見ると安心するんだけど、あなたはどう?」とか。いつもとは違った発見があるかもしれませんよ。

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