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アラサーの雑談の人です。 色々メモを載せます。 ◇YouTube https://yo…

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アラサーの雑談の人です。 色々メモを載せます。 ◇YouTube https://youtube.com/@siori__reality ◇REALITY https://reality.app/profile/648d3a86

記事一覧

「繋いだ手が熱を持つ」で始まり、「理由なんてないよ」で終わる物語

繋いだ手が熱を持つ。 「良いかい、焦らなくていいから、ゆっくり降りておいで。大丈夫、絶対に離さないよ」 声をかけても、彼女は静かに俯いている。表情は見えない。 夏…

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7か月前
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「神様は不公平だ」で始まり、「私達は仲良しなんです」で終わる物語

神様は不公平だ。 周りの道行くカップルを眺めて思う。新宿なんて大きな駅で降りたのは初めてで、行き交う人々はみな大人に見えて、自分が場違いに思えてきた。どの男もス…

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7か月前

「二人きりの夜には」で始まり、「きっとそれは恋」で終わる物語

二人きりの夜には、サブスクで何となく目に付いた映画を見る。帰り道にコンビニで買ってきた発泡酒やらおつまみやらが、テレビ前のローテーブルに無造作に並べてある。部屋…

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9か月前

「恋って偉大だ」で始まり、「そして大人になってゆく」で終わる物語

恋って偉大だ。 いや、正確には偉大「らしい」。 流行りの歌の殆どが恋心の機微を表現しているし、漫画も小説もドラマも映画も、恋愛要素が1ミリもない作品なんて、少なく…

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10か月前
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「君は気付いてくれるかな」で始まり、「そして眠りにつく」で終わる物語

君は気付いてくれるかな。 クラスの花瓶に花が活けられていること。 今朝はいつもよりほんの少し早起きをした。 誰も居ない静かな教室で、ぬるい水道水に、向日葵の花をひ…

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10か月前
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「繋いだ手が熱を持つ」で始まり、「理由なんてないよ」で終わる物語

「繋いだ手が熱を持つ」で始まり、「理由なんてないよ」で終わる物語

繋いだ手が熱を持つ。
「良いかい、焦らなくていいから、ゆっくり降りておいで。大丈夫、絶対に離さないよ」
声をかけても、彼女は静かに俯いている。表情は見えない。
夏の夜の屋上では、空気はじっとりとまとわりついて、ますます体温を上げるのみだった。顎から雫が落ちる感触で、自分が汗をかいていることに気付く。
繋いだ手が汗で滑るような錯覚に焦って更に強く握ると、彼女は漸く屋上の縁から、とん、と降りてきた。

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「神様は不公平だ」で始まり、「私達は仲良しなんです」で終わる物語

「神様は不公平だ」で始まり、「私達は仲良しなんです」で終わる物語

神様は不公平だ。
周りの道行くカップルを眺めて思う。新宿なんて大きな駅で降りたのは初めてで、行き交う人々はみな大人に見えて、自分が場違いに思えてきた。どの男もスラッと背が高くてオシャレで、腕を組む女性は嬉しそうにその彼の顔を見上げる。
一方自分は商店街の服屋で買った安いTシャツにジーパン。靴は同じく適当なスニーカーだ。せめてもっと背が高ければ……とぐるぐる思考していると、急に視界が真っ暗になった。

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「二人きりの夜には」で始まり、「きっとそれは恋」で終わる物語

「二人きりの夜には」で始まり、「きっとそれは恋」で終わる物語

二人きりの夜には、サブスクで何となく目に付いた映画を見る。帰り道にコンビニで買ってきた発泡酒やらおつまみやらが、テレビ前のローテーブルに無造作に並べてある。部屋を暗くして見るのは洋画のラブロマンス。ある女と男が出会い、次第に引かれ合い、恋に落ちる。そんな定番なストーリーであることが分かるタイトルに向けて、いつもと同じ動作で再生ボタンを押す。
ソファで寛ぎながら、感想を言い合いつつ酒とつまみを申し訳

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「恋って偉大だ」で始まり、「そして大人になってゆく」で終わる物語

「恋って偉大だ」で始まり、「そして大人になってゆく」で終わる物語

恋って偉大だ。
いや、正確には偉大「らしい」。
流行りの歌の殆どが恋心の機微を表現しているし、漫画も小説もドラマも映画も、恋愛要素が1ミリもない作品なんて、少なくとも自分が今まで生きてきたこの短い人生では見たことがない。
恋人ができたら他の誰よりもその人を優先することが当たり前なのに、逆にその1人を裏切ればまるで殺人でも犯したかのように非難される。
そんなハイリスクな感情にも関わらず、アイドルの熱

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「君は気付いてくれるかな」で始まり、「そして眠りにつく」で終わる物語

「君は気付いてくれるかな」で始まり、「そして眠りにつく」で終わる物語

君は気付いてくれるかな。
クラスの花瓶に花が活けられていること。
今朝はいつもよりほんの少し早起きをした。
誰も居ない静かな教室で、ぬるい水道水に、向日葵の花をひとつ。
席替えで1番前になったことを嘆く君の、世界が少しでも彩やかになるようにと祈りを込めて。

君は気付いてくれるかな。
教室の風が少し爽やかなこと。
今朝はお母さんのドレッサーにあった香水を鞄に忍ばせた。
電気のついていない教室で、逆

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