#171 世界遺産で「ニセがね」作り?【宮沢賢治とシャーマンと山 その44】
(続き)
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成遺産の一つである、岩手県釜石市の「橋野鉄鉱山」の雰囲気を言葉で伝えるのは難しいが、古代信仰の霊場的なイメージが一番当てはまるとおもわれる。
現在では、高炉跡の石積みの巨石がいくつか残され、その近くには川、わずかに開けた工場跡地は、山の上に向かってなだらかに登りながら狭まっている。傾斜の頂上に、神々を迎えた磐座があったとしても不思議ではなく、実際に、高炉脇の小高い場所には、信仰のための「山神社」が鎮座し、一帯を見下ろしている。
人々が暮らした家々も高炉に隣接し、ここでは、製鉄も暮らしも信仰も、全てが一体化していたことが想像される。
そして、驚くことに、明治維新によって貨幣の製造が禁止される中、密かに貨幣密造が行われ、最終的には検挙を受けたことによって、大幅な製造縮小を余儀なくされている。
簡単に言えば「ニセがね」が密造されていたということであろうが、とすれば、おそらく当時、この製鉄施設の一部、または全てが、対外的には隠されていたのではないかとも予想される。これまで見てきたように、鉱物を巡る秘匿の歴史が、わずか150年程度前の明治維新にも繰り広げられていた、ということであろうか。
【写真は、橋野鉄鉱山の説明資料の銭座の項】
(続く)
2024(令和6)年4月3日(水)
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