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教室にキーボードが欲しい理由が分かる本

Google Workspace for Education認定トレーナーの笠原です。

ICT×書くことの決定版!と呼べる一冊が発売になっているので紹介します!

多種多様な実践を取りそろえているのみならず、「書くこと」のスキルとはどのようなものかを分解して、一つ一つ丁寧に説明している良書です!

多数の著者で書く本は「方法論の見本市」になりやすいのですが、本書は実践の系統性、レベル感、ジャンルの網羅性などを考えると、非常にバランスよく無駄なく書かれている印象があります。

忘れられがちなのですが、一応本職は国語科教育なので、少し国語科に寄せて書いていこうと思います。

基礎指導の選び方が秀逸

ICTを使った指導についての相談を受けると、「何から教えたらよいか分からない」と言われることが経験上多いです。

どの程度の回答をするかは、相手のニーズと可処分時間によるのですが、自分の基本的な返答としては「教え方に違いはなくてもいいので、置き換えやすいところを置き換えるところから」と答えることが多いです。

この回答はいたずらにICTへのハードルを高くしないための配慮ではあるのですが、長期的に今後もICTを使うことが当たり前になっていく…という状況を考えると、やや「場当たり的」だとモヤモヤ思うことがあります。

GIGAスクールが始まって三年くらいまでは「慣れる」というフェーズでよいのかもしれないと思いつつも、今後、ICTがあることが当たり前になっていく中で、「何を教えたら」の回答として、「代替すれば良い」とだけ答えるのはやや不十分だろうと最近は感じていました。

そのような問題意識から本書の序章である「基礎指導」について読むと、「なるほど、これからはこれはちゃんとやらないと!」と思わず納得です。

本書の中で挙げられている「ICT時代の「書くこと」に求められる基礎スキル」は以下の通り(PP.8-9)

  1. タッチタイピング

  2. デジタル・シティズンシップ

  3. 情報収集と情報の取捨選択

  4. 情報共有

なお、本書の解説ではこれに加えて「思考ツールの活用」についての解説と「文具的活用を進めるために」という解説を併せて行っています。

いずれの内容も実際にICTを頻繁に使って実践していると、「書くこと」を進める上で、意識的に指導が必要になると納得できることです。

これらの項目は一見すると「国語科の授業でやることなのか?」という反論も出てくるように思います。しかし、「書くこと」の思考と、これらのスキルと直結しているということは、ICTを使って授業しているとはっきりと意識されます。

だからこそ、こうして「基礎指導」として体系的に提示されたことには大きな意味があると感じます。ここをスタートにこれから更に体系的に、網羅的に「基礎指導」とは何かを考えていければと思うわけです。

ツールとの使い方と「基礎指導」は明確に区別されるべきことだと思います。ややもするとそれらが混同されて語られがちなのも現場レベルの課題だと感じます。

しかし、本書はそのあたりをきちんと切り分けてそれぞれに解説してくれていることに、大きな強みがあると思います。

「書くこと」の進み方が分かる

本書の親切さは授業づくりの記事においても遺憾なく発揮されています。

帯単元や小単元で取り組みやすい「ミニ活動アイデア編」と「単元アイデア編」が別の章立てで書かれていることで、年間指導計画にも非常に反映させやすいように感じます。

単元のアイデアだけだと年間指導計画の関係で「明日の授業からすぐに…」とはなりにくいですし、ミニアイデアだけだとなかなかそこから単元を作るということはハードルが高いです。

手間が小さく、すぐに実践できるアイデアと基礎的な指導を時間を見つけて続けておくことで、どこかである程度まとまりのある単元に挑戦しやすくなります。

また、こうして様々な切り口でアイデアがたくさん紹介されることで、「書くこと」のジャンルの幅広さを実感できることもよい点だと感じます。

国語科の教員をやっていても、つい教室の中で扱う「書くこと」のジャンルは幅が狭くなりがちです。つい、目の前の「できないこと」を対処することに気を取られてしまいがちです。

しかし、こうして改めてICTを活用して実現できる「書くこと」のジャンルを一覧すると、授業ってまだまだ面白くなると実感できます。

書く力をつけるためには、たくさん書かなければいけないんです。しかし、国語の授業の「書くこと」は苦行として受け止められがちです。何とか楽しくてつい書かずにはいられないという授業をしたいと常々思っています。

そういう思いに対して、こういう面白さの幅の広さは、なんと心強いことか…と思うのです。

キーボードは必要か

ICTの活用の上でややハードルとなりやすいことが入力に関することです。つまり、キーボードによる入力がボトルネックになりやすいのです。

学齢が下がるほど、アルファベットによる入力のハードルは高くなるし、高校生であってもキーボードよりもスマホのフリック入力がよいという意見は少なくないですね。

自分としては、最終的に使いやすい道具を使えばよい(それこそ音声入力の精度は日に日に上がっているので、しゃべるように書く…という日が来るかも)とは思っていますが、本気で「ある程度、まとまった文章を読み書きできるようにするには現状ではキーボードを使いこなすことがベター」という考えです。

本書の実践例はキーボード以外の入力による「書くこと」も色々と紹介されています(音声入力や手書きなど)が、個人的にはこれらの実践を見て感じることとしては、「これだけの分量を書くならやはりキーボードは大切」ということです。

本書の最初の「基礎指導」の項目として「タッチタイピング」が挙げられているのは「これだけのアウトプットをするなら」必然になるのだと思います。

「キーボードがないほうが軽くてよい」という意見は根強いのですが、やはり優れた実践の圧倒的な字数を見ると、キーボードをちゃんと使いこなせる教室であって欲しいと感じます。

次号の『国語教育』も要チェック

勝手に本書のタイアップ企画だと思っています(笑)。

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