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「女性活躍推進法」施行以降、女性の正規雇用は高いペースで拡大。ただし…

「労働統計を見れば正規雇用はほぼ横ばいのまま」なのか?

雑誌『世界』3号上の『安倍政治の罪と罰』という論考で、上野千鶴子が「(女性活躍推進法について論じる文脈で)労働統計を見れば正規雇用はほぼ横ばいのまま、増えたのはもっぱら非正規雇用である。」と書いていた。しっかり数字を見ている人が「横ばい」、「もっぱら」などという定性的な言葉を使うものだろうか、という疑いもありデータを見てみたので、まとめてみる。

労働統計のデータをもとに検証してみる

使用したデータは、e-statの労働力調査 基本集計。
https://www.e-stat.go.jp/index.php/dbview?sid=0003078094

結論から言うと、労働統計のデータを元に計算すると、女性活躍推進法が施行された2016年と2023年を比較して、女性の正規雇用者数は非正規雇用者数の2倍以上のペースで増加したようだ。そのため、上野千鶴子の上記の発言には根拠がなかったことになる。

以下は男女別の正規雇用・非正規雇用の2023年と2016年を比較した増加率。女性の正規雇用の増加率は非正規雇用の4倍。さらに、実は増加率だけで見れば非勢雇用の増加率は男性の方が多い。

ということで、結果だけ見れば女性活躍推進法は一定の効果を生んだと言えそうだ。もちろん、この期間に女性の正規雇用の増加を生んだ要因は他にもあり得るので、すべての成果をこの法に帰するわけにはいかないだろうが。

時系列の推移を見ても女性の正規雇用が比較的高いペースで増加していることがわかる。

このように増加率は喜ぶべき結果だが、実数を見ると前途多難な実態も見えてくる。

2016年と2023年の男女の雇用状況を実数で見てみよう。2016年には男性の正規雇用は女性の2倍以上であり、非正規雇用は逆転して女性が2倍以上の状況だった。2023年になって正規雇用の比率は改善したものの、まだ1.8倍ほどは男性が多い実態がわかる。

こちらは2023年の男女の雇用形態の割合を見たもの。男性の6割以上が正規雇用なのに対して、女性の正規雇用は3割に留まる。

おわりに

ということで、上野千鶴子の主張に反して女性活躍推進法が施行された2016年以降、女性の正規雇用は男性よりも高いペースで増加傾向にある。ただし、女性の雇用者全体に占める正規雇用の割合はまだまだ少なく、男性の半分程度であり、前途多難な状況は続いている。

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