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コンビニの「脱24時間化」。地域の中で生きる道とキューバ・ジャズ

平成の最後ギリギリのところで、私たちにとって身近なものが大きく変わりそうな動きがありました。「コンビニ」の「脱24時間化」です。

今月25日(木)、コンビニ大手3社が24時間営業をめぐる問題に対応するため、経済産業省から求められていた「行動計画」を公表しました。その中には24時間営業の見直しや、深夜の時間帯に従業員がいなくなる「無人店舗」の実験が盛り込まれています。

もともと、この問題の発端は各コンビニチェーンの出店拡大が続いていたことでした。店舗数が全国で5万5千を超え、客の奪い合いが激しくなって売り上げが減少する一方で、人手不足のため従業員が確保できなくなったのです。

コンビニ本部は加盟店からロイヤリティーを取って利益を得ています。ロイヤリティーは営業の総利益に応じて取るので、売り上げが多いほど本部は儲かります。チェーン加盟店にはぜひ24時間営業をしてもらいたいのです。

しかし、加盟店は人手不足でバイトの時給を上げるなどの対応で自分の取り分を減らすばかり。「24時間営業」は加盟店が身を削る中で成り立ってきたのです。

私は「全国一律・24時間営業」というやり方は限界なのだろうと思います。各地域の事情に基づいて、加盟店に裁量を持たせてもいいのではないでしょうか。たとえば、幹線道路沿いで大きな駐車場を持つコンビニはトラック運転手にとってなくてはならないものです。昼夜問わずお客の入りがあるように見えますし、トラック運転手にとっては「インフラ」と言ってもいいでしょう。逆に住宅街であっても、深夜ほとんど人通りがないところで営業を続けるのは無理があります。

そんなことを考えていたら、26日(金)の朝日新聞朝刊に北海道のコンビニ「セイコーマート」が時短営業のモデルだ、という記事がありました。フランチャイズ契約の原則は「1日16時間以上」で、24時間営業の店舗は都市部を中心に2割ほどだそうです。人口減少が著しい北海道では深夜利用者がほとんどいない地域が少なくなく、「合理的な判断」として店を閉めているようです。

セイコーマートは一部の商品を自前の工場で製造するなど、加盟店からのロイヤリティー収入に依存する大手とは異なる収益構造があるとのこと。すぐに他のコンビニチェーンのモデルになるわけではありませんが、こうした「地域の状況に応じた判断」が今後は重要になると思います。

今回は「地域色の濃い」ジャズを聴いてみましょうか。チューチョ・ヴァルデス(p)の「ライブ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」です。

チューチョ・ヴァルデスは1941年、キューバに生まれました。父親がピアニストで、ヴァルデス自身はクラシックも学んでいるようです。1973年に「イラケレ」というバンドを結成、伝統的なキューバ音楽からジャズ・ロックなどを幅広く取り込んだ音楽を創り出しています。

そんなヴァルデスのピアノはスケール感が大きく、キューバらしいラテンのノリを持つユニークなものとなりました。ヴァルデスがコンガも加えて熱く演奏したのが今回の作品です。

1999年、4月9~10日、NYヴィレッジ・バンガードでのライブ録音。

Chucho Valdes(p) Francisco Rubio Pampin(b) Roul Pineda Rouque(trap drums)

Roberto Vizcaino Guillot(conga&bata drums) 

Mayra Caridad Valdes(vocalization)

①Anabis チューチョ・ヴァルデスが作曲した、オープニングにふさわしい勢いのあるナンバー。切れのいいコンガのイントロに導かれてピアノがメロディを奏でます。この音色を何と言うべきか・・・。
優雅さもありながら音が太いというか、力強さがあります。これが後ろから強烈に煽ってくるラテン・リズムに対して君臨しているとでもいうべき風格があります。しかし、ヘビーで胃もたれがするかというとそんなことはありません。続くピアノ・ソロでよく分かるように、ラテン・リズムに心地よく乗りながら、チャーミングなフレーズも織り交ぜて軽快に進んでいきます。4分30秒ほどで、リズムがパタリとやみ、ヴァルデスが一人で演奏します。ここで披露されるのはフリーのピアニストも真っ青の超絶テクニック!時に叩きつけるような連打がありますが、ノリがいいのと音がそれぞれ美しいせいか聴き入ってしまいます。連打と静けさの強弱をつけた構成も見事です。最後はコンガのソロからメロディへ。「アーッ」という誰かの叫び声を交えて終わるところが何ともキューバです(笑)。

⑨Encore - Lorraine's Habanera  こちらもヴァルデスのオリジナル。ライブの最後に演奏されたアンコール・ナンバーのバラッドです。「熱帯地域ならでは」と言える曲で、ハバナの生温かい夕暮れを想像させるような穏やかさと哀感があります。3分ほどの短いナンバーですが、心に残る演奏です。

ヴァルデスは④でジャズ・スタンダード「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を演奏しています。こちらもラテンリズムでラストに劇的な盛り上がりを付けるなどキューバ音楽の要素を無理なく盛り込んでいます。ジャズという大きなジャンルンの中に埋没せず、自己主張するところはさすがです。

無駄のない配送システムなどを極限まで追求して急成長し、私たちも恩恵を受けているコンビニ。その全体的な成果は評価しつつも、各店舗が自己主張できる余地を作り、それが地域での新しい存続の仕方につながっていくことを願います。

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