書くことで
書くことで、テキストが眼の前に現れる。
書くことで、束の間ではあるけれど、私の頭の中に真実のようなものが見えはじめる。
書くことで、筆はすぐさま現実にまみれ、いびつさ、不完全さ、醜さが絡んでくる。
書くことで、真実から離れた何かに変化する。
「私の書きたいことはこんなんじゃない」
書くことで、葛藤が起きる。
「今度こそ」
書くことで、再び何かが浮かび上がる。
それに反応する魂。
宇宙の何世代も前に、失われた理想の文明があったかも知れない。
そう思わせるのは、私の中に完全な世界のイメージが薄っすらとあるからだ。
「宇宙を超えた記憶があるのか?」
書いたり考えたりするのはそのイメージの断片を見つける作業みたいなものだ。
根源のないロジックを組み立てるのではなく、根源の記憶を思い出そうとしている。
それが書く理由なのだ。
書くことで、私は何かを発掘している。
書くことで、私は思想考古学者になっている。
書くことがあって書いているわけじゃない。
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