イノベーション・賃金上昇・資本主義

昨日のプライムニュースでデイヴィッド・アトキンソンが説明していた賃金上昇の仕組み、何故日本は賃金が上昇しないのかの説明がとても分かりやすかったからメモしておく。
大企業が賃金上昇するのは素晴らしい。
だけど中小企業が全企業のうちの99.7%
働く人全体のうち中小企業の従業員が70%
つまり、中小企業で賃上げされないと日本経済は息を吹き返さない。
今までは大企業さえ元気になれば日本は元気になると言われて30年間トリクルダウン政策がとられてきたけど、それが間違いだというのは現在の現実が示している。

大企業の下請けネジ工場いじめが言われるけど、不思議なことに日本の製造業の中小企業の生産性は、大企業の半分程ではあるものの、サービス業の中小企業の生産性の倍ある。
日本を元気にするためには、この中小企業のサービス業=小売、旅行、飲食、教育、介護が企業努力を「いいものを安く」から「正当な対価を求める」にシフトしなければならない。
それなのに、日本には中小企業の分析に使用できる統計が無い。中小企業庁や厚生労働省などの統計は同じ項目でも数値がバラバラだったり、統計年度がバラバラで比較対照できない。何十年も国が中小企業の成長戦略を立てられない状態。
国税庁のデータを個人を特定できないビッグデータとして使えるようにすれば済む話。
ヨーロッパや韓国は税金のデータをタイムラグの無い生きたデータとして使っている。


賃金上昇の仕組みとは
いいものをより安く本来の価値の90%の価格を
 ↓
本来の価値の100%の適正価格
にすることで起こるのではなく、
本来の価値100%の適正価格を
 ↓
イノベーション:
マーケティング、ブランド力、輸出をする/増やす等より高く売れる企業努力
より価値が高く単価の高いものにシフト
することで起こる。

生産性が上がるとは、より価値が高く単価が高い商品を売るということ。
(注意点:価値が同じものの単価を上げるのは単なるインフレ)

イノベーションとはある日突然物凄く成長拡大することではなく、毎日毎日ちょっとずつより単価の高いもの=人がどうしても欲しいと思うものを使っていく=資本主義の原点
もう数百年そうやって賃金は上昇してきた。

賃上げと設備投資は毎年毎年少しずつ同時にやっていく。0.5~0.7%賃上げできればいい。日本はそれが出来なかったから諸外国と賃金の差が開き安い国になった。



投資拡大は下の循環で起こる

企業業績UP → 賃金上昇
    ↑    ↓
    個人消費拡大

愛知淑徳大学の奥田光幸の説明もメモしておく。

「いいものを安く」というのはグローバルな常識では通用しない。
いいもの=付加価値が高いということ。それを安く売るなんてアホだとドイツ人に言われた。

自分とこの商品を一番高く評価してくれるところはどこか海外も含め調べて、そこに売る。

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江戸時代に鎖国して守った日本文化はどのみちいずれ滅びる運命なのか。「いいものを安く」そんな心温かい日本らしさは貧乏に甘んじるしかないというのが物事の道理なのか。いや、単に資本主義の道理でしかない。
資本主義が唯一絶対に正しいものではあるはずがない。資本主義自体をイノベーションして温かいアジア文化が生き生きとできるものを作り上げた方がいいのでは?
金融市場をアジア圏でブロックして温かい資本主義を作り上げるとか。

別にアジアにも心の温かさ思いやりよりも合理性重視な人たちはいるし、アジア以外にも合理性より温かさ思いやり重視の人たちがいるから、金融市場を従来の資本主義と温かい資本主義の2ブロックに作り変えれたらいいのになぁ。

そもそも人間が幸せに生きていくのに十分な食糧生産性も工業技術も既にあるのに、資本主義に人々が労力を吸い取られて疲弊している。
従来の資本主義はもはや人間の生活を向上させ豊かにする為のものではなく、豊かな人間のあってもなくてもいいような欲求を満たす為のものになっている。
いや、資本主義とは最初からそういうものだったのか?
更に悪いことには資本主義から生まれた不幸が不幸を生み、それから逃れたいという欲求をまた資本主義に取り込んでいる。

心の余裕や温かさを奪ってまで、人間を疲弊させてまで手に入れてきたもので世界は十分物質的に満たされた。これ以上今までと同じことを続ける必要は無いと思う。
資本主義をイノベーションして、心や体を疲弊させない温かい資本主義を作ることで、少子化から貧困、老後の不安、燃え尽き症候群や麻薬中毒、新たな病気の出現までの問題を解決していけるのではないかと思う。



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