７８．

チームで食事会をするために、上長と一緒にしばらく駅のほうへ歩いて、駅を通り過ぎて、今までいたエリアとは反対側に向かった。
食事会の場所は、駅から近くのところで、後輩の子たちはもう先に着いて入っているようだった。
お店に入って上長が名前を告げると案内されて、後輩の子たちと合流した。

それからじゃあさっそく飲み物を頼もうとなって、あと何を食べようか？と話題が移ったけれど、私はくじに当たったときから相変わらず、全然お腹が空いていなかったので、後輩の子たちに食べたいもの選んでと言った。

考えてみると、チームで食事会なんて初めてのことで、ランチだって、新しく人が来たときくらいしかしてこなかったので、ひょっとしたらみんな気後れして、なかなか盛り上がらないかなとか考えていたけれど、結果的に食事会はめちゃくちゃ楽しかった。

話題の中心は、私が明日から抗がん剤をするにあたって動画のサブスクに入ったこともあり、もっぱらおススメの動画の話になった。
お笑いが好きという共通点を持った後輩たち以外は、みんなバラバラな趣味のチームなので、それぞれが挙げるものが、ほとんど知らないものばかりだったけれど、私はおススメされたものを片っ端からスマホのメモ帳にメモっていった。

中には、何十話と続いている連続ドラマもあって、そんな長い作品は、韓国ドラマ以来だったので、全部見られるかなと思った。
あと、面白い作品と好きな作品、というのはまた別のものなので、後輩の子が勧めるしゃべる等身大の不思議な猫の映画は、別にそんなに面白くないけれどぜひ見てほしいと言われて、そのプレゼンがあまりにも面白くて、絶対映画本編より今の話のほうが面白さのピークだと、みんなで笑って、いつの間にかクジで「当たり」を引いたことなんて吹き飛んでしまっていた。

そんな楽しい会だったので、当然先に帰ることもなく、終了までいることができて、会の最後には明日からがんばってきます、と晴れやかな気持ちで言うことができた。
帰るときには上長がいつの間にかお会計を済ませていて、上長は後日回収するね、と言っていたけれど、結局その機会はないままになった。