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春にして君を離れ...(アガサ・クリス... いや、メアリ・ウェストマコット)

 Absent in the Spring



 春にまつわる小説を紹介したいと思って、真っ先に思い浮かんだのが、私の場合、この本でした。


「春にして君を離れ」アガサ・クリスティー


 ただ、単に、タイトルに ”春” がついてるってだけなのかもしれませんが、なかなか魅かれるタイトルなんですよね。

 隠れた名作とされる本書なんですが、少し、注意が必要なとこもあるんで、そこについて ”note” したいと思います。


+  +  +  +  +  +


 アガサ・クリスティーは、たくさんの小説を残していますが、総じて読みやすく、そして面白いという、平均点の高い作家さんです。

 中でも、ポアロやミス・マープルなど、名探偵を配したシリーズが有名で人気です。
 クリスティーは、この探偵小説以外にも、冒険ものやスパイもの、ホラーっぽいのやサスペンスなどなど、いろんなジャンルの小説を書いていたりするのです。


 そんなクリスティーの名作のひとつ、「春にして君を離れ」に注意が必要と記したのは、実はこの小説、いわゆるミステリーではなく、ロマンス小説と呼ばれるジャンルなんです。

 ですから、この作品では
 
  殺人は起きない。

  犯人は出てこない。

  
なので、当然、名探偵も出てこない… のです。

 でもですね、面白いんですよ、この本。
 さすがクリスティーの隠れた名作って感じで、ぐいぐい読み進められるんです。

 ただ、いつものミステリーと思って手に取ると、”あれ?” と思っちゃうかもしれないので、その点だけは注意が必要なのです。


 内容は、多くは語りませんが、ある女性が、旅の合間に、ふとしたきっかけから、自分の家族に疑問を抱きはじめる… みたいな話です。
 あえて言うなら「信頼できない語り手」ジャンルのお話で、何も事件は起きないのですが、静かなサスペンスは感じられる本なのです。

 手ごろな長さなので、お出かけのお供にもピッタリ(内容は置いといてですねw)だと思いますので、ミステリーでないクリスティ本を楽しんでいただければと思います。


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 そして、この「春にして君を離れ」のような、アガサ・クリスティーのロマンス小説は、全部で6冊あります。

「愛の旋律」 1930年
「未完の肖像」 1934年
「春にして君を離れ」 1944年
「暗い抱擁」 1947年
「娘は娘」 1952年 
「愛の重さ」 1956年

 作風が異なるため、本来、メアリ・ウェストマコットという、別のペンネームで出版されていたのですが、日本では、当初からアガサ・クリスティー名義だったので区別がつきにくいのです。
 なので、このタイトルを手に取った時は、いつものクリスティではないことに注意なのです。

 中には、ほんと大河小説みたいな長いものもありますが、やっぱ、読みやすいので、クリスティーの書いたロマンス小説に興味を持った方はぜひ!という感じです。
(ちなみに、自分は全部は読めてないんですが(おいッ)、「愛の旋律」のラストに、大映ドラマを見てた時のようなショックを受けてしまいました😆)




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