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Qの9


 「Qキューキュー」というふざけたタイトルですみません..

 何のことはありません。
 "特捜部Q" という警察小説シリーズがあるのですが、今年、9作目が邦訳リリースされたので、どうしても韻が踏みたくなっちゃっただけなのです。


 まあ、自分にとっては、付き合いの長いシリーズなので、ここで紹介させてもらおうと思います。


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■ 特捜部Qシリーズについて

 "特捜部Q" というのは、デンマークの ユッシ・エーズラ・オールスン という、いかつい名前を持つ作家さんの作品です。
 第1作目の「特捜部Q -檻の中の女- 」が2007年に刊行された後、現在までシリーズ9作を数え、複数作品が映画化されている人気シリーズです。


 日本では全作が邦訳されています。

1.「特捜部Q -檻の中の女- 」
2.「特捜部Q -キジ殺し- 」
3.「特捜部Q -Pからのメッセージ- 」
4.「特捜部Q -カルテ番号64- 」
5.「特捜部Q -知りすぎたマルコ- 」
6.「特捜部Q -吊された少女- 」
7.「特捜部Q -自撮りする女たち- 」
8.「特捜部Q -アサドの祈り- 」
9.「特捜部Q -カールの罪状- 」

 このシリーズ、2011年に邦訳されはじめてるので、あの(スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」三部作をはじめとした) ”北欧ミステリー” ブームに乗って紹介された作家の一人です。

 海外翻訳ものが好きな人なら分ってもらえると思うのですが、こういうシリーズ物って、読者側からは、全部邦訳され続けるのか、けっこう冷や冷やだったりするんですよね。
 第1作が邦訳されながら、途中で姿を見なくなったシリーズもあるんで、そういう意味では、日本でも一定の人気を得たシリーズということがいえるのです。


■ 人気の理由について

◎"特捜部Q" と個性的なメンバー

 これはもう間違いなく "特捜部Q" という部署の特異性と、そこに集められたメンバーのキャラによるところが大きいのです。

 この "特捜部Q" は、コペンハーゲン警察内で未解決事件を扱う新たな部署なんですが、ある事件を起こした主人公の刑事、カール・マークの左遷ポストとして設置されます。
 そもそもカール自体、頑固ではみ出し系なのですが、他のメンバーも、正規捜査員ではないアシスタント、シリア系のアサドや、奇抜な性格でコミュ障気味の秘書ローゼの二人で、ハナから期待されてない部署的なメンバーなのです。
 ところが、思いのほか、このアサドやローゼが優秀なんです。
 二人の活躍もあって、閑職部署のはずだった "特捜部Q" が大きな事件を解決していくのが、なんとも痛快なんですよね。
 また、巻を追うごとにメンバー同士の絆も強くなっていくのが楽しい展開なのです。


◎タイムリミット・サスペンス

 このシリーズの特徴でもあるんですが、各巻の後半は、いつもタイムリミット的な展開が設けられています。
 Qの面々による地道な捜査で、少しずつ犯人たちが特定されていくわけなんですが、捜査していた未解決事件が現在の事件にもつながっていて、本部の協力が間に合わないまま(これもお約束)、Qの面々が現場へ突入~みたいな感じなのです。
 ここらへんの展開がスリリングで、後半はいつもページをめくる手が止まらないのです。


◎シリーズを通じた謎について

 作者は、このシリーズは10作と明言しています。
 基本、各巻で事件は解決していくし、どの巻も面白いんですが、長いシリーズなんで、マンネリは否めないんですよね。(それをマンネリととるか安定感ととるかは別として)
 そのため、シリーズ後半の作品では、メンバーたちに関する内容が中心となるなど、いろんな仕掛けが施されています。

 7作目の「特捜部Q -自撮りする女たち- 」では、ローゼの性質の背景が描かれ、8作目「特捜部Q -アサドの祈り- 」では、これまでずっと謎だったアサドの出自等について明かされます。
 そして、最新刊の「特捜部Q -カールの罪状- 」では、そもそもカールが "特捜部Q" に左遷となる原因となった事件、当時の同僚1名が死亡、1名は半身不随となった通称「釘打ち事件」が、いよいよ進展し始めます。

 シリーズの合間合間に触れられてきた「釘打ち事件」が遂に!
 という感じなんですが、9巻のラストがまた気になる終わり方で、早く最終巻が読みたくなっちゃうんですよね~
 間もなく、その最終巻が本国でリリースされるという噂なので、あと2年ぐらいで読めるのかな~と期待してるのです。

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 邦訳が2011年からなんで、かれこれ10年以上のお付き合いになるわけなんですが、いよいよ完結目前となって、早く読みたいんですが、一方で、なんか寂しい気持ちもあるんですよね。
 長いシリーズなんで、途中で止まってる方もいるかもしれませんが、完結巻のリリースまでに、間を埋めていく機会になればと思っています!


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■ デンマークについて

 さて、このシリーズの生まれたデンマークについて少々。
    デンマークといっても、アンデルセン以外はあんま有名人は思い浮かばなかったりするんですが、映画でいうと『バベットの晩餐会』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ぐらい… 俳優さんでいうとマッツ・ミケルセンぐらい?なんで、 ユッシ・エーズラ・オールスン は私にとって、デンマークを代表する有名人でもあるんですよね。

 また、北欧ミステリーを読む時は、地図を見ながら読むのが楽しいんですが、本シリーズの主な舞台となっているデンマークの首都:コペンハーゲンって、どこら辺にあるかご存知ですか?

 コペンハーゲンも訪れてみたい街のひとつですね~
 
 で、この街の位置は下地図の通り

 何となく、ドイツと地続きのユトランド半島の方にあるのかと思ってましたが、シェラン島の、ほんとスウェーデン側に位置してるんですよね。
 2000年にはデンマークとスウェーデンをつなぐ、全長16㎞のオーレスン・リンク(海底トンネルと橋によって構成)が完成して、列車や車でも行き来できるようになっています。
 "特捜部Q" シリーズはドイツでも大人気と聞くんですが、地図で見ると、やはり、スウェーデンとの密接さが感じられますね。

オーレスン・リンクを構成するオーレスン橋

 こういう楽しみもありますので、ぜひ、皆さんも、特捜部Qの面々と、デンマークを旅してみてください!

 ちなみに、コペンハーゲンへの憧れについて、以前、note友の Ryé さんがイラストとともにシリーズ記事を書かれていますので紹介しておきます。



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