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心配をしているシリーズ(綾辻行人の「館シリーズ」)

 Yukito's "YAKATA"


 昔から読んでいるシリーズ本なんだけど、ちゃんと終わるのか?と心配になるものってありますよね。

 マンガでいうと『ワンピース』なんかは、かなり続いてるんですが、休載することがないんで安心できます。
 でも、『HUNTER×HUNTER』や『バガボンド』みたいに途絶したままだと、ちょっと心配になりますよね~。(ほんと不安......)

 小説のシリーズでも、そういうことがあって、私の場合、それが、綾辻行人さんによる長編推理小説の「館シリーズ」なのです。

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 「館シリーズ」について紹介すると、今は亡き建築家・中村青司が関わった館で起きる事件を、探偵役の作家・鹿谷門実(島田潔)と担当編集者の江南君が解決していくシリーズです。

 一応、探偵ものなんですが、思ったよりも探偵の存在感は薄く、むしろ建築家の中村青司の影が強いシリーズです。
 この中村青司って人の関わった館が皆変わっていて、隠し扉や隠し部屋なんてものは当たり前の奇妙な建物ばかりだったりするのです。
 その館では決まって事件が起きるわけなのですが、その怪しい建築家が関わった館の噂を聞いては出向いていくのがシリーズ探偵という構成なのです。


 これまで出版されているのは9冊(ジュブナイル1冊を含む)

 十角館の殺人(1987年)
 水車館の殺人(1988年)
 迷路館の殺人(1988年)
 人形館の殺人(1989年)
 時計館の殺人(1991年)
 黒猫館の殺人(1992年)
 暗黒館の殺人(2004年)
 びっくり館の殺人(2006年)*ジュブナイル作品
 奇面館の殺人(2012年)


 ここで、おや?っと思う方もいるかもしれません。
 たしかに、シリーズは1冊ごとに完結しているので、ちゃんと終わるのか心配することは不要じゃないか?と思われるかもしれません。

 ただ、作者の綾辻さんは、昔からシリーズは10冊で完結と公言してまして、次巻が最終巻になる予定なのです。

 発表年を見ると「十角館」~「黒猫館」は5年ほどの期間の間に出版されているのに、その後、「暗黒館」までは12年、「びっくり館」までは2年、「奇面館」までが6年、そして現在まで8年と、後半のペースは無茶苦茶遅いのです。
 「十角館」が出て33年ですから、ほんとに最終巻が出るのか心配になるわけなのです。


 他にも心配な点はあって、この館シリーズは、通常の推理小説とは趣が異なっていて、物語全体に仕掛けが施されているのです。

 その仕掛けがこのシリーズの醍醐味でもあり、これだけ人気があるのに映像化されにくい理由でもあるのですが、最終巻に見合う仕掛けを考えようとすると、並大抵のものでは.....って思ってしまうんですよね。

 第一の館「十角館」や、第五の館「時計館」など、物語の仕掛けと館をめぐるミステリーがマッチした傑作をはじめ、12年を費やした第七の館「暗黒館」では、それまでのシリーズ作品が包含されている部分があり、まさに集大成といった大作でした。
 それらを超える仕掛けと館を見ることができるのか、それが不安な点でもあるのですが、ついつい期待をしてしまうところでもあるのです。


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鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。十角館の惨劇を知る江南は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!


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九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ異形の館――暗黒館。光沢のない黒一色に塗られたこの浦登家の屋敷を、当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、<ダリアの日>の奇妙な宴に参加する。その席上、怪しげな料理を饗された中也の身には何が? 続発する殺人事件の“無意味の意味”とは……?


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 最初の「十角館」が世に出て33年が経ちます。
 「十角館」の舞台が、自分の地元ということもあって手に取った本なのですが、10代の頃から読んでいるだけに、なんだかんだ言っても、「館」シリーズの最終巻は楽しみで仕方ないのです。(心配とか言ってすみません!



※もうひとつのシリーズ「Another」の新作も完成したことですし、いよいよ館シリーズの最終作に取り組んでもらえるのではと期待しています。

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