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女性には向かない職業....とは言えないだろう

 An Unsuitable Job for a Woman....  really?


 P・D・ジェイムズが『女には向かない職業』を発表してから約50年。

 その職業っていうのは"探偵"のことなんですが、どうして、どうして、最近のミステリーを読むと、魅力的な女性探偵さんがたくさんいて、時代は確実に変化してる感じがしますね。


 国内作品で、ちょっと思い出してみただけでも、

 美貌の名探偵、”曾我佳城”(作:泡坂妻夫)や”二階堂蘭子”(作:二階堂黎人)などの天才型の探偵もいれば、「アンフェア」シリーズの”雪平夏見”(作:秦建日子)や、「ストロベリーナイト」の”姫川玲子”(作:誉田哲也)、など、警察組織でタフに活躍する捜査官もいます。

 また、「王とサーカス」に出てくる”大刀洗万智”(作:米澤穂信)や、「扉は閉ざされたまま」での”碓氷優佳”(作:石持浅海)、「顔に降りかかる雨」での”村野ミロ”(作:桐野夏生)、「medium」での霊媒探偵”城塚翡翠”(作:相沢沙呼)など、印象的な探偵役たちもいるし、最近の新鋭作家さんの作品でも、市川 憂人さんの「ジェリーフィッシュは凍らない」での”マリア”や、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」での”剣崎比留子”などなど、ほんと、数えたらキリがないぐらいです。


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 そんな中、私がもっとも好きな、THE 探偵と言えるのが

 孤高の私立探偵:葉村 晶

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 若竹七海さんが生み出したシリーズ探偵で、2020年1月にNHKで『ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵〜』というタイトルでドラマ化もされてました。

 ドラマのタイトルに”最も不運な探偵”とサブタイトルが付けられているように、主人公の私立探偵は、仕事はできるが運の悪い人物で、何かしらトラブルを引き寄せては、ケガしてたりするんですよね。
 ただ、このシリーズの面白さは、そんな主人公の不運さだけではなく、事件に潜む人の悪意やビターな結末、個性豊かな周りの人びととのユーモア溢れるやり取り、そして、主人公探偵の諦観した態度とその奥にある正義感、さらに意外と正統派ハードボイルドの展開などが、絶妙なバランスでブレンドされてるってとこなんです。

 多分、読み始めたら、職業:探偵の主人公が、どんな事件に巻き込まれるのか気になって仕方がなくなるし、最後には主人公を好きになってしまうに違いないと思うので、皆さんも、ぜひ、手にとってみて欲しいシリーズなのです!


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 シリーズのメインは、文藝春秋から出版されていて、これまで6冊の長・短編集が発表されています。

 『依頼人は死んだ』:短編集(2000年)
 『悪いうさぎ』(2001年)
 『さよならの手口』(2014年)
 『静かな炎天』:短編集(2016年)
 『錆びた滑車』(2018年)
 『不穏な眠り』:短編集(2019年)


 また、ちょっと複雑なんですが、他の出版社の本にもシリーズ作が収録されていて、中央公論社からの『プレゼント』:短編集(1996年)には、8編中5作、光文社からの『暗い越流』:短編集(2014年)では、5編中2作がシリーズ短編になっています。

 特に『暗い越流』は、カバーの雰囲気が違うため、見落としがちなので、シリーズを追いかけたいと思った人は注意してもらえればと思います。




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