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ぜひ、続編の方も "なんとかしてほしい" 話(恩田陸の朝ドラ小説に寄せて)


 けっこう、付き合いの長い作家さんである恩田陸さんが昨年の11月にリリースした「なんとかしなくちゃ。」に関する記事です。


 恩田陸さんについては、エッセイ以外の小説作品を全部読んでしまっているので、常に新作待ちの作家さんです。
 比較的刊行ペースが早い恩田陸さんなので、首を長くして待ってるって感じではないんですが、やっぱり、リリースされれば、早めに手に取るんです。

 そんな自分なのに、昨年の暮れにリリースされた新作は、あんまり魅かれなかったんですよね。

 その新作と言うのがこの本


 恩田陸さんといえば、ホラー風味有のミステリーやSF作品が多いのですが、この「なんとかしなくちゃ。」は、タイトルといい、装丁といい、あんま、そんな感じじゃないんですよね。
 昨年末は積み読本がいっぱいあったこともあって、何となく、そのうちでいいか… ぐらいの印象だったのです。

 まあ、先日、そろそろって感じで読んだのですが、はっきり言って

意外と面白かった!

…のです。(意外と言って、すみません💦)


 もちろん、ホラーでもミステリーでもSFでもない普通小説で、あんまり話題にもなってないようなんですが、なかなか魅力的な小説なんです。

(あらすじ)
「これは、かけはし結子ゆいこの問題解決及びその調達人生の記録である。」
 大阪で代々続く海産物問屋の息子を父に、東京の老舗和菓子屋の娘を母に持つ、かけはし結子。
 幼少の頃から「おもろい子やなー。才能あるなー。なんの才能かまだよう分からんけど」と父に言われ、「商売でもいけるけど、商売にとどまらない、えらいおっきいこと、やりそうや」と祖母に期待されていた。
 結子の融通無碍ゆうづうむげな人生が、いまここに始まる――。

 物語は主人公かけはし結子の人生を、幼少期から描いたもので、「砂場問題」や「お誕生日会問題」など、ちょっとした問題を結子が非凡な才能によって解決していくのです。
 家族に見守られながら、そして様々な人々と出会いながら結子は成長していくわけなんですが、この物語の構成といい雰囲気といい…
 まさに、NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」なんです。
 物語の中でも「朝ドラ」が言及されてる箇所があるんで、意識して恩田版テレビ小説として描かれてるんですよね。

 さらに「朝ドラ」感を出してるのは語り口の部分で、物語の中では、ドラマのナレーターのような解説がシームレスに挿入されてくるんです。
 例えば、”~ということに、結子はまだ気づいてなかった” みたいな語り口なんですが、こういうよくある物語を俯瞰した視点だけでなく、時には恩田先生自身の思い出話が語られたりして、そこが面白いんです。


 もちろん、恩田作品をたくさん読んできた方なら分かると思うんですが、出だしは丁寧に描きつつ、途中、魅力的な人物が登場しはじめ、違った方向に話がふくらんでしまい、終盤が駆け足になってしまうのはいつものことです。笑
 ただ、いつもと違うのは、”話が脱線したこと” や ”これは1冊では終わらないこと” を、恩田先生自身がナレーターとして語ってたりするんです。
 これは新しい感じでした。

 まあ、結果として、この本は~星雲編 1970-1993~という副題の通り、結子が大学を卒業したところまでしか描かれていません。
 さあ、これから!というとこで終わるので、ちょっと物足りないんですが、高校〜大学のエピソードもなかなか楽しいのです。
    多分、「朝ドラ」ファンの方には特にお薦めできる本なのです。


 恩田先生自身、続編を約束してくれているのですが、あれだけ連載を抱えているので、いつ、書き始めてもらえるのか…
 ”なんとかしなくちゃ” と、早めに書いてもらうことを静かに期待するのです。



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