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Swedenがイノベーションのハブになる理由③ー必死で働かない

スウェーデンがイノベーションハブになる理由その3です。①は働きやすさから人材が集まること、②は常に外の世界を志向するカルチャー、でした。③は「働くこと」の位置付けとでも言えば良いのか、マネジメント側の姿勢も含めて、日本との違いが最も大きいのがこれかな、と思っています。

6ヶ月の起業休暇を取る権利(tjänstledighet)

驚いたことに、Swedenでは正規の従業員は3つの理由で無給で仕事から半年離れる権利があります。Tjänstledighetと呼ばれるこの制度が適用できるのは次の3つの理由です。
①起業の準備のため(雇用主に6ヶ月以上雇用されていた従業員に6ヶ月まで)
②家族の介護(100日、介護する側が複数い場合には複数人合わせて100日間)
③勉強のため(雇用主に6ヶ月以上雇用されていた、または、二年間のうち12ヶ月働いていた)

①の起業のため休暇については、雇用主は現在のビジネスと競合したり、経営上の特別な理由があったりしない限り、これを認める義務があります。1998年に制定されたこの制度は、スウェーデンで起業が多い要因の一つに挙げられます。経済協力開発機構(OECD)によると、スウェーデンでは従業員1,000人あたり20社のスタートアップ企業があるのに対し、米国では1,000人あたり5社。別の記事で書いた通り、そのなかからSpotify, King, Klarnaなど、ユニコーン企業が多数生まれています。

企業の反応


企業は対応して人繰りをしなければなりませんが、こういったチャレンジは基本的に良いこと、と捉える社会なので、嫌な顔はされません。重要なのは、起業がうまくいかない場合に会社に戻れる保証がある、というところです。企業側はこれもポジティブに迎えるそうです。なぜなら、従業員がより元気になり、正規雇用の利点を理解し、自分に向いている仕事の認識を新たにして職場に戻ってくるから。日本ではおそらくこうはいかない。ネガティブな反応があれやこれや頭に浮かぶのは私だけではないでしょう。

働くことの意義


日本とスウェーデンでは働くことに対する捉え方が違います。ライフワークバランスは均衡にバランスしておらず、圧倒的にライフ優先です。
2017年のある研究では、スウェーデンではライフ優先が43.7%、ライフ重視と合わせると63.3%(日本16.3%)、同等と考えている人さえ36.1%で、ワーク優先に至っては0.6%(日本40.4%)という数字が出ています。

ワークライフバランスの現状
ワーク・ライフ・バランスから見た日本とスウェーデンの 比較調査研究 秋山 美栄子他

イノベーションが生まれる理由

必死で働かないにも関わらず、日本よりもはるかにイノベーティブなスタートアップが大量に生まれているのはなぜか?
私の中では結論は単純。必死で働かないからだと思っています。世界の中心が企業が主導する市場であった時代が終わろうとしているのだと。サービスマーケティング研究者の村松先生がよく言われている『生活世界』(https://www.vcs-lab.com)が中心になる。生活世界を優先し、充実させ、楽しんでいるスウェーデンで、生活世界のニーズを満たすイノベーションが生まれやすいのは当然だと思うのです。

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