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挫折の果てには何がある。

こんにちは!北海道の十勝で、児童養護施設出身、少年院出身の青年の自立をサポートをする団体 NPO法人スマイルリングでの、青年達との日常をnoteしています☺️


不器用な私と仲良くなるのは、

やっぱりどこか、不器用な子だ。

自分なりに

一生懸命に頑張ろうと思っているのに

中々上手くいかない。


“頑張るぞ!!”と決意した途端に

思ってもいない落とし穴に落ちてしまったり

転んで“大怪我”をしたりする。


仕事中に掛かってきた電話。

まだ一度も

直接会った事は無いのだけれど、

少年院に居るときから

彼と面接をしていた堀ちゃんから

よく話を聞いていた青年だ。


今会社だよ〜!電話出れなくてごめんよ!

LINEを送ると、すぐに返信が来た。

ちあきさん、あとで話せる?

“話せるよ〜!後でね〜!!”とLINEをし、

彼と繋がっていられる事にホッとする。


北海道から遠く離れた地にいる彼は

何度か場所を変えながら

長いこと少年院の中に居た。


大人を全く信頼せずに育ってきた彼の人生は

“子供を無条件に慈しみ、

大切に育て無い”ということが

どれほど深く不安感を植え付け

“生きづらさ”を

その人間に与えるかということを教えてくれる。


彼は生まれながらに

人並み以上に恵まれた力強さ、体力と

見るからにヤンチャで

見た目のゴツさからは想像もつかない

“繊細さ”を併せ持った青年だ。


繊細で優しいその心と身体に

小さな頃から容赦なく

大人に傷をつけられてきた。


その“暴力”から自分を守る為には

やっぱり暴力的な

“鎧をまとう”しか無かったのではないかと思う。


心に深い傷が残り

重くて厚い、

鎧をまとわされた子どもや青年は

確かに、次から次へと問題を起こしたり

心配を掛けるような事をする。


生意気盛りの子どもや青年と向き合うとは、

時に強い忍耐力がいるということだ。

しかし、

中途半端な関わりしか持とうとしない

大人の存在は、彼等の心を失望と諦めで

更に干からびさせてしまう。


大人にしか、

子どもや青年を守り、育てる事は

絶対に出来ない。


将来の事など

もう何も考えられないような

とてもとても寒い少年院の中で

彼はスマイルリング代表の

堀ちゃんと出会った。


それまでの長い間

大人に頑なに心を許さなかった彼が

“この人は違う”と感じた。

鎧を外し、心を開き、

自分の思いをノートにまとめて

一生懸命に思いを伝えてくれるようになった。

そうして一つの

大きな“夢”をもつようになった。


運動会では親代わりとなり

一緒に走ってくれる堀ちゃんとの出会いは

社会に出る“不安”を

社会に出てからの“希望や期待”に変えていった。


それから2年

彼は社会の中で頑張って生きている。


順風満帆の訳が無い。

どんなに頑張っていても

今の彼から“不安”が消える事は無い。


一人の人間が社会の中で自立し

幸せに生きていけるようになるまでには

暖かくて絶対的に守り、養ってくれる“親”などに

様々なサポートや準備を整えて貰い

それからスタートしても

ただでさえ、大変なことなのだ。


私達が大人になるには

様々な“儀式”を経るものである。

卒業式や成人式など

大人や親に、それまで大切に育てて貰い、

成長を祝って貰い、

様々な心配もして貰いながら

徐々に大人になっていく。


そうした自分が支えられる経験も無く

基盤もサポートも無い青年たちが

いきなり社会の中で一人で、自分の力で

生きていかなければならないのだ。

どれほど不安定な中で彼等は

頑張らなければならないか。


彼ら青年たちが

“夢や希望”を持って少年院を出たとして、

その夢や希望を打ち砕いたり

邪魔さえしようとするものがある

この現実の社会の中で

その心を持ち続ける事は、至難の業だ。


失敗や挫折、そして誘惑が

彼等のすぐそばで、パックリと

大きな口を開け、親しげに待ち受けている。

そこに身を寄せたくなる気持ちを

誰が責められるのか。


生きる希望、道標となるそれを

失いそうになる時

人はどうやって自分の心を持ち上げ、

生きていけば良いのだろう。


元気に働き、

周囲の人の期待に応える生き方をする。

それは当たり前に出来る事では無くて、

絶対に大きな“エネルギー”がいるのだ。

そのエネルギーとなるものがあれば

少々失敗したり、挫折しても

また立ち上がって

目標までの、別のルートを探して行ける。


ただ、そのエネルギーの源となる

安心で安全な居場所にいられ無い時、

“孤独感”に蝕まれた時には


お酒やギャンブル

薬物などに頼ってしまう事がある。

それは、彼等にとっては

直ぐ目の前のそこにある

拠り所のようなものになってしまうのだ。


その意味を分からない人や社会には

その人が弱くて悪くて

とんでもない人のように思えてしまうのだろうが


人は何かと繋がっていなければ

生きてはいけないものであり

誰かと繋がって、やっと人は安心出来る。


それを誰より求めているにも関わらず、

小さな頃から

“強制的に”孤独にさせられた人間の中には、

そう簡単に“安心の港”へ辿り着く事が出来ず

繊細で複雑な心を持ちながら

暗い道で一人きり、苦しむ人もあるのだ。


彼と同じように

少年院を出院してから

希望と夢を持ちながら、何度も挫折し

のたうち回るような思いで

なんとか再犯をせずに

ギリギリの瀬戸際で

踏ん張っている青年たちがいる。


彼等の心は本来澄んでいる。

優しくて素敵な心を持っている。

彼等と話すと私の心は感動し、

こちらの心も洗われるのが常だ。

ヤンチャな彼等の本当の姿は、

何を言ったとしても

何をしたとしても

本当は、とてもとても良い子たちだ。


彼等がノビノビと安心して暮らし

踏ん張る事の出来る『足場』さえ出来れば

彼等は絶対に

自分が幸福になるだけでは無く、

周囲をも幸せにしていけるほどの

底知れないパワーを秘めている。


だからこそ

薬物やアルコールなどの依存などの

彼等を不幸な人生へと引き摺り込む

魔物から守りたいのだ。

もう二度と

塀の中には入って欲しく無い。


しかしそれは簡単なことでは無いのだ。

離れたところに住んでいる

私に出来る事は何かと言えば

彼等の事を、毎日毎日心配し、

繰り返し祈る事ぐらいしか無い。


だが、

挫折、挫折、また挫折。

悩みや失敗、

困難な状況を彼等から聴くたびに私は思う。

今は真冬かもしれないけれど、

それでも春は絶対に来る。


壮絶な過去を価値に変えて

あちこち飛び回り

楽しそうに早口で喋りまくっている

あの堀ちゃんを見ていると


私には

彼等の未来も本当に素晴らしく

光輝くと信じられるのだ。

彼等の無限の可能性が花開くのは

まだまだこれから先の未来にある。


悩んだら電話をくれる。

どんな話でもしてくれる。

そんな彼等の事が大好きで、

繋がって居られる事が嬉しいのだ。


未来の、

逞しく成長した君達に会える日まで

彼らと繋がり続け、一緒に居たいと

心から願っている。

NPO法人スマイル リング
理事 ののむら ちあき☺️

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