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最新の認知心理学が証明した、間違った勉強法正しい勉強法#2 【望ましい困難とは】

今回は#2ということで、前回投稿した1の続きでございます。


参考文献はこちら。


まずは前回のポイントをザックリとおさらいしますと、


①たくさん書いて覚えるスタイルの”集中学習”は超非効率

②大事なところを読み直す”テキストの再読”も無意味

③覚えるには”思い出す練習”が必要。最強はテスト形式の復習


といった感じでした。すごい簡単にいうと「問題の答えを暗記するより、実際に解いてみた方が効率が良いよ」というところです。

そして、今回は続きということで、記憶にとってものすごーーく重要な概念である「望ましい困難」について解説して参ります。



section①
小テストは難しい方が良いよって話

前回は「とりあえずテスト形式が最強だからね」って話をしましたが、小テストを作る際に非常に重要なポイントが「望ましい困難が伴うこと」であります。望ましい困難ってなんぞやって感じだと思いますが、要するに”思い出すのがツライ勉強の方が良いよ”という意味です。まぁもっとカンタンに言うと、”思い出すためのヒントが少ないテストの方が記憶に残る”ということです。


たとえば、

「BLUE」「TOUCH」「LOVELY」

この3つの単語を覚えてください。

と言われた時に、実際に思い出す時のヒントが

パターン①「B UE」「T  CH」「LO EL 」

の場合と、

パターン②「B   」「   C 」「     Y」

の場合。

この2つを比べると、パターン②の方がヒントが少なくて思い出すのが大変ですよね。この場合、”思い出すのが大変”なパターン②の方が、圧倒的に記憶に残る勉強になります。

つまり、「小テストを作る時は、思い出せるギリギリまでヒントを少なくして、思い出しづらくした方が良いよ」って話です。



section②
なぜ困難が必要かって話

で、「なんで大変な方がいいの?楽な方が良くない?」って話ですが、これは”より実践に近いから”です。つまり、より実践に近い練習をするほど、知識は定着します。

たとえば、先ほどの英単語の例で言いますと、「B UE」と書いてあったら、雰囲気で「はいBLUEね」って分かりますよね。ところがヒントが「B   」だけの場合、「え、Bってなに??(笑) えーーっと、Bで始まる単語と言えば、、、あ、そうだBLUEだわ」みたいに、限れたヒントを元に、すでにある色んな記憶のルートを辿って思い出そうとしますよね。そして、テスト本番で僕らがすべきことは、「限られたヒントから辿って答えを思い出すこと」ですよね。

つまり、思い出すためのヒントが少なければ少ないほど、より実践に近い練習になるので、その結果テスト本番でも思い出しやすくなるわけです

これが、”思い出すのが困難なほど学習効果が高い”の意味です。そしてこの困難を、「望ましい困難」と言います。これは頻繁に出てくる単語なので、覚えておいてください。


ちなみに、望ましい困難というのは以下のような勉強を言います。

・思い出すヒントが少ない。(「B UE」よりも「B   」)

・勉強してからあえて時間を空けて、忘れた頃に思い出す

・問題がランダムに出題される(1問ごとに教科が変わる的な)

などなど。具体的なテクニックは後ほど解説しますが、要は、このような「思い出すのに苦労する勉強」ほど、学習の効果は高くなります。


で、こういうことを言うと「オッケー!じゃあ俺、逆立ちしながら暗記するわ!」とか言い出すヤンチャボーイが時々いるのですが、これは”望ましい困難”とは言いません(笑)。あくまで、「思い出すために知的労力を要すること」が重要なのであって、とにかくツラければいいってわけではありませんので、その辺だけ注意してください。


ということはですよ。前回お話しした”再読”がいかに無意味なのかがこれで分かりますよね。本を再読するという行為は、答えそのものを見てしまっているのと同じなので、思い出すのがマックスに楽なわけです。つまり、”望ましい困難”がゼロなわけです。そりゃ記憶に残らないわけですな。これが「本を何度読んでも忘れちゃう理由」です。


section③
望ましい困難によって”再統合”が起きる

で、「なんで”望ましい困難”があると覚えられるの?」って話ですが、これは望ましい困難によって、「再統合」ってのが起きるからです。

まず再統合ってなに?って感じですが、これは「新しい概念を既知の情報と結びつけること」です。わかりやすく言いいますと、たとえば何かを勉強した時に「あ、これ前に高校の先生が言ってたことと似てる!てことは、これも同じように考えれば簡単じゃん!」みたいなことありますよね。この時に頭の中で、”すでに持ってる知識”と”新しい知識”が結びついてるわけです。これを再統合って言います。

そして、この再統合ってのが起きると、物事は強く記憶に残ります。これが、「望ましい困難があると覚えられる理由」です。


で、「望ましい困難」に関しては面白い実験がたくさんありまして、例えばこれはプリンストン大学が2010年に行った実験なのですが、この研究によって分かっているのが

・単語を覚える時、”読みづらいフォント”で書かれた文字の方が記憶しやすい!

という感じなんですね。どういうことかっていうと、字体が複雑だと、「あれ、これなんて書いてあるんだ」と、文字そのものが何て書いてあるのかを解読するのに苦労しますよね。この時の苦労が「望ましい困難」となって、記憶の定着を助けてくれているわけです。

つまり、文字から得られるヒントを少なくすればするほど、学習の効果が高くなるというわけです。

だから例えば、僕は文字が狂ったように汚いのですが、これも”望ましい困難
”になっているわけです。文字が汚い人はわかると思いますが、メモなんかを見直すたびに「あれ、これなんて書いたんだっけなー。確かあの時、これこれこうで、こんな気分だったから、確かあれかも?」みたいに、いろんな記憶のルートを辿って思い出そうとしますよね。この作業が実は”望ましい困難”になっていて、僕らの記憶を助けてくれていたわけです。(笑)



まとめ

というわけで、今回の内容を簡単にまとめますと、と言いたいところなのですが、せっかくなので、「望ましい困難」を実践してみましょう。小テストだと思って、内容を思い出してみてください。


section①
小テストを作る時のコツは?


section②
望ましい困難を使った勉強法を1つ考えてください


section③
「再統合」の意味を説明してください


こういう感じで小テストをすると、めちゃくちゃ記憶に残ります。答え合わせは本文に書いてありますね。


というわけで、とにかく小テストを作る時のポイントとしては、”思い出すのが困難なほど学習効果が高い”という点を押さえましょう。できるだけ思い出すのがハードな状態に持っていくことが大事です。


「せっかく本を読んでも、読み終わった後に全然覚えてない」って人は、

目次だけ見て内容を思い出してみる

・適当なページを1秒だけパッて開いて、内容を説明してみる

ってことをやるとマジで覚えますので、試してみてください。


それでは、また。

次回はさらに具体的な学習法について書いて参ります。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。


追記:続きはこちら👇

『間違った勉強法、間違った勉強法3』


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参考



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