宗徒

甘美な夢を見るのよ

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甘美な夢を見るのよ

最近の記事

瞳溶け

僕と目が合わないあいだの君は、なんだかすごく君が君だった。君の瞳に僕が溶けたら、君が君でなくなる気がする。そうであればなんて、流れ星を見てまつげを羽ばたかせる。 笑いあったあとに「今日はありがと!」と連絡をくれる君の優しさがちょっぴり怖くて、でも君のことが大好きで、なんともとれない感情を君の手に縫い付ける。押し付ける。 それが君に向けての愛ではないのは知ってるし、振り返って笑う君の笑顔も、僕に向けてのものじゃないって知ってるよ。 ぼくたちの世界は自己完結型。 なんだっ

    • 聖夜

      君の夜が、なによりも優しいものでありますように。届かない祈りは、浅ましいエゴになってしまうのかな。どうか、君が君自身に向ける矢の先が鋭利なものじゃありませんように。エゴなのは最初から分かってる。君の抱くぬいぐるみの全部が優しい顔をしていますように。僕の祈りは甘美な呪い。君の説く生命を、力の限り抱きしめて。 揺れるライラック、ピクっと動く猫の耳。君から連想する美しいもの、すべて。 君の感じたときめきに、君が触れた後悔に、君の歩んできた道のりに、そっと瞳を閉じて、キスをする。

      • 全て嘘

        ふかーい湖の底からこの手紙を書いています。君が汚らしい水溜まりと呼ぶこの湖は、入ってしまうと予想通り汚くて、でも息がしやすいんです。そのヘッドホンは君の心を打ったかな。僕はずっとここで息をしているのに君のところはヘッドホンなんかしないと息ができないみたい。ねえ、湖に住む僕の心が水色でないなら、君の心は何色?詩を読む時、わかってもわからなくてもいいところが好き。優しいから。だから僕は君に詩を手紙として送るよ精一杯の優しさをこめて

        • 君の前では思考停止のぼくでいたい

          君の前では思考停止のぼくでいたい。 君が喋っている話、君の顔の陰り、君の手足のくせ そんなものをすべて、ぼくができる精一杯の静寂で迎え入れたい。 けれど、 君が君である限り、ぼくの頭はあのチョコレート工場のようにぐわんぐわんと稼働する。 ぼくはそれを心底憎たらしいと思う。 君にプレゼントできないぼくの部分なんて何の価値があろうか。 そんなことを考えて、今日も君の前に立ちます。

        瞳溶け

          美しい僕達へ

          僕の体に潜む満ち満ちとした孤独は 君を前にしても一つも消えることなく 「寂しいからそばにいて」なんて台詞、うそだったんだと息を吐く 暗い部屋 部屋に溢れる月の寂しい光が僕らを揺らす 君の鎖骨に降りた静かな沈黙はまるで湖のようで、美しさに息を詰まらす。 君は美しい。形容するのがなんとも切なくなるほどに美しい。 僕の脳みそは君を目の前にしても憎たらしく回る。 美しいという記憶は確かに美しいものなのに、そこに存在していた美しさ故の苦しさは僕らみんな忘れてしまってありきた

          美しい僕達へ

          僕の恋は秋に染まる

          夏に恋をした僕ら 君の瞳は若草色。僕の瞳は青い海の色。 本能のまま重ねあった僕らの瞳は、どのあたりで交わるのだろう。 多分あの水槽の中かな。いや、あの空の深いところだろうね。 ううん、きっと。 君は言った。 ううんきっと、ぼくらも、僕らの瞳も、交わらないし、混じりあわない。 きっと僕ら、いつまでも一緒になれずにいるんだよ。 だから僕らはこのまま、秋に染まってくんだよ。 秋に染まって、冬に染まって、春に染まって、また夏が僕らを染まらせてくれるはずだ。 ずっと孤独な

          僕の恋は秋に染まる