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涜神館殺人事件(レビュー/読書感想文)

涜神館殺人事件(手代木正太郎)
を読みました。
2023年刊。初読みの作家さん。
昨年の刊行時、気になりつつも読み逃していた作品です。

超常現象渦巻く悪魔崇拝の館で幕を明ける、霊能力者連続殺人事件!
異才・手代木正太郎の筆が暴れる、ゴシックホラー×本格ミステリ!
“妖精の淑女”と渾名されるイカサマ霊媒師・グリフィスが招かれたのは、帝国屈指の幽霊屋敷・涜神館。悪魔崇拝の牙城であったその館には、帝国が誇る本物の霊能力者が集っていた。
交霊会で得た霊の証言から館の謎の解明を試みる彼らを、何者かの魔手が続々と屠り去ってしまう……。
この館で一体何が起こっていたのか?
この事件は論理で解けるものなのか?
殺人と超常現象と伝承とが絡み合う先に、館に眠る忌まわしき真実が浮上する────!!

星海社「涜神館殺人事件」紹介ページより(上記リンク)

物々しいタイトルです。表紙もおどろおどろしく、タイトルとカバーデザインだけで本格ファンの掴みはOKですね。

本作は、流行りの特殊設定ミステリーです。

個人的には特殊設定ミステリーはやや胸焼け気味であまり得意ではないのです。が、そもそも本格ミステリー自体が様々な縛りや制約で成り立っているジャンルである以上、ジャンルの生存戦略として多様な進化の道筋を描くのは必然であり、特殊設定ミステリーもそのひとつとして現在流行しているのだろうという私的見解です。

遡れば、そもそもは仕掛けられることが比較的希少だったはずの叙述トリックなども90年代後半あたりから、いわゆるミステリ慣れしていない読者の「受け」が作り手の想定以上に良く、以降、多くの作品にカジュアルに取り入れられるようになったという歴史(これも私的見解)もあります。

閑話休題。

本作を購入する前、いくつかネット上のレビューを読みました。その段階では、本格ミステリーのコアな部分をして、特殊設定への依存度が高いのか低いのか想像しづらかったのですが、読了した今、個人的な感想としては、思っていたよりも変化球でなく正統な作りだったなと感じています。あくまで個人的な感想です。

もちろんゴシックホラーの装飾や雰囲気作りとして霊能力や異能は本作の世界観の中に存在していますが、トリック自体への直接的な介在(特殊設定が大前提になる仕掛け)としては一箇所、広めに取って二箇所だったのではないでしょうか。本格としては真正面からの作品になっていて、この塩梅は良かったと私は感じています。

本記事の投稿時点でまた結果は出ていませんが、本格ミステリ大賞の候補作に選出されたことも納得です。

物語としても非常にリーダビリティが高く、また読後感は清々しいものがありました。本作のタイトルと表紙からはとても想像できません。

ということで、このおどろおどろしいタイトルと装丁から敬遠していた人がいたとすれば是非このレビューをきっかけに手にとってみてください。

あ、途中の描写などはなかなかエログロ盛り沢山なのでそこは自己責任でお願いします!

#読書感想文
#本格ミステリ
#ミステリー
#推理小説


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